読書メモ:サン=テグジュペリ『夜間飛行』『人間の土地』

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昔から長距離フライトが気に入っている。
地上の些事からは離れ、まるでどこの国にも組織にも属していないようになる、あの感覚が心地よいのだ。

そうしたフライトの際には、毎度、サン=テグジュペリが飛行士時代のことを綴った『夜間飛行』か『人間の土地』を持参し、機内の照明がすっかり落ちた頃に読んでいた。

これら2作、最近、野崎歓による新訳が出たので再読してみた。堀口大學の旧訳より読みやすくなった感があるけれど、そんな差など抜きに心に深く入ってくる作品だ。とにかくいい。

今回『人間の大地』と改題された『人間の土地』は、終盤の「砂漠の中で」「砂漠の中心で」が圧巻。砂漠好きな私に数々の記憶を呼び覚ます。もちろん著者ほどではないが、砂漠では楽しいことよりも、苦しいことや命の危険が迫ったことの方が忘れ難い。

拙著『Kalahari / Desert』では文章量をギリギリまで減らしたため、書かなかったことが多い。
一つは水のこと。カラハリでは1日飲用に3リットル、それ以外に2リットルを要した。朝夕にはコップ1杯の水で顔を洗い歯を磨いたが、それすら贅沢に感じた。
サン=テグジュペリが水なしで砂漠を200キロも歩いたとは信じ難い。)

エチオピアのアファール(ダナキル砂漠)では同行した一人が熱を出して倒れた。深夜、熱風が吹き付けるテントの中で体温を測ろうと考え体温計を取り出した。だが、水銀柱が40度を超えていて、測るのを諦めた。
(あの旅では幾度か洪水や鉄砲水に襲われ、本当に危なかった。)

砂漠の旅では毎回厳しい試練が繰り返された(人に明かせない話も多い)。
その一方で、カラハリやサハラから見上げた星空の美しさは忘れられない。
今もアフリカの砂漠に惹かれ続けている。

そして『人間の大地』の最終章「人間たち」。幾分難解だが、これこそサン=テグジュペリが真に伝えたかったことなのだろう。

「...今日の戦争は、助けると言いながら破壊する。」
「朽ち果てずに残った側が勝利者となる。だが敵対する双方はともに朽ち果てるのだ。」(369頁)
「なぜ憎しみあうのか? 同じ惑星によって運ばれ、同じ船の乗組員であるわれわれは運命をともにしている。」
「われわれを解放するためには、互いを結びつける目標があると自覚できるように助けあいさえすればいい。」(370頁)

何ら根拠もなく対立を煽られ、それが激化する現在にも、全くそのまま通ずるメッセージではないだろうか?







by desertjazz | 2025-07-22 11:00 | Book - Readings
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