カテゴリ:音 - Africa( 245 )

d0010432_13104570.jpg


 アインデ・バカレ Ayinde Bakare やトゥンデ・ナイチンゲール Tunde Nightingale といったヴィンテージなジュジュ・サウンドが好きなので、先日エル・スールがナイジェリアから直輸入した、ジュジュを代表するミュージシャンのひとり、J. O. アラバの Evergreen Musical Company 盤 "Works of J. O. Araba & His Randy Blues 1922-1989" 2CD を買って聴いている。

 Christopher Alan Waterman の "Juju: A Social History and Enthnography of an African Popular Music" (Chicago Press, 1990) などによると、J. O. Araba こと Julius Oredola Araba は 1922年5月24日、ラゴスの生まれ。彼がギターを弾き始めたのは 1930年。Tunde King などの第二次世界大戦前のジュジュに影響を受けた後、Joseph Olanrewaju Oyesiku とともに、Toy Motion(Toy はマリファナを意味する)という新しいジュジュのスタイルを開拓。1950年代から60年代初頭を中心に活躍した。ちなみに J. O. アラバはボクシングのタイトル・ホルダーでもあったと書かれている。

 他のジュジュ・スタイルが「シングル・ピッチ・メロディック・パターン」だったのに対して、Toy Motion は「ハーモニック・メロディック・パターン」。これはパームワイン・ミュージックからの引用だという。

 彼のグループ The Rhythm Blues は4人編成で、1955年の結成。楽器構成は、ギター、アギディボ、サイドドラム、マラカス。どの曲も、エレキギターを除く3人のパーカッションのコンビネーションや、ヴォーカル&コーラスのやり取りを聴いていると楽しい。大型親指ピアノの低音楽器アギディボの奏者はなんと Fatai Rolling Dallor だった! 彼らは60年代初頭の幾つかの重要イベントで演奏し、その地位を確たるものにしたようだ。その後は目立った活動は減ったようで、アラバは 1989年9月15日に亡くなっている。

 J. O. アラバの単独アルバムはあっただろうかと思って棚を探ってみたが見つからない。ネットで検索しても出てこないので、制作されたことはないのかも知れない。レコードとしては、Philips の10インチ盤 "Catchy Ryhthm from Nigeria Vol.1"、同 "Vol.2"、Rounder 盤 "Juju Roots 1930s-1950s" に1曲ずつ収録されている。また彼の録音を収録したコンピレーションCDも数タイトル出ている(例えば "Awon Ojise Olorun: Popular Music in Yorubaland 1931-1952" など)。

d0010432_13163531.jpg

 Evergreen 盤としては "Evergreen Hits of 20 Music Masters of Our Country Nigeria" (HRS 005) に "K'elegbe Me Gbe" を収録。ここには彼に関して簡単な解説も付いていた。また "20 Evergreen Hits of 3 Music Masters of our Country - Nigeria" (HRS Vol.16) にも4曲収められている。

d0010432_13163721.jpg




 以下、余談を少々。

 フェラ・クティが J. O. アラバの曲をカバーしているというのは興味深い事実かも知れない。フェラはファーストLP "Fela Ransome Kuti and His Koola Lobitos" (1968?) で J. O. アラバの "Araba's Delight" を演奏している。アラバはフェラのフェイバリットだったのだろうか?

d0010432_13171539.jpg

 フェラ・クティの録音は全曲自作ナンバーだという印象があるかも知れないが、彼の未復刻音源の中には、あるジャズのスタンダード・ナンバーをカバーしたものがある。しかし、フェラのトランペットは相当に下手で、これは復刻するまでの価値はないかも?(手元にその録音はあるが、それを勝手に公開することもできないし。)

(さらに余談になるが、晩年のフェラのライブを観た方々が「フェラの最高傑作」と断言されながらも、公式録音の残されなかった幻の曲 "C. S. A. A. (Condom Stalawagy and Scatter)" の録音、正確には隠し撮りされた?59分間のビデオ、も今年ついに入手した。)

 このフェラのファーストLPは自分にとってとても思い出深い1枚だ。フェラの初期に関してまだ情報の乏しかった1990年代末に、世界的にほぼ全く知られていなかったこのレコードの存在を突き止め、それがひとつのきっかけとなって 60年代のフェラのリイシューが本格化したからだ(今流通しているリイシュー盤も全てその時に「再発見」した音源のコピーが使われていると思われる)。そして、ヒュー・トレイシー音源のリイシューにいち早く気がつき日本に紹介したのも1999年だった。

 私がアフリカ音楽についてネットで書くようになってから来年に20年になる。その間に紹介したもののうちでは、フェラのファーストとヒュー・トレイシーのリイシューが、最も世間に役に立っただろうと自己評価している。逆の言い方をすると、この20年間、それらを超える発見も活動もできていないということ。それが自分ではとても物足りない。そろそろまた何か驚くような「発見」をしたいと願うものの、ここ10年ほどはさほど音楽を聴かなくなっているので、残念ながら、なおさらそれが難しくなっている。

d0010432_13233497.jpg
このレコードは勿論復刻盤。バーゲンプライスだったので、記念?に買ってしまった。








by desertjazz | 2018-12-16 12:00 | 音 - Africa

d0010432_14200046.jpg



 何と、カラバル(カラバリ)音楽のコンピレーションがリリースされていたとは! 完全に見落としていたこのアルバムを慌てて取り寄せて、繰り返し聴いている。

 2005年春に旅したナイジェリアでは色々な体験をした。フェミ・クティを観に行ったニューシュライン New Shrine ではフェラ・クティの長女に面会してご挨拶。レゴスにある書店兼レコード店 Jazzhole では、Bobby Benson "Taxi Driver" の世界初CD化した Evergreeen Music 盤を発見し、また Fatai Rolliong Dollar の復帰を知って彼のそのリバイバル・アルバムも入手。しかし、それらを遥かに超える驚きは「カラバリ音楽」との出会いだった。

 ナイジェリア南東部も音楽の盛んな土地で、イボ・ハイライフ Igbo Highlife(代表格は Chief Stephen Osita Osadebe、Oliver De Coque、Sir Warrior、Celestine Ukwu、Nico Mbarga、Oriental Brothers など)やイジョ・ハイライフ Ijaw Highlife が特に有名だ。そして中心都市ポートハーコートから周辺の地方へ目を向けると、カラバル Calabar などの(ヨルバやハウサに比べると少数派民族の)人々による音楽の存在に気がつく。例えばデルタ地帯へと進んで行った際に、移動の途中に見つけたカセットショップに立ち寄って King Robert Ebizimor や Chief Barrister S. Smooth といったローカル・ミュージックのスターたちを知ったのだった。

d0010432_16221092.jpeg

d0010432_16234281.jpeg


 ナイジェリア南東部のハイライフ・ミュージックは、ローカルなものほどサウンドのストリームが(単調というのではなく)スムーズだという印象を持っている。Pereama Freetown and His Youth Stars Band of Nigeia などは個人的にかなりお気に入りで、いくつかのアルバムは名盤だと思っている。

 カラバルの住むデルタ地帯をさらに深部へと進み、小さな町や村で発見したのがカラバリ(彼の地では Kalabari と呼ばれていた)の音楽だった。チープでドライな響きのエレキギター、シンバル程度のドラムが刻むリズム、それにコーラスだけという実にシンプル、と言うよりスカスカな音楽。それがとてもプリミティブで呪術的に聴こえ、文字どおり圧倒されてしまった。そんなカラバリのカセットを路上の店などで探しまくって少数ならが入手。驚きはそれで終わらない。デルタ末端に近い川沿いの村でのこと。バラック小屋のような酒場を訪ねると、DJがそうしたカセットをプレイし、それに合わせて人々が踊っていたのだ。

d0010432_16242875.jpeg

d0010432_16243053.jpeg


 入手したカセットの中では Opuso Cultural Society of Ke-Kalabari やシェブロンの原油支配に抗議する Ebenezer Cultural Band of Kalabari が特に凄かった! それらは CD-R に焼いて今でも時々聴いている。こんな強烈な音楽、もっと聴きたい。ポートハーコートにはロンドンなどから国際便が飛んでいるので、もう一度訪ねてみたいと思っているのだが、今のところ実現できそうにない。

d0010432_14200378.jpg


 そんなカラバル(カラバリ)の音楽なのだが、もっと都会的な録音を集めたアルバムが2年前にリリースされていたことを今頃知った。CD も出ていたが、オーダーしたのは LP2枚組の方。

"Calabar-Itu Road: Groovy Sounds From South Eastern Nigeria (1972-1982)" (Comb & Razor, 2016)

 残念ながら、私が探し求めているカラバリ・サウンドからはスタイル的に遠く、ハイライフやファンクなど都会的なトラックが中心である。ラゴスなどからの影響を受けたサウンドの多様性が感じられる(フェラっぽいナンバーも収録されている)ものの、全15曲中にこれと言って極め付きのものは見当たらない。しかし、1曲目 Isadico Dance Band of Nigeria の "Mbre Isong" の冒頭にちょっとだけカラバリ流の土着的なコーラスが感じられる。だとすると、もしかすれば本格的なカラバリ・サウンドをリイシューされる可能性もあるということか? 凄惨なビアフラ戦争からそれほど時間が経過していない1972年という時点で、ローカルのポピュラー音楽の録音がなされていたことを知ったのも収穫になった。

  Record Store Day 用にプレスされた?この2枚組(2000セット限定らしいが、完売するはずないだろう)には、ナイジェリア南東部リバー州に関するガイドブック(全44ページ)が付属していて、主要ミュージシャンについても紹介されている。これを拾い読みしていると、またまたポートハーコートに飛んで行きたくなってしまうのだった。



 ナイジェリア南東部には(ハイライフ系に分類されることもある)「ナンブラ北部の音楽でめっちゃ地元密着型」の Egwu Ekpili という音楽もある。今年の7月に名古屋のNさんが多々ご教示くださったので、ここに引用して整理しておこう(Nさんについてのプライベートな情報部分は割愛)。

・きっかけは高橋健太郎氏がツイッターで Christopher Asah and His Seven Seven Group of Enugwu Ugwu Nijoka "Enunka" を取り上げたこと。ナイヤビンギに似ていると感想を綴られていたが、私はこれを聴いてカラバリとの類似性を感じた。

・「この Christopher Asah もそうだけど、(彼はこっちではセブンセブンって言えば誰でも(この Egwu Ekpili 聞いてる人達には)わかる感じです)イボ語で Egwu(エグゥ)=音楽、 Ekpili(エピリ) はこういう楽器の名前。 これはナイジェリアでもわかっている分だと最古の楽器と言われてるらしい。」

d0010432_16190303.jpg


・「もともとはこの Ekpili を使った音楽が Egwu Ekpili と言われていたのが、今ではこういったタイプの音楽全般を指して Egwu Ekpili と呼ばれています。先程アップした写真の Ekpili はかなり古いタイプで、太鼓的に叩いて使うのではなく中に手を入れて揺らして音を発生させる感じらしい。今使われてる Ekpili はちょっと写真見つけられなかったけど、手に持つ感じでシャカシャカ音というかそんな感じの音を出すものらしいです。」

・「(私Dがシェアした)CD屋のウェブサイトにも Egwu Ekpili のミュージシャン達がずらっと並んでいましたが、この音楽はかなり局地的に聞かれてる感じで、場所はアナンブラ州北部のオマンバラ川流域が中心。だから、アナンブラ人でも南部の人は聞かないし(好きな人はいるかも)。他州の人、例えばイモとかは文化も違うからモロッコ?誰、みたいな感じになると思う。」

d0010432_16263740.jpeg
(Morocco のカセットも持っていた。)


・「代表的なミュージシャン Chief Ozoemena Nsugbe(オゼメナ・ンスベ)、Morocco Maduka(モロッコ・マドゥカ)、Christopher Asah(クリストファー・アサー aka セブンセブン)、Chief Onwuzuluike Udemgba(オヌズルイケ・ウデンバ)などなど。歌ってる内容は、イボ伝統の大切さとかもあるけど、実は、地域の名士や金持ちは歌手にお金を払って自分の為に歌を作ってもらう文化があるので、人の名前のタイトルだとだいたいそういう歌であの人は偉大とかあれしたこれしたとかそんな感じ。」

・「アナンブラ州でもオマンバラ川流域と書いたけど、だいたいここら辺です。左に太いリバーナイジャが見えるけどその右側の川流域。オマンバラ川が変化してアナンブラという州の名前になりました。」(地図参照)

d0010432_15415594.png


・「あと、今ちょっと残念だなと思ってるのは、Ekpili 音楽の後継者がなかなかいなくて、存命で元気なのがモロッコくらい、若い人はどうしても音楽やるなら今の音楽(その方が稼げる)という方向になってしまう。郷土音楽の存続という課題があると思う。」


 Egwu Ekpili の CD はこのサイトを通じて購入可能のようだ。Christopher Asah / His Seven Seven もリストにある。試しに買って見ようかとも思うのだが、現在はネットで聴ける音源もそれなりにあるようだ。




 ナイジェリア音楽も探求し始めると全くキリがない、、、。







by desertjazz | 2018-12-08 14:00 | 音 - Africa

Coumba Gawlo "Terrou Warr"

 セネガルの女王様、クンバ・ガウロ Coumba Gawlo Seck が 12/7 に新作 "Terrou Warr" をリリース予定。30周年アルバム?のこのアイテム、通常の CD 盤の他に USB フォーマットでも発売されるようだ。何れにしても、セネガル盤なので、ユッスー・ンドゥールと同様入手しにくいのが困る。


d0010432_09420288.jpg






by desertjazz | 2018-12-01 23:00 | 音 - Africa

d0010432_17575989.jpg


 「鞠の中村綾ちゃん」(と自分が勝手に呼んでいる)こと、西アフリカはマリ出身のシンガー、アヤ・ナカムラの第2作目が、本日パリから到着。タイトルはそのものズバリ "NAKAMURA"。しかも漢字でも「中村」と添えている。アヤちゃん、よっぽど日本びいきなんだな。

 昨年リリースされたファースト・アルバム "Journal Intime" は 2017年のベスト・アルバム第2位に選んだほどのお気に入り。なので、このセカンドもリリース直後から Spotify で聴き続けていたのだが、やっと CD でも楽しむことができた。


 ベスト・アルバムのコメントでは「声が特別良かったり、抜群に上手かったりするわけでもないのだが、」とちょっと語弊のある書き方をしてしまったが、その声が彼女の最大の魅力だと思う。軽く歌っているようでも、すっと前に出てくる伸びやかさがいいんだよな。まるでベンツに乗っている時のような「余力」を感じさせる歌声。きっと彼女の立派なボディが、その素晴らしい歌声を産む源になっているんだろう。

 さてセカンド・アルバム "NAKAMURA"。デビュー曲 "Brisé"、Fally Ipupa との "Bad Boy" 、MHD との "Problèmes" に匹敵するような飛び切りの名曲は見当たらないものの、いずれも佳曲揃い。例えば冒頭 "La Dot" や Niska と共演した "Sucette" の小気味良いフレージングからして「アヤ印」の楽しさ。PV を繰り返し観て耳に擦り込まれたシングル曲 "Copines" の軽妙なポップさも万人受けして当然。ダンサブルなトラックに身体が揺さぶられる一方で、切々とした彼女の声に包み込まれた女性らしさや独特な哀感には心が揺れる。全13曲で 38分というコンパクトさもいいな。

 アヤちゃん、この新作を引っさげて来年3月末からフランス・ツアーをスタートする。タイミングが合えば、3/30 のマルセイユ(Espace Julien)か 3/31 のパリ(L'Olympia)あたりを観に行きたいと思っていたのだが、、、各公演とも瞬く間にチケット完売! パリ公演がたったの2時間で捌けたことは、ちょっとしたニュースになっていた。ニューアルバムの曲が軒並みフランスでチャートインしたことも驚きと共に話題に。どうやら今、フランスでもアフリカ諸国でも「アヤ・ナカムラ現象」とでも呼びうることが起こっているようだ。

 2年前には日本ではほとんど誰も知らない存在だったのに、これからは日本でもグングン人気が高まりそうな予感。だけれどこれじゃ来日を期待するどころか、ヨーロッパに行ってもライブを観られそうにない。うーん、でもやっぱりアヤちゃんのステージが観たいぞ!



 (補足)

 「アヤ・ナカムラ」という名前の由来をご存じない方のために。

 アヤ・ナカムラは、アメリカNBCで放送されたテレビドラマシリーズ『ヒーローズ HEROES』の登場人物の一人、中村広(ナカムラ ヒロ)のファンで、そこから名前を取ったそう。そして、「アヤ」という名前は本名だそうです。

d0010432_20412398.jpeg







by desertjazz | 2018-11-30 18:00 | 音 - Africa

 Youssou N'Dour & Le Super Etoile de Dakar のニューアルバム "Respect" が 11/28 にリリース!


d0010432_10192066.jpg


(追記1)11/30 リリースに延期されました。

(追記2)今日アップされたユッスーの最新ビデオクリップを観る限り、新作 "Respect" には、今年4月25日に突然亡くなった Super Etoile de Dakar のベース/キーボード奏者 Habib Faye を悼む曲が収録されているようだ。(12/2 記)







by desertjazz | 2018-11-24 10:00 | 音 - Africa

Retirement of Salif Keita ?

 サリフ・ケイタ Salif Keita が音楽界からの引退を表明 !?


 10月にリリースした “Un Autre Blanc” がサリフ・ケイタのラスト・アルバムになるようだ(CD発売は11月下旬の予定)。Another White というタイトルに象徴されるのはアルビノの権利保護というテーマ。サリフの声がとても良いなど、充実した内容なので、個人的には今年のベスト・アルバム候補に挙げていたところだった。


d0010432_16421379.jpg






by desertjazz | 2018-11-19 15:00 | 音 - Africa

d0010432_18555522.jpg

 ここ最近聴いているのは "New Cool Collective Big Band Featuring Thierno Koité" (Dox Records, 2017)。Youssou N'Dour / Etoile de Dakar / Orchestra Baobab 関連の作品は全て入手したいと思って集めているが、このアルバムの存在はつい先日まで見逃していた。かつてユッスーの Super Etoile de Dakar に在籍し、オーケストラ・バオバブ Orchestra Baobab での活動も続けるサックス・プレイヤーのチエルノ・コイテ Thierno Koité が、オランダのビッグ・バンドと共演していたとは。

 New Cool Collective はオランダを拠点とする19人編成のジャズ・バンド。彼らが2012年にセネガルのダカールとサンルイでコンサート出演した際、バオバブのステージを観て、そこでチエルノと出会ったことが、このレコーディングに結びついたそうだ。

 この New Cool Collective はアンサンブルを中心としたポップなジャズ・バンドといった印象で(曲によってはメイナード・ファーガソンあたりに近い)、このアルバムでもチエルノのソロを全面展開している訳ではない。しかし、冒頭のチエルノ作曲(イドリッサ・ディオップ Idrissa Diop との共作)"Myster Tier" は、彼らしいンバラとアフロ・キューバンのミックスがビッグ・バンドのスタイルで再演されている。3曲目 "Moussa Caravelle (Tribute to Emilien Antile)" もチエルノの筆によるポップなナンバー。4曲目 "Padee" は African Jazz Pinoneers の南ア・ジャズを連想させる。New Cool Collective とチエルノとの共作曲も4つあって、中でも "Yassa" の高揚感溢れるホーン・アンサンブルは痛快だ。

 New Cool Collective とチエルノはライブ共演も果たしており、そのシングルがオランダで500枚限定でプレスされている(現在オーダー中で、到着待ち)。

 チエルノ・コイテはバオバブのキーパーソンとして活動するかたわら、ソロ・アルバムも2枚発表している。

・Thierno Koite "Teranga" (JFC Music, 2004)
Thierno Koite "Ubbite" (JFC Music, 2005)

d0010432_18555830.jpg

 いずれもアフロ・キューバン/サルサを中心としたアルバムなのだが、幾分凡庸な仕上がり。チエルノの経歴としてこれらより遥かに重要なのはル・サヘル Le Sahel の方だろう。

 ル・サヘルは、1972年にダカールで開業したナイトクラブであり、そこのハウス・バンドとして1974年に誕生したバンドの名前でもある。中心メンバーは、リーダーの Cheikh Tidiane Tall(ギター、オルガン)、Idy Diop(ヴォーカル)、そしてチエルノ(サックス、フルート)。他に Seydina Ihsa Wade(ギター)、Papa Djiby Ba(ヴォーカル、ギィロ)など、セネガル音楽に詳しい方ならご存知だろう名前も。

 彼らは短い活動期間の間に1枚だけレコードを作っている。

・Le Sahel "Bamba" (Musiclub, 1975)

 このアルバム、サルサ/アフロ・キューバンをベースとしながらも、そこにウォロフのリズム、さらにはロックやソウルなどのエッセンスを混ぜ込み、ウォロフ語でも歌うことで、従来のラテン・カバーから抜け出したものになっている。セネガルの独自色強いほとんど最初の作品であり、セネガリーズ・ポップ史上の大名盤、最重要作のひとつだと、個人的には長年考えている(この後触れるル・サヘルのリユニオン作の解説を読み直したら「("Bamba" の)タイトル・トラックは初めて録音されたンバラの曲」と書かれていることに納得)。なので、もし自分が自由にアフリカ音楽をリイシューできるなら、このアルバムを最初に出すだろう(ダカールで買ったボロボロのジャケットのレコードしか持っていないことでもあるし、、、。ちなみに現時点のマーケット・プライスは100ドル前後。全曲解説書こうかと思ったが、まずは聴いてみてください。ネットで検索すれば簡単に聴けます)。

 ル・サヘルはそれだけ重要なバンドながら、恐らく多くの人々に知られないままだった。そんな彼らが再結成し、2015年にアルバムまでリリースした時にはさすがに驚いた。

・Le Sahel "La Légende de Dakar" (Celluloid, 2015) 

このアルバム、1975年のファーストで取り上げた Larry Harlow の "Caridad" を再録音し、New Cool Collective と共演した "Master Tier" の元ヴァージョンも楽しめる。

d0010432_18560144.jpg

 こうした録音を聴いているうちに、久しぶりにチェルノたちに会いたくなって、オーケストラ・バオバブのライブ日程を調べてみたら、1本だけ、来年5月5日にパリの Philharmonie de Paris での公演が予定されていた。しかし予定メンバーのリストの中にはなぜかチエルノの名前はなし。

 Africando に行ったメドゥーン・ジャロ Medoune Diallo は仕方ないとしても、バオバブのマジカルなリズムの核だったギタリスト2人、バルテレミ・アティッソ Bartélemy Attisso とベンジェルーン Latfi Benjeloun が前作 "Tribute to Ndiouga Dieng"(2017) には不参加。このアルバムは、コラの導入もあって、バオバブらしさがかなり削がれた不本意な作品になってしまった印象が強い。タイトル通り、シンガーのンディウガ・ディエンが世を去り、残念なことだけれど、再結成バオバブの最盛期も過ぎてしまったのだろう。しかし、"Tribute to Ndiouga Dieng" のプロデューサーとして名を連ねたチエルノまで不参加のバオバブのライブって、どうなのだろう? そんな思いにかられながらも、やっぱり彼らのライブをまた観に行きたくなっている。会場も素晴らしく(一昨年にユッスーを観た、クラシック用のコンサート・ホール)、半年以上先のコンサートなのに良席はすでに完売。オーケストラ・バオバブの人気はまだまだ根強いようだ。






by desertjazz | 2018-11-05 17:00 | 音 - Africa

 マイケル・ヴィール Michael E. Veal が新作 "Michael Veal & Aqua Ife : Volume 2" を近日リリースすると発表。"Volume One" がリリースされたのが 2011年だから、7年ぶりとなる。それで思い出して、彼の幻のファースト・アルバム "Michael Veal + Aqua Ife / Afro-Kirlian Eclipse" を久しぶりに聴いてみた。やっぱりこのアルバムは凄いね!

d0010432_21153764.jpg


 イエール大学の音楽学者であるマイケル・ヴィールのことはどれだけ知られているのだろう。まず彼はフェラ・クティ研究の世界的権威の一人。"Fela: The Life and Times of an African Musical Icon" (1999) はフェラに関する文献の中で最高の1冊の一つなので、一読する価値はあるだろう。ただし、辞書にも載っていない用語(造語?)も多用されていて、かなり難解。

 フェラ・クティ研究の第一人者でありアフロビートに造詣が深いということで、トニー・アレンの自伝本 "Tony Allen: An Autobiography of the Master Drummer of Afrobeat" (2013) の共著者でもある(Introduction を書いている)。この本、ムチャクチャ面白いので、フェラのファンなら是非ご一読を!

d0010432_22201675.jpg

 驚かされたのは、"DUB" (2007) を出版した時。彼がジャマイカ音楽にも詳しく、こんな大著を著わすとは考えていなかった。この本、『DUB論』(2010)と題して邦訳もされましたね。

d0010432_22205728.jpg

 そのマイケル・ヴィールのもう一つの顔はミュージシャン。自身のバンド Michael Veal + Aqua Ife ではベースを演奏している。

 10数年前に完成しながらも発売に至らなかった "Afro-Kirlian Eclipse" なのだが、久々聴き直して改めて唸ってしまった。1曲目 "Sunship"、2曲目 "Super Nova"(Wayne Shorter のカバー)はアフロビートとビッグバンド・ジャズのミックスといった様相。ボトムの重いサウンドに震えます。そこにエレクトリックな要素やノイズなどが絡む。個人的には最高のアフロビート・ジャズだと思っている。#もしこの作品について記憶している方いるとすれば、菊地成孔さんとの対談がその理由だろう。菊池さん曰く「これすごい。素晴らしい。」(『聴き飽きない人々 〈ロックとフォークのない20世紀〉 対談集完全版』2007年、P.27)。そうでしょ! 菊池さんにお聴かせしたのは、私が一番好きな "Super Nova"。これを聴いて連想するのは菊地雅章 "Susto" 収録の "Circle/Line"。 強烈なループ/グルーヴ感って、両者に共通していると思う。だから、DCPLG で "Circle/Line" をカバーしている菊地さんが反応するのは当然でしょうね。

(※ Disk Union でも取り上げられた。https://diskunion.net/latin/ct/news/article/1/22766

d0010432_22241771.jpg


 さて、マイケルの新作 "Volume 2"、彼からの私信によると、"Super Nova" も収録されているとのこと。彼の最高作がようやく正式リリースされる! それはどのテイクになるのだろう? "Afro-Kirlian Eclipse" のマスターテイクでも構わないのだが、今改めて聴くと演奏にもミックスにもブラッシュアップする余地が大きい。ライブでの演奏も重ねてきているので、きっと完全な新録になることだろう。

 新作を心待ちにしながら、"Michael Veal & Aqua Ife : Volume One" や彼がソプラノ・サックスを吹いている異色作 "Michael Veal's Armillary Sphere / Anyscape" (Rec. 2008) を聴くことにしよう。

d0010432_22210226.jpg






by desertjazz | 2018-09-24 22:00 | 音 - Africa

Youssou N'Dour - Official Videos

 先日入手した Youssou N'Dour の最新ビデオ "Le Grand Bal 2017" を繰り返し観て、当日のことを思い出しながら楽しんでいる。

 ところで、彼の映像作品はどれだけリリースされているのだろう。そう思って、手元にあるアイテムを並べてみたら、オフィシャルものだけでも40本ほどあった。以下、軽くご紹介。


(1)VHS テープ

 Youssou N'Dour のプロダクション Jololi からリリースされたものなど。大半が PAL / SECAM フォーマットなので観ることができない(日本の NTSC とは異なる方式)。DVD へのコピーに出すと高いし、かと言って捨てることもできないでいる。セネガルでリリースされたビデオはまだまだあるはずだが、全貌を把握することは不可能。自分でもまだ他に持っていたはずなのだが、もう観ないので物入れの奥にしまったか、あるいは処分してしまったか? 同時期(80年代〜90年代)には Peter Gabriel との作品が LD 等のフォーマットでも出ている。(これらも奥にしまったままなので、面倒なので今回は引っ張り出さず。今回は取り出さず。興味のある方は、こちらのディスコグラフィーをどうぞ。)ビデオのリリース履歴から察するに、グランバルが始まったのは1999年? このころは、パリの他に、ニューヨーク、アトランタ、ワシントンなどでも開催されていた。

d0010432_00454466.jpg


(2)DVD - Le Grand Bal / Bercy

 パリ Le Grand Bal の DVD。

d0010432_00454027.jpg


(3)Live DVD

 Le Grand Bal 以外のライブ盤。

d0010432_00453640.jpg


(4)Others

 Jololi からリリースされたアイテムなど。右下は、CD-ROM によるマルチメディア(日本版)。長年のファンならば持っているはず。

d0010432_00453200.jpg


(5)Festivals, etc.

 Youssou N'Dour 単独作以外のアイテム。フェスティバルに出演した記録など。この類は他にもまだまだあったはず。

d0010432_00452752.jpg


(6)映画関連の DVD

 上の2本は Youssou を主役に据えたドキュメンタリーのサントラ。左下は Youssou がテーマ曲を提供したアニメーション映画。右下は Youssou が出演 (!) した映画。

d0010432_00444140.jpg



 まだまだありそうなのだが、棚や保存箱に並んでいるものだけ取り出してみた。きちんと整理してディスコゴラフィーをアップデイトしたい気持ちもある。しかし、オフィシャル以外のものも含めて、今はネットを通じて観られるものがとても多く、こうした資料を整理することにどこまで意味があるのかという疑問も抱く。







by desertjazz | 2018-05-28 00:00 | 音 - Africa

d0010432_11312575.jpg


前回の記事の続き)

 昨年11月にパリで開催されたグランバル Le Grand Bal 2017、4年前の 2013年の時も CD が3タイトル( "Vol.1, 2, 3" )リリースされた。だけれど、そのビデオはいくら探しても見つからない。パリのシャトールージュの店で尋ねても「ないよ」という答え。(これは「作られていない」という意味だったのか?、それとも「売り切れた」という意味だったのか? 過去グランバルは毎回映像版も発表されてきたので、前回 2013年にも作られたのではないかと今でも考えている。)しかし今回は CD版と合わせて映像版もリリースされた。嬉しい! それが驚くことに、何と USB フォーマットで!

 この USB、トータル 11.3Gb のサイズで、3つのファイルに分かれている。

(1) Bercy 2017: グランバルの Youssou パートをほぼ完全収録した映像。3時間38分24秒
(2) La Suite de Bercy 2017: スタジオ・セッション。38分16秒
(3) Son Bercy 2017: Bercy 2017 と La Suite de Bercy 2017 の全音源。CD、映像版に未収録のものも含めて全29トラック。



(1) Le Grand Bal 2017 (Bercy 2017)

 Le Grand Bal 2017 を改めて観直すと、会場で感じたことを再確認したり、新たな発見があったりする。サウンドがクリアで、映像もディテールまで記録されているので、会場で味わった雰囲気とはまた別の楽しみ方ができる。

・Youssou は最初から最後までほぼ踊りっぱなし。すごい体力だ。

・Youssou と Babacar が交わすインタープレイが最高! Babacar はサバールを激しく打ち叩きながらパーカッション・アンサンブルをコントロールし、マイク持てば Youssou と対等のアジテーション。彼はグランバルにおけるもう一人の主役。

・2013年と2017年とで、演奏曲目の重複がほとんどない。今回は "Set" も "Immigres" も "Baykatt" も出さずに約4時間。凄すぎる。

・"Medina" と "Senegal Rekk" の2曲が白眉。Youssou は最高だし、バンドも昇天ものの演奏。

・Youssou のヴォーカルは勿論のこと、Super Etoile de Dakar の繰り出すサウンドが凄まじい。自分は、1999年にダカールでライブを観て以降、Youssou の声以上に、Super Etoile のバンド・サウンドに惚れ込んでいるのかもしれない。

 等々、新たな感想を多々抱きながらも、ライブの内容そのものに関しては、基本的には実際に観た際のリポートに加えることはほとんどない。以下、補足コメントを添えてご紹介。


 * ( ) は running time


(00:00:00) Opening

Le Grand Bal のオープニングでセネガルからの出発〜会場到着のメイキングビデオが映し出されるのは、毎回恒例のこと。22時丁度に到着の様子を伝えるビデオ(もちろん事前収録したもの)がスクリーンに流れた。と言うことは、今年も、、、?

(00:01:08) (1). Intro - El Féno

毎回スーパースターに似つかわしくない登場の仕方で楽しませてくれる Le Grand Bal。今回も客席で大爆笑! それにしても Youssou に向けられた数百数千のスマートフォンの光が尋常じゃない! この曲に限らず、パーカッション4人を写すカットが右方向視線上向きで、これがとても効果的だ。

(00:10:54) (2). Djino

緊張感漲る名曲。テンポアップした後半には毎度興奮させられる。Jimmy Mbaye のギター・ソロがいいなぁ! Jimmy ステージ前半では恍惚の表情を随所に見せて、ライブを楽しんでいる様子。

(00:17:29) (3). Nanette Ada

Assane Thiam(タマ)、Babacar Faye(サバール)、Youssou、Habib Faye(ベース)の4人がステージ中央に並んでお揃いのステップ。この4人こそが Super Etoile de Dakar の最重要なキーパーソンということなのだろう。彼らのダンスステップをワクワクしながら見つめていた。しかし、Habib は今年急逝。これが彼の姿を観る最後になったとは今でも信じられない。R.I.P.

(*以下のコメントは後日追記予定)

(00:24:20) (4). Leteuma
(00:34:47) (5). Teyeko

(00:41:36) Video-1

(00:43:53) (6). Serigne Fallou
(00:49:52) (7). Djamil - Guest: Titi (Ndéye Fatou Tine)
(01:00:15) (8). Serigne Mbacké Sokhna Lo

(01:08:25) Video-2

(01:11:25) (9). Xaliss
(01:19:42) (10). Be Careful
(01:26:22) (11). Senegal Rekk
(01:44:13) (12). Song Daan - Guest: Akon
(01:50:58) (13). Yonou Dégue

 [衣装替え]

(02:00:26) (14). Gorgui (Sama Doom)

Youssou はプロンプターの歌詞を食い入るように見つめながら歌っている。彼がメガネをかけてのには、こうした理由もあるのだろうか。

(02:07:10) Video-3
(02:08:47) Video-4

(02:10:20) (15). Mbëguel Is All - Guest: Sidiki Diabate
(02:19:59) (16). Medina
(02:32:25) (17). Ban La - Guest: Fally Ipupa

コンゴのスーパースターを迎えて、セネガル vs コンゴという演出。まるでウエストサイド・ストーリーのダンスシーン。(02:34:30) にはまるで手品のような瞬間が。何度見ても何が起きたのか分からない。

(02:40:11) (18). Na Woor - Guest: Pape Diouf
(02:52:01) (19). Awa Gueye - Guest: Viviana Chidid

2000年にダカールのクラブ・チョサンで Viviane のライブを観た時には、ペナペナの薄っぺらい声だと思ったが、今は力強い声に変わっている。その変化は彼女の CD を聴いても感じられたこと。

 [衣装替え]

(03:05:28) (20). I Love You
(03:11:50) (21). My Hope Is In You - 7 Seconds - New Africa

(03:17:20) Speech - (22). Birima

長老たちによるスピーチは、まるで Youssou を讃える大プレイズ会といった様相。

(03:27:51) (23). Yité

この期に及んで Youssou は客席にダイブ寸前。メンバー紹介を終えて彼がステージ袖に消えた瞬間(まだ演奏は続いている)、フロアの観客たちが出口への大移動。「ファティゲー?」との呼びかけに反応する声が段々弱まっていたので、みんな疲れ切っていたのだろう。それでも会場から外に出ると、誰もがたむろって話込んでいるものだから、そこから抜け出すのにひと苦労。電車も地下鉄も動いていないので、このまま朝まで盛り上がり続けたのだろう。


(2) Les Studios de la Seine - Paris (La Suite de Bercy 2017)

(00:00:00) Speech by Youssou N'Dour

(00:00:26) Serigne Modou Bousso
(00:05:39) Africa Remembers
(00:15:30) Daby
(00:20:54) Sama Gamou
(00:27:17) Thioul Anta

(00:33:58) Ending
(00:34:45) Speech by Didier Drogba


Africa Remembers がすごい。後半にサバールが加わることで、"Eyes Open" の時のサウンドからずっとブラッシュアップされている。離れていても Youssou と Babacar のコンビネーションが見事。

Youssou の背後でスマートフォン片手に上機嫌なガイ、誰かと思ったら、コートジボワールのスーパースター、ディディエ・ドログバ Didier Drogba だった!

d0010432_14014945.png


(3) Son Bercy 2017

Le Grand Bal 2017 (Bercy 2017) と Les Studios de la Seine - Paris (La Suite de Bercy 2017) の全てのサウンド・ファイル 29個。CD 未収録の4トラック/映像版未収録の "Bul Nangu" も含む。

d0010432_11312884.jpg








by desertjazz | 2018-05-27 00:00 | 音 - Africa
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31