Walking around Massilia (16) - Record Stores in Marseille

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Record Stores in Marseille 〉

 かつてベルザンスには、エクス門 Porte d'Aix から港の方向へとゆっくり下っていくエクス通り Rue d'Aix に、ライのカセットやCDを扱う店が大小数軒存在した。またエクス門を挟んだその反対側のボン・パストゥール通り Rue du Bon Pasteur という小路の中程には、アルジェリアのローカル音楽を専門とするマルセイユのレーベル Edition Boualem が卸問屋のようなオフィスをひっそりと構えていた(スタイフィーのCDなどは、ここから直接買ったりもしていた)。

 マルセイユに初めて来た 1995/96年には、エクス通りの店を訪ね歩いて Cheb Khaled、Cheb Mami、Cheb Hasni などのカセットを買い漁った(結局聴いていないものが多い)。それ以降もこうした店々に顔を出しては新作を試聴してさせてもらったものだった。通い始めた頃はライを中心に買い求めたが、次第にレッガーダやスタイフィーあるいはよりマイナーな音楽の方に興味が移っていった。

 しかし、ボン・パストゥール通りの問屋は10年以上前に消え、カセット/CD屋も次々と店を閉じ、前回7年前に歩いた時には、とうとう1軒もなくなっていた。今回も変わりはないはずと思いながらダメ元で歩いてみたが、もちろん音楽を扱う店は全滅のままで、一番お世話になった店のひとつに至ってはシャッターを下ろしたままだった。そうした状況はパリの18区バルベスに点在していたアラブ/マグレブ音楽のカセット/CD屋とそっくりだ。

 ヴァコン通り Rue Vacon からアル・ドラクロワ通り Rue Halle Delacroix に入った広場(マルシェ)の奥にはコンゴ音楽の専門店があった。昔 El Sur Records に紹介したところ話題になった Franco と Tabu Ley の DVD "Les Vieux Orchestres OK JAZZ & AFRISA" (Salumu Production S007) はここで見つけた(タブー・レイがSF宇宙服風の衣装を着て JB ばりに踊る姿が爆笑ものだった)。だがその店もなくなってから10年以上経つだろうか。今そこは美容室になっている。

 昔はパリのバルベス〜シャトールージュの雑貨屋や美容室に、セネガル盤のCDが若干置かれていた(ニューヨークでも同様で、ハーレムまで買い付けに出かけた時には、レコード店以外も丹念にチェックして、Youssou N'Dour のセネガル盤カセットなどを買い集めたものだ)。しかしマルセイユには元々セネガル人が多いのにも関わらず、セネガルのCDを見かけることは昔からない。これはどうしてなのだろう。

 今回もアフリカ音楽のCDは全く入手できなかった。唯一の例外は Toko Blaze と散歩していて見つけたCD屋だ。カーボベルデやアンゴラなどポルトガル語圏の国の音楽を扱っているとのこと。こうした国々ではまだまだCDが制作されているのだろうか?

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 いずれにせよ、これまでマルセイユに通ったおかげで、アルジェリアなどの全く知らなかったベテランたちの渋い音楽から最新ヒットまで、数多くのミュージシャンや様々な音楽と巡り会えた。ライ全盛期には間に合わなかったものの、それでもそれなりに面白い時代に、マルセイユのマグレブ人街で音楽探しをできたのは幸せなことだったと思う。


 大型店の低調ぶりもますます顕著になっている。かつては Virgin Megastore が結構いい品揃えだったが、それはとっくに昔の話。もちろん今は店自体が存在しない。fnac も同様で、フランス南部(オクシタン)のアイテムなどはそこそこ充実していた。ただし昔からカタログが揃っていない(肝心なものがあったりなかったりする)のがここの難点。そんな fnac も訪ねる度に寂れていった印象だ。それでも今回 Massilia Sound System のLPコーナーがあったのは、さすがは地元と言えるのかも。


 対照的に面白さを感じたのは小型店だった。今回の滞在中には Google Maps で検索して、これまで知らなかった店をいくつか見つけ初めて行ってみた(Mac/iPhone 様様だ)。そうした店では、地元グループの新譜や中古LPが潤沢に扱われているのが嬉しい。IAM の Imhotep のソロアルバムがサイン入りで売られていたりなどして、思わず手が伸びかけたが、これは流石に自重。マルセイユのヒップホップ盤もまとめ買いしたかったが、まずはストリーミングで聴いてからだろう。大人気の Baja Frequencia にしても、自宅で聴くような音楽ではなかったし。

 こうした店でアフリカ音楽の中古盤LPが大量に扱われていたことは意外な発見だった。だがナイジェリアなど英語圏のものが多く、セネガル音楽に至ってはどの店でもほぼなし。これは不思議だった。ある店で尋ねると「Baobab のレコードが欲しいのかい? 人気があるから見つけるのは大変だよ」とのことだった。実際、たとえばセネガルの Ouza のアルバム "Wethe" (Jambaar JM5002, 1980) が 210ユーロで売られていて、Discogs での相場と大差ない。これが今の国際的な水準なのだろうか。

 マルセイユの音楽シーンと強い繋がりを持っている店のいくつかと出会えたのは幸運だった。Galette Records や Bonne Mere Records などは、Massilia 一派と長年深いつながりがあるようだ。店の人と Massilia や Toko の話をすると盛り上がるし、皆さんとても親切で(度々値引きしてくれたし)、本当に音楽が好きなことが伝わってきた。こうした店の人たちには気に入られたのか、珍しい客と思われたのか、あるいはマッシリアやトコと知り合いなのが効いたのか、楽しく話をさせてもらい、別れ際には「いつでも歓迎するよ!」と。特別なものと言いながら、トートバッグまでいただいたのだった。



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by desertjazz | 2024-08-07 12:00 | 旅 - Abroad

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