山口昌男『アフリカ史』(講談社学術文庫、2023)読了。これは『世界の歴史 第6巻 黒い大陸の栄光と悲惨』(講談社、1977)を改題・復刻したもの。
約半世紀前に書かれた歴史書であるだけに、現在では情報が更新されたもの(特に人類の起源〜古代)や使われなくなった固有名詞もあるが、一読では頭を整理しきれないほどの圧倒的情報量が詰め込まれており、アフリカの歴史をおさらいするにはとても有益だった。たとえば、宮本正興+松田素二『新書アフリカ史』(講談社現代新書)とは違った読後感があったし、より面白く読めた。
それは単なる通史を綴るのではなく、民族や人物の特徴まで生き生きと描き、事が起こった背景や思考まで捉えているからだろう。著者の得意領域とそれ以外とで記述される分量のバランスが相当異なるが、それは一人でアフリカ全体を網羅することの限界であると同時に、この本の特長ともなっている。
そうした姿勢が貫徹しているのには、時系列の歴史を語るよりは、歴史から浮かび上がってくる(山口が呼ぶところの)「アフリカ哲学」を論じたかったからではないだろうか。実際、現代アフリカを予言するような過去の歴史事象すら時折感じたほどである。そして当然ながら、それは最近読み始めた河野哲也『アフリカ哲学全史』の内容とも繋がっていくもののはずだ。
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「十九世紀の末から二十世紀初頭にかけて、非ヨーロッパ世界とアフリカ人民大衆の接触は、西アフリカよりもむしろ南アフリカおよび中央アフリカにかけてより広く行われていたというのは、あまり知られていない事実である。たとえば文化史的に見て、西アフリカおよびコンゴからカリブ海にもたらされたカリプソのリズムが、十九世紀末にギターをともなってアフリカに帰ってきたのはこれらの地方を通してであった。今世紀[二十世紀]のはじめに、多くのアメリカの黒人の伝道師が南アフリカおよびニヤサランドに渡っていたということは、これらの事実と意味深いつながりを持っている。」P.399
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