◆ 7月20日(土)
ベルザンス近くのホテルをチェックアウトして、友人宅へ移動。メトロとトラムと国鉄の3つの駅が並ぶ Blancarde から歩いて数分の便利な場所なので、地下鉄1本、ホテルを後にしてからわずかに20分で着いてしまった。こんな場所に大きな家を持っている友人家族が羨ましい。今日からここにお世話になる。
以前にも Fiesta des Suds を取材に来た時、どうしてもホテルが取れなくて困っていることを相談すると、彼らの家に泊めて下さったことがあった。反対に彼ら一家が日本に来る度に、こちらがもてなすという良い関係が生まれている。
当初の予定では、19日に Massilia Sound System のコンサートを観た翌日は、友人宅に移動して、そこで1日ゆっくりさせていただき、翌21日にはアルルに移って Massilia のライブをもう一度観る計画だった。ところが、20日と21日にも Massilia と同じ会場で気になる無料コンサートが開催されることを知り予定変更。まず今夜はフェイルーズ Fairuz へのオマージュ・コンサート"Hommage à Fairuz par Mazzika Orchestra" を観に行くことにした。
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友人宅にお邪魔した後、午後は一緒に美味しい昼食をいただく。それから夕方までは、昨日の疲れを取るべく、のんびり過ごす。
16:30 に少し散歩へ。周辺を軽く歩くだけのつもりが、ふと思いついて、水も持たないまま、中央駅 Saint-Charels とラ・プレイン La Plaine の中間くらいある Bonne Mere Records まで来てしまった。この店にもアフリカ音楽のヴァイナルがひと山。アルバム2枚とシングル2枚を購入。
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19:30 に出発して地下鉄で移動。今夜は 20:00 にコンサートがスタート。最初のピアノ・ソロは、クラシックをポップ調にした演奏。奏者の情感を押し付けるような大味な演奏で楽しめず。まあ今日はこの後がメインだ。そう思って、会場内を動き回って観察。今日は昨日よりも人が少ないかな。
マルセイユでは、レバノンの歌姫フェイルーズにまつわる、ちょっとした思い出がある。
1995年の暮れ、クリスマスが過ぎた頃にパリからマルセイユに移動してきた。確かその最初の日だっただろうか、ホテルにチェックインして自分の部屋に入ってテレビをつけた瞬間、フェイルーズのコンサートが映し出された。一瞬何が起きたのか分からず戸惑ったのだが、ややしばらくして、レバノンの偉大な歌手のコンサートが(衛星チャンネルで)普通に放送されていることに、ここマルセイユが地中海世界の一部であるという実感が次第に湧いてきたのだった。
さて今夜お目当ての "Hommage à Fairuz par Mazzika Orchestra"、直前にライブの動画を観たところかなり良かったので、期待して来た。まずはビッグバンドをバックに美人ヴァイオリン奏者が演奏。最初は結構普通にポップで、さほど面白味はない。それでも大歓声が起こっていたので、人気はあるのだろう。
7〜8曲ほど演奏した後、彼女はヴァイオリンを指揮棒に持ち替え、そして女性歌手がステージ中央に出てきた。果たしてこの指揮は必要はあるか疑問の生じるパフォーマンスで、彼女はお飾りのアイドルなのだろうかと考え始めた。
ところがだ、徐々に演奏に調子が出てきた。なんとも贅沢な音楽であり、随所に聴き親しんだフェイルーズの代表曲が歌い演奏される(流石に曲名までは出てこないが)。歌声にはフェイルーズのような柔らかさや妖艶さはないものの十分に楽しめる。終盤はアゲアゲのアレンジと歌いっぷりで大盛り上がり。気がつけばすっかり引き込まれてしまっていた。このような豪華で贅沢な音を間近で生で聴けるなんて。これも地中海世界ならではのコンサートだろう。いやー、最高だった。1時間半ではまだまだ聴き足りないほどだった。
23:10 に今夜のプログラムが終了。大いに満足して、近くの店でビール2本を買って、喉を潤す。
余韻に浸りながら、旧港の新しいモニュメントたる大屋根のあたりを散策。こんな深夜になっても大変な数の人々で賑わっている。まだまだ夜は終わらない。バカンスシーズン真っ盛りという雰囲気で満たされていた。
地下鉄で友人宅に戻り、写真のバックアップを取ったり、シャワーを浴びたりしているうちに午前2時。極上の音楽に満たされた興奮がおさまらないが、そろそろ休むことにしよう。
(この2日間の写真を見て気がついたのだが、照明も衣装も椅子も基本全てマッシリアブルーなんだな!)
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(後日譚)
指揮者/ヴァイオリン奏者の名前は Amal Guermazi (د.أمل القرمازي)。自身の Facebook には、パリ出身、サンフランシスコ在住と書かれている。
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