R.I.P. I Ketut Suwentra

 バリ島の友人から急報。ジェゴグ楽団 スアール・アグン Suar Agung のリーダー、スウェントラ I Ketut Suwentra 氏が本日14時に肺ガンで亡くなったとのこと。アグン村の彼のご自宅を訪れて、巨竹ジェゴグの音を実体験できたことは良い思い出です。スウェントラ夫妻とは度々会ってお話しできたことも嬉しかった。急逝されたことは、とても残念です。合掌。



 追記

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 これは約20年前に体験した、スウェントラさんのご自宅での演奏風景(自身の Website からコピーしてきたので、画質が悪い。ちゃんとスキャンし直さなくては、、、)。スアール・アグンのライブは、昨年、目黒のパーシモンで観たのが最後になってしまった。お邪魔かと思って、あの時は挨拶しにも行かなかったが、最後にもう一度お会いしておけばよかった。







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by desertjazz | 2018-05-10 21:15 | 音 - Music

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 ガーナに関するネタが続いた流れで、今年2月に読んだ小説のご紹介。

 ヤア・ジャシ Yaa Gyasi は1989年ガーナ生まれの女性作家(現在はアメリカ在住)で、『奇跡の大地』は彼女のデビュー作。出版以来、世界各国で話題になっているとのこと。

 ファンティとアシャンティという(現在ガーナという国の土地に生きる)アカン人の2つの系統に属する、2つの家系の人々、主要人物に限ってもおよそ20人の、200年を超える壮大な年代記。ファンティとアシャンティの、奴隷貿易を通じた両者の関係、対立・戦闘、そこに深く関わるイギリス人(実際主人公の多くは白人との混血でもある)、そして奴隷として送られたアメリカ。そうした時代の流れに翻弄された人々の壮絶な物語は自ずとアレックス・ヘイリーの『ルーツ』を連想させる。

 約20人の主人公たちは、主人公たるだけのエピソードを持っているのにも関わらず、語り尽くされていない感が強い。それなりにしっかり描かれているのだが、通読すると筆致が浅い印象を受ける。ただの歴史の羅列に感じられるのだ。なので、邦訳で400ページ近い作品でありながら、最低でもこれの3倍のテキスト量は必要だったし、それだけの作品になりうる素材を揃えられていたと思う。(ただし、デビュー作で大長編を書くだけの環境はなかっただろうと思う。また、それだけの大作をものにする筆力が彼女にあるかどうかも未知数だ。)

 この小説のエンディングは、伏線の張り方から考えて、これしかない。いや、想定以下だった(なので、彼女の筆力は未知数だと感じた)。もっと深みを持たせる方法があったはず。

 それでも、内容豊富な充実作。ハイライフ・ミュージック含めて、ガーナ音楽に関心があるならば、ここで書かれている歴史的背景くらいは知っていて損はないと思う。



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 今年1月にニューヨークでブルース・スプリングティーンの Springsteen On Broadway を観る前後に読んでいたのは、この『奇跡の大地』や、ロビン・ケリー『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』、タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』など、偶然にも黒人奴隷の末裔の作品が多かった。(スプリングティーンのプレミア・チケットを得て以来、NYC が呼んでいる?)ニューヨークなどで暮らす黒人たちの苦闘を読み続けて、アメリカという差別社会で生きることを語ることは終わりのないテーマなのだろうと考えさせられたのだった。






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by desertjazz | 2018-05-10 14:04 | 本 - Readings

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 塚田健一『アフリカ音楽学の挑戦 伝統と変容の音楽民族誌』(2014) を読了(完読は今年31冊目)。

 ザンビア北西部に住むルヴァレ人の、少年たちの通過儀礼で歌い奏でられる音楽を中心とした研究と、ガーナ沿岸部ケープコーストなどに住むファンティ人の宮廷音楽に関する研究、それのこの両者から演繹される論考。ルヴァレ音楽に関しては、精密な採録楽譜に基づきながら、そのリズム、ハーモニー、歌詞等々について論を展開する。学術論文に近い筆致であるだけに、一見当たり前のことをくどく語られている気分になるのは仕方ないところ。地理的にヒュー・トレイシー Hugh Tracey の採録やマイケル・ベアード Michael Baird の調査と結びつくものも期待したが薄かった。それでも、ルヴァレ人と我々(日本人、欧米人)との音楽の異同の捉え方が異なる理由を論駁するあたりは面白かった。

 しかし、この本に興味を持った理由は後半のガーナ。「第12章 宮廷音楽ハイライフ様式の成立」を読みたかったから。そうでなければ、こんな高価な本など買うわけがない(と言いつつ、3年以上放置したままだった)。ファンティの宮廷音楽が幾段階の過程を経て、ポピュラー音楽ハイライフ的要素を受容し、大衆から絶大な人気を博していく様子が詳述される(より正確には、元々12拍子だった宮廷音楽が、近年興隆したカルチュラル・グループの影響を受けて、ハイライフ・リズムと近似した4拍子クラーベ・リズムを取り込んだ楽曲を生み出していく)。ファンティの宮廷音楽には歌を伴うのに対して、内陸部アシャンティ宮廷音楽は演奏のみで歌がないことにも興味を覚える。

「第11章 伝統的「著作権」意識の変容」も一読の価値あり。ジョン・コリンズのどの著作でも、ガーナとナイジェリアの音楽家協会の歴史と活動を取り上げていることとも響き合うように感じた。この本、ハイライフ以外についても彼の研究を頻繁に参照している。例えば、「ガーナでは、独立のはるか以前の二十世紀前半に「伝統的な」形式で娯楽音楽などさまざまな音楽ジャンルが新たに生み出されていたことをコリンズは明らかにしている」、「コリンズによれば、伝統と近代といった対立的な区分は西洋世界の創作であって、アフリカでは伝統的音楽はつねに創造され、再創造されてきたという」(ともに P.331)など。

(個人としても、世界中を旅して歩いて、著名ミュージシャンのものを含めて多数の歌と演奏を録音してきている。中には貴重なものも多く、「自由に使って構わない」と言われているものもあるが、非西洋圏における「著作権」に関して戸惑いがあるままなので、そうした録音は基本的に公開していない。)

 あとひとつ。アフリカのポピュラー音楽に興味があるので、日々関連文献を探しているのだが、新著(主にアメリカでの出版物)には、音楽そのものについてより、その社会性について論述するものが多いように感じていた(それで買うことを躊躇することが多かった)。『アフリカ音楽学の挑戦』を読むと、確かにその傾向はあるようで、「(...) それらが音楽の分析からほとんど完全に離れて音楽の社会史研究になっている (...) 」(P.40)、「アフリカ音楽史の歴史においては、(...) 構造的アプローチは (...) 社会史的アプローチにとって代わられ (...) 」(P.336) と書かれており、その理由にも触れられている。こうした傾向がもたらされたのには、他の理由も浮かぶとともに、アフリカ音楽を社会の中に位置付けて考える意味と必要性についても再考させられたのだった。



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 塚田健一さんの本はほとんど読んでいないかなと思いながら、書架をチェックしてみたら、『アフリカの音の世界』、『アフリカ音楽の正体』、スコラの『アフリカの伝統音楽』(スコラのプロジェクトとは少々関わりを持っていて、それとは別に献本いただいていた)の3冊は読んでいた。『アフリカ音楽の正体』は、ドラムで会話するという都市伝説?を打破した(慣用句はやりとり可能だが、あらゆる会話のやり取りは不可能)ところに、やっぱりと頷く。ルヴァレに言及した部分もあって、色々忘れているので、再読しようと思いながら、塚田さんの他の著作『文化人類学の冒険』『世界は音に満ちている』も手配した。






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by desertjazz | 2018-05-10 14:03 | 本 - Readings

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 塚田健一の『アフリカ音楽学の挑戦 伝統と変容の音楽民族誌』を読了(この本については別途紹介)。その参考文献リストをチェックしながら、前回の記事で取り上げなかった、ジョン・コリンズ John Collins の著作について調べてみた。

 それらのうちの1冊 "West African Pop Roots" (1992) が書架から出て来たので拾い読み。これはコリンズの最初の?著作 "African Pop Roots: The Inside Rhythm of Africa" (1985) に追補したものらしく、彼のその後の著作はこれを出発点として内容を膨らませていったようだ。「西アフリカ」とは言え、彼の著作全般が英語圏西アフリカ音楽に傾倒しているのと同様、ここでもガーナを中心に記述を展開している(英語圏だからなのか?南アにも一章割かれている他、リベリアの章も興味深い)。

 そのことを補うべく、仏語圏西アフリカに関しては Flemming Harrev が "Francophone West Africa and theJali Experience" の章を代わりに書いている。"The Lion" をリリースして世界進出するまでの Youssou N'Dour を中心にセネガル音楽史について語られていて、Youssou のダカールでのライブの情景や彼へのインタビューを読んで今から約30年前のことが懐かしくなってしまった。

John Collins "African Pop Roots: The Inside Rhythm of Africa" (W. Foulsham and Co., 1985)
John Collins "West African Pop Roots" (Temple University Press, 1992)

 ジョン・コリンズについては、彼がコンサート・パーティーに関して執筆した論文 "The Ghanaian Concert Party : African Popular Entertainment at the Cross Roads" もあったのだが、これを読むには著者本人にリクエストする必要があるらしい。興味はあるが、そこまでして読む必要はないかもしれない。

 John Collins "The Ghanaian Concert Party : African Popular Entertainment at the Cross Roads" (Ph. D. Dissertation, State University, 1994)




 ガーナのハイライフに関してはこんな著作も見つけた。今年7月に出版予定。どんな内容の本なのだろうか?

Nana Abena Amoah-Ramey + A.B. Assensoh (Foreword) "Female Highlife Performers in Ghana - Expression, Resistance, and Advocacy"


(仏語西アフリカのポップに関しては、昨年パリで入手した Florent Mazzoleni "Afro Pop: L'age D'or des Grands Orchestres Africains" が圧倒的に充実していると考えている。読んで紹介したいところなのだが、フランス語なのでいつ読み終えられるのか定かではない。)





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by desertjazz | 2018-05-10 14:02 | 本 - Readings

DJ