Afro Cuban Music in Senegal (From Afro-Cuban to Mbalax) (3) : Xalam

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 現在、再読/精読中の Richard M. Shain "Roots in Reverse: Senegalese Afro-Cuban Music and Tropical Cosmopolitanism" に関する雑感の続き。1960年代の章では Star Band に続く第二世代のグループの筆頭としてハラム Xalam を取り上げている。

「ハラム Xalam」とは3〜5本の弦(通常は4弦)が張られたセネガルの民族楽器であり、gewel(ウォロフ語でグリオ griot を指す職業音楽家)が演奏する。その Xalam の名前を冠したバンドについて調べてみたのだが、どうにもはっきりしないことが多い(リアルタイムで聴いていない音楽を後追いで調べると、分からないことばかりだ)。以下、分かった範囲のことを推測も含めて整理して書いてみたい。




 Star Band は実質的にセネガルから初めて誕生したポピュラー音楽のグループとして、その重要性は広く認識されてきた。彼らが登場するまで、アフロキューバン音楽は、レコードを通じて耳を傾ける、あるいはアメリカやキューバからやってきたグループの生演奏を聴くといったように、一方的に受容するだけのものだった。しかし Star Band はアフロキューバン音楽を自ら演奏するものに変えた。また彼らはダカールのトップバンドに上り詰めたことで、自然と優秀なミュージシャンが集まり、音楽学校のような役割を担った。そして、ここで力をつけた若者たちは、Super Star de Dakar、Orchestre Baobab、Number One、Etoile de Dakar など(それらの中に Orchestre Laye Thiam を加えてもいいかもしれない)後年セネガルを代表する数々のバンドのメンバーとして(クラブオーナーと喧嘩別れした末に)飛び立っていった。このように、メンバーの変遷を繰り返しながらセネガルの音楽シーンの土台を築いた Star Band の功績は絶大だった。

 最初期の Star Band の演奏はどのようなものだったのか。当時の正式な録音はないため、Richard M. Shain は私的に保存されていた録音などから分析している。Laba Sosseh (vo) と Dexter Johnson (sax) が脱退した後に Super Star de Dakar などのグループ名でリリースしたシングル盤の数々、さらには後年 Dexter Johnson 名義でリリースされた復刻アルバムを聴くことでも、Star Band 初期のサウンドを想像することは可能だろう。それらから類推されるのは、まだアフロキューバンのコピーが中心で、例えばかつて日本の高級クラブで演奏されたようなムード音楽?にも近い、客が踊るためのまったりとしたものだっただろうということだ。

 それでは Star Band に遅れて登場した Xalam はどのようなバンドだったのだろう。そのことを検討する前に、Xalam について語るのを難しくしている事情について触れておきたい。それは Xalam という名称のグループがセネガルに複数存在したことだ。それらのうち "Roots in Reverse" で取り上げているのは活動時期が最も古いグループである。そこで、彼らを後年のグループと区別するため Xalam (un) ないしは Xalam (I) と呼ばれることが多い。対して、1970年代後半以降にジャズ/フュージョン・サウンドで世界的人気を博したバンドの方は Xalam (II) と呼ばれることがある。

 はっきりさせられなかったのは、Xalam (I) と (II) とが全く別のグループなのか、それとも単なる時代区分なのかだった。"Roots in Reverse" では「メンバーが集まったのは 1964年頃」としている一方、 Xalam (II) の公式サイト?には「1969年結成」と書かれている。


 ということは、一時期2つのグループが同時に存在したと考えたくなる。ところがこれでは辻褄が合わない点が出てくるのだ。この記事の最後にメンバー変遷の一部を書き出してみたのだが、それを見ても明らかな通り Xalam のメンバーの出入りは実に激しかった。それと共に、音楽スタイルの変化も顕著だった。そこで、アフロキューバンをベースに音楽を革新していった 1975年までを第1期、それから4年間の潜伏期間(メンバーたちは共同生活を送りながら新たな音楽を模索したという)を経てジャズ/フュージョンのグループに生まれ変わった以降を第2期といったように、素直に音楽スタイルに主眼を置いて時代区分すれば良いだけのことなのかもしれない。

 さて、その Xalam (I) なのだが、特徴的な点として、ボヘミアン的なスタンスの最初のグループだったこと、メンバーには数学教師や校長、俳優といったインテリ層が含まれていたことが挙げられている。また、客層が高級クラブに通うことのできる上流階級に限られていた Star Band とは異なり、インテリに限らない広い層から人気を得ていたという。そのようになった背景には、ラジオなどのインフラの普及、周辺地域からダカールへの人口流入といった時代背景が大きく作用したようだ。また、国内ツアーを繰り返し、マリ、ギニア、コートジボワール、カメルーンでも公演を行った。

 それでも彼らが大きな成功に至ることはなく、残念ながら正式な録音は少ない。また彼らに関する記録もほとんど残っていないという。そこで著者は伝聞を元に彼らのサウンドについて語っているのだが、Star Band がオーセンティックで洗練された演奏だったのに対して、彼らにはそれほどの技術力はなく、かなり荒削りのものだったらしい。

 意外なことに初期の Xalam はギニアの Syliphone 盤で聴くことができる。彼らが 1970年にギニアに遠征した際、Syliphone でレコーディングし、シングル盤を1枚リリースしているのだ。

African Khalam Orchestra ‎"Comer Lechon / Niani" (SYL 529)


「ハラム」は Xalam ではなく Khalam と綴られているが、これはセネガルの Xalam による録音で間違いないだろう。Side A の'Comer Lechon' は割合ストレートなルンバで、まだまだアフロキューバンのテイストを色濃く残しているが、Side B の 'Niani' の方はゆったりとした歌と演奏にウォロフ的なものが染み込んでいて、アフロキューバンからの脱皮が感じられる。

 Star Band もいち早くセネガルの民族打楽器サバールを使用し、ウォロフ語でも歌っていたが、それはかなり限定的なものだった。それに対して、Xalam はそのグループ名に象徴されるように、セネガルの楽器など自民族の音楽的要素や自分達の言語を積極的に用いた嚆矢だったのだろう。そうした音楽作りは、Star Band の正統な後継者であることを任じていた Baobab や Number One などのサウンドにも認められ、彼らが Xalam からも影響を受けていたことが察せられる。

 そんな初期の Xalam なのだけれど、1970年代前半の足取りもまたよく分からない。彼らは一旦解散したらしいが、Le Sahel というクラブがそのハウスバンドとして、かつてのメンバーたちを集めて Le Sahel というバンド名で活動させたという。この Le Sahel は 1975年に "Bamba" というアルバムをリリースしている。また同じ 1975年に Xalam 名義のアルバム "Daïda" も発表されている。Le Sahel までを Xalam (I) とみなし、"Daïda" には 1979年以降の Xalam (II) のアルバムにクレジットされているミュージシャンも複数参加指定いることから、ここからが Xalam (II)と考えるとスッキリする。しかし、Xalam (II) の公式サイトは 1979年にファースト・アルバムをリリースしたと明記し、1975年のこのアルバムは Xalam (I) の作品だとしている。

 うーん、どうにもよく分からない。結成以来、離合集散や分裂を繰り返したらしき Xalam なのだが、メンバー構成にとらわれず、アフロキューバンをベースにそれを進化させた 1975年までが (I) の時代、ジャズ/フュージョンを指向したそれ以降が (II) の時代と素直に捉えれば良いのだろうか。

 話をアルバム "Bamba" に戻すと、個人的にこれは 1970年代のプレ・ンバラ期における最重要作だと考えている。アフロキューバンのテイストを残しながらも、快活なパーカッション、オルガンなどのキーボード、ウォロフでの唱和など、Star Band にはなかったサウンドも横溢する魅力的な大名盤だ。1975年に発表された Xalam と Le Sahel のアルバムを聴くと、ローカル楽器も交えた複雑なパーカッションのアンサンブル、活気あるホーンズ、創造性豊かなキーボード、力強いコーラスといった面を強化して斬新なサウンドを作り上げていった過程が想像される。

 Le Sahel 周辺の録音を集めた Idrissa Diop & Cheikh Tidiane Tall "Diamonoye Tiopité - L'époque de l'évolution" (Teranga TBCD013, 2010) の解説で、Adamantios Kafetzis は、「(セネガルのアルバムで)本当に素晴らしいのは、Sahel の "Bamba" と Le Diamono の "Bitaa Baane" と Xalam の "Daida" だ」と書いている。私もそれにほぼ同意するが、そこに Idy Diop (Idrissa Diop) のソロ作 "Dioubo" (1976) も加えたい。さらには元 Xalam の Pape Djiby Ba らが結成した Orchestre N'Guewel de Dakar の "Xadim" (ca.1980?) も並べたくなる。これも名盤だ。
(残念なことに、これらのアルバムはどれもまだストレート・リイシューされていない。それでも大半の曲は YouTube で聴くことができるし、重要な曲のいくつかはコンパイル盤 "AfroLatin Via Dakar" でリイシューされた。参考までに書いておくと、これらはほとんどマーケットに出ない超入手困難なレコードで、もし状態の良いアルバムを見つけられても相当な値段になるだろうと思う。)

 こうした一連の作品を大いに評価するのは、ただ内容が優れているからではない。アフロキューバンのコピーから抜け出して、新たなスタイルのサウンドを生み出したその成果が凝縮されているからでもある。そしてそこにンバラの萌芽のようなものも感じ取れる。Le Sahel 出身のミュージシャンたち、そこから派生したバンド群は(Omar Pene も結成時のメンバーだった Le Diamono も含めて)、Star Band 直系とはまた別の音楽的系譜を生み出し、そうした両者が互いに刺激し合う中から、次世代の音楽スタイルであるンバラが次第に形をなしていったのだろうと思う。ンバラは決して Youssou N'Dour が突然生み出したものではない、ということがよく分かる。

 1970年代のセネガルの音楽シーンに関しては、まだまだ分からないことばかり。Idrissa Diop や Cheikh Tidiane Tall などを中心に、ミュージシャンたちの流れを整理したいと考えている。そうすれば、もう少し色々なことが見えてくるのかもしれない。




 Xalam (II) が世界的な活動を続けていた頃、私はまだアフリカ音楽を熱心に聴いておらず、その後も彼らは中途半端なフュージョン・グループだろうという程度の認識しか持っていなかった。そこで今回改めて(軽く)聴いてみたので、Xalam 第二世代以降についても駆け足で軽くメモしておこう。

 Xalam は 1975年にダカールより東の町ティエス Thies のクラブ Le Sangomar で "Daïda" を録音。このアルバム、確かに内容はいいのだが、如何せん録音のバランスが悪いのが惜しい。
 その後、先に書いた通り、彼らは自らの音楽を探求するために隠遁。そして録音したのが "Ade - Festival Horizonte Berlin 79" (1979) である。アルバムタイトル通り、フェスに出演するためベルリンに滞在した時期に制作されたものだが、ライブ録音ではない。

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(余談になるが、私の手元にあるこのレコードの内袋には、長い感謝の言葉とメンバーたちのサインが書き込まれている。これは音楽業界の重要人物に謹呈されたものだったのだろうか?)

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 続いて制作したのが "Gorée" (1983) 。今の耳にはやはり凡庸なジャズ/フュージョンに聴こえてしまうのだが、曲によっては悪くないものもあり、当時人気を博したことも頷ける。ホーンズやキーボードのアレンジに、後年の Etoile de Dakar への影響が感じられることも興味深い。2曲目などは 'Wagane Faye' などとよく似ているように思う。

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 続くサード・アルバム "Apartheid" (1986) からは Manu Dibango からの影響も感じられる。この頃から、Jean-Philippe Rykiel がシンセサイザーとリンドラムのプリセットを担当したので、なおさらサウンドが Super Etoile de Dakar に似ていく。
 彼らは1988年には来日し、東京、大阪、名古屋、札幌でコンサートを行なっている(勿論私は観ていない)。なので、当時の記事を探して読めば、Xalam の経歴についてより詳しいことが分かるかもしれない。

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 "Wam Sabindam" (1993) はローカルな要素がうまくブレンドされており、勢いがあって悪くないと感じた。"Xarit"("Nitou Tey") (1988?) はモロにズーク路線。Discogs には Xalam (III) に関する記載があるのだが、これが Xalam (III) なのだろうか?




 Xalam / Le Sahel のメンバー変遷について簡単に整理してみた。ミュージシャンの出入りがとても多いが、そうした中、Cheikh Tidiane Tall *** と Henry Guillabert **** を軸として活動が続いてきた様子が伺える。

【最初期のメンバー】

 Charles Dieng (vo) *
 Tidiane Thiam (vo)
 Magay Niang (vo) **
 Cheikh Tidiane Tall (g, organ)? ***

【African Khalam Orchestra ‎"Comer Lechon / Niani" (1970) のメンバー】

 Oumar Koïte (alto sax)
 Ayib Gaye (b)
 Gana Diongue (congas/tumba)
 Cheick Tidiane Tall (solo g) ***
 Ahmed Bassirou Lo (tenor sax)
 Madiama Fall (timbales)
 Charles Maurice Dieng (vo) *
 Magaye Niang (vo) **
 M'Baye Fall. (vo)

【Le Sahel "Bamba" (1975) のメンバー】

 Willy Sakho (b)
 Alassane N'Doye (congas)
 Diguy Diabate (ds)
 Thierno Koité (fl, sax) 
 Seydina Insa Wade (g)
 Cheikh Tidiane Tall (g, organ) ***
 Emmanuel Batta (trombone)
 Jean N'Diaye (trumpet)
 Idy Diop (vo)
 René Cabral (vo)
 Pape Djiby Ba (vo, guiro)

【Xalam "Daïda" (1975) のメンバー】

 Tonia Lo (alto sax, vo)
 Serge Alvez (b)
 Xalifa Cisse (congas, vo) *****
 Prosper Niang (ds)
 Jean-Pierre Gandour (g, vo)
 Georges Dieng (lead g)
 Henry Guillabert (organ) ****
 Abdou Mboup (per) ******
 Sanoussi Sidibe (rhythm g)
 Cheikh Diop (trumpet)
 Ibrahima Coundoul (vo)
 Moussa Diongue (vo)

【Xalam "Ade - Festival Horizonte Berlin 79" (1979) のメンバー】

 Papa Moussa Babou (b) *******
 Abdoulaye Niang (ds)
 Henry Guillabert (el-p, synthe, clavinet) ****
 Samba Yigo Dieng (g)
 Abdourahmane Mboup (per) ******
 Xalifa Cisse (per, vo) *****
 Ansoumana Diatta (alto sax)
 Yoro Gueye (trombone)
 Ibrahima Coundoul (vo)

【Xalam 公式サイト最終更新時(2013)のメンバー】

 Papa Moussa Babou dit Baye (b) *******
 Henri Guillabert (key) ****
 Moustapha Cisse dit Taffa (per, vo) *****
 Ibrahima Coundoul dit Brams (lead vo)
 Cheikh Tidiane Tall (g) ***
 Abdoulaye Zon dit Ablo (ds)







by desertjazz | 2024-06-21 00:00 | 音 - Africa

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