2018年 11月 30日 ( 2 )

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 「鞠の中村綾ちゃん」(と自分が勝手に呼んでいる)こと、西アフリカはマリ出身のシンガー、アヤ・ナカムラの第2作目が、本日パリから到着。タイトルはそのものズバリ "NAKAMURA"。しかも漢字でも「中村」と添えている。アヤちゃん、よっぽど日本びいきなんだな。

 昨年リリースされたファースト・アルバム "Journal Intime" は 2017年のベスト・アルバム第2位に選んだほどのお気に入り。なので、このセカンドもリリース直後から Spotify で聴き続けていたのだが、やっと CD でも楽しむことができた。


 ベスト・アルバムのコメントでは「声が特別良かったり、抜群に上手かったりするわけでもないのだが、」とちょっと語弊のある書き方をしてしまったが、その声が彼女の最大の魅力だと思う。軽く歌っているようでも、すっと前に出てくる伸びやかさがいいんだよな。まるでベンツに乗っている時のような「余力」を感じさせる歌声。きっと彼女の立派なボディが、その素晴らしい歌声を産む源になっているんだろう。

 さてセカンド・アルバム "NAKAMURA"。デビュー曲 "Brisé"、Fally Ipupa との "Bad Boy" 、MHD との "Problèmes" に匹敵するような飛び切りの名曲は見当たらないものの、いずれも佳曲揃い。例えば冒頭 "La Dot" や Niska と共演した "Sucette" の小気味良いフレージングからして「アヤ印」の楽しさ。PV を繰り返し観て耳に擦り込まれたシングル曲 "Copines" の軽妙なポップさも万人受けして当然。ダンサブルなトラックに身体が揺さぶられる一方で、切々とした彼女の声に包み込まれた女性らしさや独特な哀感には心が揺れる。全13曲で 38分というコンパクトさもいいな。

 アヤちゃん、この新作を引っさげて来年3月末からフランス・ツアーをスタートする。タイミングが合えば、3/30 のマルセイユ(Espace Julien)か 3/31 のパリ(L'Olympia)あたりを観に行きたいと思っていたのだが、、、各公演とも瞬く間にチケット完売! パリ公演がたったの2時間で捌けたことは、ちょっとしたニュースになっていた。ニューアルバムの曲が軒並みフランスでチャートインしたことも驚きと共に話題に。どうやら今、フランスでもアフリカ諸国でも「アヤ・ナカムラ現象」とでも呼びうることが起こっているようだ。

 2年前には日本ではほとんど誰も知らない存在だったのに、これからは日本でもグングン人気が高まりそうな予感。だけれどこれじゃ来日を期待するどころか、ヨーロッパに行ってもライブを観られそうにない。うーん、でもやっぱりアヤちゃんのステージが観たいぞ!



 (補足)

 「アヤ・ナカムラ」という名前の由来をご存じない方のために。

 アヤ・ナカムラは、アメリカNBCで放送されたテレビドラマシリーズ『ヒーローズ HEROES』の登場人物の一人、中村広(ナカムラ ヒロ)のファンで、そこから名前を取ったそう。そして、「アヤ」という名前は本名だそうです。

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by desertjazz | 2018-11-30 18:00 | 音 - Africa

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 この頃夜になると安東ウメ子さんの『イフンケ Ihunke』をよく聴いている。それもアナログ盤で。これはドイツのクラブ・ミュージック系レーベル PINGIPUNG がプロデューサーの OKI さんに打診して、今年の夏にヴァイナル化が実現した 2LP である。

Umeko Ando "Ihunke" (Pingipung 060, 2018)

 アルバム "Ihunke" は言わずと知れた名盤。2001年にリリースされたオリジナル CD はもちろん持っており(2011年には未発表だった4曲を追加して再発売)、長年愛聴し続けている。しかし、12インチの美しいジャケットを目にした途端、どうしても欲しくなって買ってしまった。これで "Ihunke" は3枚目だ。

 しかしアナログ盤の音が期待した以上に良くて、買って正解だった。CD の音と比較すると、ウメ子さんの歌(ウポポ)も OKI さんのトンコリも、響きの細やかなところまでいっそう美しく記録・再生される。そのため、これまで慣れ親しんだ音以上に、空間的な広がりや奥行きを堪能できるのだ。CD の音も決して悪くないのだが、アナログの音に比べたら、幾分かだけ詰まって密室的に聴こえるように感じた。

 この 2LP には OKI さんへのインタビューを掲載したシートが封入されている。これは、アイヌを知らない/詳しくない外国人向けにアイヌやトンコリについて概説し、アルバム制作に至った経緯などについて書かれたものなのだが、日本人にとっても十分有益な内容だ。

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 それにしても、帯広アイヌのウメ子さん、旭川アイヌの OKI さん、樺太アイヌにルーツを持つ楽器トンコリ、これら3者が出会い、歌(ウポポ)とムックリとトンコリの音が織り重なって生み出される響きの何と美しいことか(数曲でウポポで加わっている女性たちはマレウレウの皆さんですね)。傑作という評価にも納得。自分にとっても一生ものだ。

(私は昔、白老町や、二風谷を含む平取町に住んでいたことがあるので、道南のアイヌにはある程度馴染みがある。だが、旭川や道東のアイヌ、またそれらの差異についてはほとんど何も知らない。アイヌのことをもっと知りたいな。)

 思い返すも、一度ウメ子さんの生声を聴いてみたかった。しかし彼女は 2004年に72歳で亡くなられているので、残念ながらそれは叶わない。その分残された録音を慈しみつつ聴き続けることにしよう。

 私の手元にある彼女の CD は以下の4枚。他に『ムックリと安東ウメ子』(1995年)(Wikipedia によると『安東ウメ子・ムックリの世界』1994年)といった作品もあるようなので、それもいつか聴いてみたいな。

・OKI featuring Umeko Ando "Hankapuy" (Chikar Studio CKR-0102, 1999)
・Umeko Ando "Ihunke" (Chikar Studio CKR-0103, 2001)
・Umeko Ando "Upopo Sanke" (Chikar Studio CKR-0106, 2003)
・Umeko Ando "Ihunke" (+4) (Chikar Studio CKR-0119, 2011)

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 最近はニュースに接する度にいよいよ絶望感がつのり怒りが収まらなくなる。そんな時でもウメ子さんの歌声はまるで子守唄のように私の心を鎮めてくれる。アルバム・タイトル「イフンケ」とは子守唄を意味するという。これは彼女の音楽に最も相応しい名前だろうと思う。







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by desertjazz | 2018-11-30 14:00 | 音 - Music