New Disc : Oum "Dakchi Live in Marrakech"

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 モロッコのシンガー、ウム OUM がデビュー15周年の区切りにリリースしたライブ盤 "Dakchi Live in Marrakech" をリピート中。これが案外いい。

 この新作、2LP だと ¥6000〜9000 が相場で、CD でも約 ¥4000円と高い。Spotify で途中まで聴いてもイマイチだったので見送っていた。彼女はデビュー以来追っていて(ファースト・アルバムは10数年前にモロッコで探して買った)、9年前にはパリでライブも観たのだが、それが物足りなかった。バンドの演奏はいいのだけれど、彼女の声をライブで聴くと線の細さ/軽さに不満を感じてしまったのだ。今回の新作も聴いていて、その印象が蘇った。


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 彼女にとって初のライブ作となった今度のアルバムは、結構あちこちの店に入荷していて簡単に手に入るのだが、どのサイトを見ても売れ残ったまま。やはりこの値段では手を出しにくいのだろう。そう思っていたら、Tower Records が半値に下げたので、この機会にと思ってヴァイナルを購入した。

 アルバムは全13曲。うち10曲が Oum 自身が書いたもので、これまでのアルバム "Lik'Oum"、"Zarabi"、"Soul of Morocco"、"Daba" から選ばれている。他は Matamoros のカバー 'Lagrimas Negras'、ウード奏者 Yacir Rami のオリジナル 'Intidhar'、ベース奏者 Damian Nueva のオリジナル 'Toda La Gente'(2020年にリリースした彼のファースト・ソロ "Orison" に収録されていた)という内容。

 9年前のメンバーと比べると、ウードとベースの2人を除くと他は全員入れ替わっているものの、マグレブとジャズを気持ちよくブレンドさせたサウンドは基本的に変わっていない。ウードとベースの太い音に各種のパーカッションが加わった重い響きと、トランペットとサックスの高音とのコンビネーションがいい。そうなるとやはり Oum のフワフワした声がバックのサウンドに劣ってしまうように感じられる。

 そんなことを考えていると、後半に進むほどインストパートが多くなり、10曲目の長いウードとベースのソロの後には、アフロキューバン度が高まってグッと盛り上がる(クラーベも加わるのだが、3拍目を半拍後ろにずらした変則的な5つ打ち「ルンバ・クラーベ」のリズム)。 スペイン語で 'Lagrimas Negras' を歌ったりしていることにも何故?と思ったのだが、Damian Nueva はキューバ人なのですね。すっかり忘れていた。その影響もあるのだろうか?

 こうなると Oum の声の入る余地はほとんどないかも? 実際彼女もカルカベを打ち続けている。そのように盛り上がった勢いのまま、最後に彼女がワンコーラス歌って終了。Oum は特別声がいい上手い歌手ではないけれど、やっぱり彼女の歌があっての音楽なのだとは思う。

 どの曲でもイントロが流れた瞬間、ファンの女性たちの歓声が上がり、そして自然と大合唱になる。パリで観たそのままの光景が再現されていて、それも聴いていて楽しかった。

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by desertjazz | 2024-12-02 20:40 | Sound - Music