2018年 12月 31日 ( 2 )

BEST ALBUMS 2018

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1. BRUCE SPRINGSTEEN / SPRINGSTEEN ON BROADWAY
2. BALOJI / 137 AVENUE KANIAMA
3. FEMI KUTI / ONE PEOPLE ONE WORLD
4. NAKHANE TOURE / YOU WILL NOT DIE (PREMIER ALBUM)
5. MOUSSU T E LEI JOVENTS / OPERETTE VOLUME 2
6. JASKULKE SEXTET / KOMEDA (RECOMOSED)
7. IBRAHIM MAALUF / LEVANTINE SYMPHONY NO.1
8. MHD / 19


 以下、絶対的評価や時代性などに関わりなく、自分が好きな音楽、よく聴いたアルバムについての個人的感想。(これだけ何でも大量に手軽に聴ける時代になってしまうと、音楽を楽しむには自身の感性に従うしかない。)

 迷わず1位に選んだスプリングスティーン、実はまだ聴いていない。「チケットが取れない!」と誰もが悲鳴をあげたブロードウェイ公演、幸運にも私は早々と今年1月に観ることができた。スプリングスティーンは他のアーティストたちとは全く別次元で音楽に向き合っていることを感じ取り、心から感動した。我が生涯で最高の音楽体験。これを(実質)最前列センターで観られたのだから、チケット代 850ドルは惜しくない。その一瞬一瞬の光景と音を脳に刻み込んできたので、CD で聴き返す必要を感じていないのだ。先日 12/16 に NETFLIX で世界初公開されたブロードウェイ公演も観たが、実際現場での体感にはほど遠かったし。なので、録音を聴くことで自分の記憶が薄れてしまう怖さもあり、今後も聴くことはないかも知れない。それでも、今年これを超える作品はないだろうと、聴かずともそう確信している。

 2位はバロジ。第一部のダンサブルな祝祭感も、二部から三部にかけての切々とした歌と息詰まる緊張感も素晴らしい大作。自ら監督したビデオなどのビジュアル面も含めて、彼の様々なフェイズがほとばしる傑作。来日公演を含めて今年4回観たステージも毎度たっぷり堪能。特にマルセイユでのステージは圧巻だった。Facebook のメッセージなどを通じて、あるいは直に会って色々やりとりしたことも良い思い出になった。

 今年はアフリカ音楽の豊作年で、良い作品が多かった。それらの中から、フェミ・クティと(ナカネ・トゥーレ改め)ナカネを3位と4位に選出。フェミは完全復活。キャッチーな曲が揃っていて、20年近く前の一番良かった頃に戻った感がある(セウン・クティはアルバムもライブも今ひとつスケールダウンしたままだったので、選外に)。仲根くんのセカンドはファースト"Brave Confusion" のただの焼き直し/リミックスじゃないかと最初は思った。しかし、繰り返し聴くうちにどんどん彼のダークな世界にハマっていく。リミックスは彼の良さが出る方法なんだろうな。掲載ジャケットは赤い「ワキ毛盤」じゃなく、Anohni 参加曲などの6曲を追加した Premier Version の方。

 5位、ムッスーTが1930年代にマルセイユの街で流行った曲の数々をカバーした新作は、ひいき目抜きにしても素晴らしい出来。彼らのアルバムの中でも最高作なのではないだろうか。全て楽しい曲ばかりであり、マルセイユで観たライブは観客を笑わせる語りやパフォーマンスもあって、より楽しいものだった。

 ジャズも豊作だった。個人的に特に気に入ったのはポーランドのピアニストたちによる、クシシュトフ・コメダ Krzysztof Komeda の再解釈作品集。ジャズ系では CHRIS DAVE AND THE DRUMHEADZ も ANTONIO LAUREIRO "LIVRE" も最終候補だった。3作ともマジカルな音の瞬間が来ることが共通している。これぞ音楽を聴く醍醐味。BRAD MEHLDAU / AFTER BACH は面白い試みで(視点は KOMEDA と共通しているかも)気持ちよく飽きるほどに聴いたが、残念ながら10枚には残せず。

 7位、イブラヒム・マールーフは一気聴き必至な流麗な組曲。年末に届いた最新作ライブ "14.12.16 LIVE IN PARIS - ACCORHOTELS ARENA" の3時間半に及ぶライブも見どころ満載。多作ぶりからも、彼の好調さが伝わって来る。

 何を落とすか迷ったアフリカもの。最後に残ったのは8位 MHD と9位の AYA NAKAMURA。MHD とサリフ・ケイタは互いのアルバムにゲスト参加しているが、サリフのラスト・アルバム "UN AUTRE BLANC"(*)より MHD の方が良くて繰り返し楽しんだ。中村綾ちゃんは昨年2位に選出したファースト・アルバム "JOURNAL INTIME" と比べると、決定的名曲がないなど見劣りする。しかし、「中村現象」がフランスなどを席巻した今年、やっぱりベスト10から外しにくい。

(*)サリフ・ケイタの「引退」を私が伝えた途端、その情報が拡散して少々不安になったのだが、アルバムのライナーに 'this is my last album' と書かれていてひと安心? しかし本当にアルバム制作を止めるとはとても思えないのだが。

 アフリカ音楽の諸作の中で、サウンド・プロダクション的には FATOUMATA DIAWARA "FENFO" が秀でていたが、あのガラガラ声が辛い。勿体ないなぁ。今年大いに話題になった ANGERIQUE KIDJO "REMAIN IN LIGHT" は結局まだ買っていない(悪くないんだけれど、自分に必要な音楽じゃないので。これを聴き始めると、すぐに TALKING HEADS の方を聴きたくなってしまう)。セネガルの歌姫 COUMBA GAWLO "TERROU WAAR" もお気に入りだが、フィジカルまだ未入手。南ア MAFIKIZOLO の "20" のポップさも良かったな。

 最後の10位は、深夜によく聴いたアルメニア人とトルコ人による静謐な作品を選択。決して特別凄い音楽ではないし、彼らは前作 "ADANA" の方が好きだけれど、今年夏のテーマがコーカサスで、来年のテーマの一つがトルコだということもあるので。

 アルバム・フォーマットじゃないので選外にしたが、TIGRAN HAMASYAN の10インチ "FOR GYUMRI" とSUDAN ARCHIVES の12インチ "SINK" も愛聴した。来年はフルアルバムに期待。

 リイシューにも好盤が多かったが、一番よく聴いたのは "NOSTALGIQUE ARMENIE : CHANTS D'AMOUR, D'ESPOIR, D'EXIL & IMPROVISATIONS 1942-1952" だった。この夏にアルメニアを旅する直前までずっと聴き続けていた。

 そして、「隠れベスト」はロシアの LEONID & FRIENDS "CHICAGOVICH II"。実はこれも買っていない。なぜなら全曲の演奏動画がネットで観られて、これらを観ている方が楽しいので、買う必要がないのだ。驚いたのは、かつて James Pankow がリードヴォーカルをとった "You Are On My Mind" の素晴らしさ。これほどの名曲だったとは! オリジナルを遥かに凌駕しており、今年最も多く観たビデオになった。"Street Player" もオリジナル・ヴァージョンといい勝負。"Hot Streets" の正確なコピーも見事。6管編成の "Beginnings" だとか、ストリングスがニコニコ顔の "If You Leave Me Now" だとか、とにかく楽しくて幸せな気分にさせられる。



 今年は大発見がなかったし、ブログで音楽を紹介することもあまりできなかった。それらは来年の課題としよう。とにかく SPRINGSTEEN ON BROADWAY がほぼ全てと言って構わない1年だった。3年連続でブルース・スプリングスティーンのライブを観に行き、その3年目にこんなとてつもない体験と心打ち震える感動に恵まれるとは。これから何を求めて生きていけば良いのか悩み続けているほど。

 来年にも期待しつつ、ひとまずは、幸せな気分にさせてくれるたくさんの音楽と出会えた 2018年に感謝 !!







by desertjazz | 2018-12-31 23:02 | 音 - Music

BEST BOOKS 2018

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◆ロビン・ケリー『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』
◆カール・オーヴェ・クナウスゴール『わが闘争2 恋する作家』
◆角幡唯介『極夜行』
◇ラーナー・ダスグプタ『ソロ』
◆奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』
◆スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
◇奥泉光『雪の階(きざはし)』


 今年読み終えた本の中で印象に残った10冊。順位づけはなし。リストは読んだ順。初めて出版されたのが今年でないものも一部含まれている。

 完読は86冊で、今年も100冊に届かず(毎年書いている通り「数じゃない」が、最低でもこれくらいはと自分に負荷をかけている)。1月にニューヨーク、6月からドーハ、アルメニア、ジョージア(グルジア)、10月にはマルセイユと、海外だけでも3回旅行したので、それらの準備にずいぶん時間を取られ、また旅行中も読む時間がなかった影響が大きい。

 結構豊富な年という印象だったのだが、振り返ってみるとさほどではなかったかも。決定的に面白い小説とは出会わなかった。一番楽しく読めたのは、マルセイユ滞在に合わせて読み始めたアレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』全7冊。よくできた大衆小説だった。

 トップ3を選ぶなら、『ソロ』と『雪の階』と『日本が売られる』だろうか。特に『雪の階』は構成も文章表現も素晴らしい。場つなぎ的なささやかな挿話と思ったものまでが、重要な伏線となっている。見たことない漢字や初めて知る表現が頻出するのに、スラスラ読めてしまうから不思議。文章の美しさはフロベールの『ボヴァリー夫人』に匹敵するレベルとさえ思った。主人公、笹宮惟佐子にすっかり惚れてしまったよ。それだけに、最終章の謎解きにはかなり失望させられた。

『日本が売られる』は大変よく調べて書かれている。この本によって多くの日本人の眼が開かれたはず。矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』とともに今の日本人にとって必読の2冊。

『ソロ』はまさしく「摩訶不思議な」長編小説。コーカサスとニューヨークという舞台設定に今年の自分との縁も感じた。第一楽章のクオリティが第二楽章まで続いていればもっと良かったのだが。(前作『東京へ飛ばない夜』も読んでみたが、同じ「妄想」を起点としながら、この落差はなんなんだ! これだけつまらない小説は記憶にない。)

 角幡唯介は、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』や『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』の方が緊迫感があり深くて好きだけれど、今後は『極夜行』が彼の最高傑作と語られるのかも知れない。

 音楽書も大量に読んだ1年、『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』が圧巻だった。あくまでモンク寄りの立場から書かれたストーリーだとは思うが。

 繰り返し読んだのは、『マルセイユの都市空間 ー幻想と実存のあいだでー』ピーター・エイムズ・カーリン『ブルース・スプリングスティーン アメリカの夢と失望を照らし続けた男』。前者は「マルセイユを知り尽くす」という今年のテーマに沿って。後者は Springsteen On Broadway のおさらいも兼ねて。

 特別賞は、John Collins "Highlife Time 3" とケニアのプロダクションが出版した "Shades of Benga"(どちらもまだ読み終えていない)。ガーナの John Collins は "Highlife Time"、"Musicmakers of West Africa"、"Highlife Giants: West African Dance Band Pioneers" と3冊立て続けに読み終えた直後に "Highlife Time 3" が出た。これは彼の研究の集大成的な大著。よりでっかい "Shades of Benga" は以前ここで紹介した通り。

(『雪の階』は図書館で借りたので写真はなし。音楽やアフリカ関連の資料を中心に蔵書が4000冊?を超えて自宅に置き場所がなくなったこともあり、今年は図書館の利用が一気に増えた。)


by desertjazz | 2018-12-31 23:01 | 本 - Readings