今年1〜2月のインドネシア旅行の際、ジャワ島でレコード店を巡り、ジョグジャカルタのある店で薦められた中の1枚がユラ・ユニタ Yura Yunita の “Tutur Batin” だった。聴き始めた当初はマレーシアのシーラ・マジッドを少し普通にした感じという印象に過ぎなかった。それが繰り返し聴いているうちにドンドン良くなり、すっかりハマってしまった。昨年のベストアルバムの2位に選んだ南アのThandiswa Mazwai "Sankofa" もそうなのだが、日頃熱心に新譜をチェックしていなくても、このように日本に紹介されていない音楽の中に自分の好みのものを偶然見出せる時が楽しい。
ユラ・ユニタはジャワ島西部のバンドゥン出身で(本名 Yura Rachman、1987年6月9日生まれ)、なんでもテレビのオーディション番組に出演したことがきっかけでデビューしたそう。彼女は最初 Yura 名義でアルバムを2枚 “Yura” と “Merakit” をリリース。その後 Yura Yunita 名で 2021年にリリースしたのが “Tutur Batin” である。
・Yura “Yura” (deajors, 2014)
・Yura “Merakit” (deajors, 2018)
・Yura Yunita “Tutur Batin” (Merakit, 2021)
ファースト "Yura" もセカンド "Merakit" もオフィス・サンビーニャが輸入・配給していたので取り寄せて聴いてみた。声はいいし、メロディーもいいし、アレンジも洗練されていて、なかなか上質なポップ・ミュージックだ。ほとんどの曲を彼女自身が書いている。
ファースト・アルバム冒頭の 'Balada Sirkus' は彼女のセンスが光るキャッチーな曲。このアルバムからは 'Cinta Dan Rahasia' と 'Berawal Dari Tatap' がヒットしている。セカンドの 'Takkan Apa' も軽快で楽しい。彼女はしっとりとしたバラードも、こうしたノリの良い曲も得意としている。
サード・アルバム “Tutur Batin” では表現がグッと深まっている。曲も歌もアレンジもさらに良くなっていて、インドネシア伝統音楽とジャズなど西洋ポップとのブレンド具合もいい(これは踊りも含めて)。オフィシャル PV が各曲とも複数作られていて、それらを観ると彼女の素顔や等身大の姿や、音楽とステージへの直向きさ、弱者への優しい視線(タイトル曲の PV などに顕著)なども伝わってくる。
中でも素晴らしいのは曲の並びを変えてアルバムを再構成したこのビデオ。
最初の美しい 'Dunia Tipu-Tipu' は名曲だと思うし、中盤ではしっとりとした歌を聴かせ、最後の3曲 'Mulai Langkahmu'、'Hoolala'、'Bandung' で畳み掛けて弾ける(これら3曲を深夜に眺め聴き入ることが今年の日課とさえなっていた)。まさに彼女のコンサートを体感するかのような流れだ。
この PV はトータル・コンセプトもよく考えられいる。淡いトーンの統一感。ステディカムによるワンカットを基本とする撮影(ノー編集で全曲踊り切ることにも感心)。細かい点まで観ていくと実に様々な仕掛けが施されている。ジャズや R&B などからの影響色濃い音楽性もそうなのだが、映像作りに関してもアメリカのミュージシャンたちの作品も相当研究しているチームだと思う(例えばチャイルディッシュ・ガンビーノなどからの影響も大きいのではないだろうか)。
ライブビデオも次々出していて、中でも “Bandung” が最高。彼女の人気の高さが伝わってくる。ユーミンやドリカムのライブもこんな感じなのだろうと思いながら(観たことないけれど)、こんなライブなら生で観たいなぁとも。
まあ、ごく普通のポップ・ミュージックであり特別新しさもないのだけれど、私はこうした分かりやすい音楽が好きです。残念なことに、この3作目 "Tutur Batin" は日本には入ってきていない様子。こうした音楽、日本では売れないのだろうか?
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