2008年 12月 31日
今年の10枚 - Best Albums 2008(暫定版)
1. Abida Parveen / "Ghalib" (Pakistan)
毎年海外で面白い音楽を見つけて紹介してきたが(ヒュー・トレイシー・シリーズ、イダン・レイチェル、復活したファタイ・ローリング・ダラー、レッガーダ、などなど)、残念ながら今年は例年のような新たな発見をできなかった。インドのコルカタでこのCDを見つけて帰り日本に紹介できたのが、ささやかな成果だったか。いや、それ以上に、自分にとっては幸せな出会いだった。
2. "Kaushiki" (India)
今年は遂にインド声楽に開眼し、春先にかけて、30〜50年代のリイシュー盤をコルカタとエル・スールで片っ端から買い漁った。これらも今後も繰り返し愛でるように聴き続けることだろう。
本業の方ではインドの映画監督たちとのプロジェクトが続いている。インドの現状にも大いに関心がある。なのに、いくら誘われてもインド旅行には興味が湧かない。だけど、コルカタでのカウシキのコンサートはちょっと観てみたい。
3. Rouda / "Musique des Lettres" (France)
彼の 'Donnez-moi ma Chance' を今年のベスト・ソングに選んだが、他にも捨て曲なしのデビュー・アルバム。この曲のクリップ(これも優れている)などを観て、スラムのライブにも行きたくなった。
4. Baaba Maal / "On The Road" (Senegal)
この選と合わせてアフリカ音楽のベスト10も選んでみたのだが、アフリカの新譜に関して言えば今年はまずまずの豊作年。そんな中、アフリカものの第1位はバーバ・マールのこのアコースティック・ギターの弾き語り作で決まり。バーバ・マールはアコースティックに尽きると思い続けているし、またこうした穏やかな音楽が今年の自分の気分に合っていたということもある。それと同時に、この結果はアフリカものに突き抜けた新作がなかったことの反映でもあるように捉えている。
(このアルバム、現時点ではダウンロード販売しかなされておらず、私が買ったのはセネガル産のブートCD-Rのようだ。)
5. Moussu T e Lei Jovents / "Home Sweet Home" (France)
マルセイユ、と言うより、ラ・シオタの愛される男たちのユニットの3作目。ファーストやセカンドと同様の路線を踏襲した内容で聴き飽きない。それらと比べるとやや物足りないものの、これだけ早いペースで新作を届けてくれることは嬉しい限りだ。とにかく「好き」としか言えない音楽。
今年はフランスには行けず、タトゥーたちにも会えなかったことが残念。
6. Randy Newman / "Harps and Angels" (USA)
今年はなぜかロックやジャズに個人的には収穫が少なかった。
7. Kuniyuki Takahashi / "All These Things" (Japan)
8. Sakaki Mango & Limba Train Sound System / "Limba Rock" (Japan)
9. 『アイヌ・北方民族の芸能』(Japan)
10. Jupiter Bokondji & Various Artists / "Jupiter's Dance" (Congo) (DVD)
♪
今年はレコード(CD)の購入枚数が例年の半分以下になり、聴いた量もピークと比べたらおよそ10分の1程度だったのではないだろうか。なので、この10枚は音楽シーンを客観視して純然たる今年のベスト・アルバムを選出したものではなく、例年以上にパーソナルな結果となっている。
音楽をあまり聴かなくなったのには、猛烈に忙しくなったこと、音楽を聴くことよりも読書を優先させたこと、音楽の本質について思案するうちに自分が音楽に対して求めるものが自身の中で変質してしまったこと、さらには多くの方が指摘する通り今年のワールドミュージックが全般的に不作だったことが、その理由として考えられる。恐らくこれら全てが絡み合っており、さらには海外を旅することで新たな刺激を得る機会が激減したことも影響していることだろう。
こうした状態の下、無理して新作をフォローする必要を感じなくなり、そうした時間を昔から愛聴してきた作品ために傾けるようになった。つまりは出来のあまりよくない新作を聴くために自分が最も愛する音楽を聴く時間が奪われていることに耐えられなくなったのだ。さらには、ここ数年進めている「生活のダウンサイジング」という自身のテーマとも密接に繋がりながら、音楽受容の形がどんどん変化していった一年だった。(このことについては、改めて綴ってみたい。)
限られた時間の中で、自分にとって本当に上質な音楽ばかりに耳を向ける日々。そのため、上のリストに掲げた10枚はだれにでも推薦できる音楽とは言い切れないし、自分自身見逃してしまってリストから漏れてしまった作品も多いことだろう。しかし、こうした音楽とのつきあい方をしたおかげで、今年の音楽生活はとても豊かなものとなったと感じている。
(※ 時間切れにつき、以降、追記&修正の予定。<アフリカ音楽のベスト>などの各部門は FB/DJ のサイト内にて発表中。)