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カテゴリ:音 - Africa( 260 )

Tunde Nightingale (2)

 トゥンデ・ナイチンゲールはナイジェリアのイバダン生まれのジュジュ・シンガー/ギタリスト。ジュジュ・ギタリストの系譜を辿ると、Tunde King 〜 Ayinde Bakare 〜 Tunde Nightingale 〜 Fatai Rolling Dollar 〜 Ebenezer Obey 〜 King Sunny Ade といった具合になるのだろうか。Tunde King がジュジュのオリジネーター、Ayinde Bakare はエレクトリック化、そして Obey とAde がモダン化の役割を果たしたのに対して、オワンベ Owanbe サウンドを確立した Nightingale は他のビッグネームたちに較べると橋渡し役的なイメージももってしまう。実際どう評価されているのだろう、欧米や日本、少なくとも日本で話題に上ることはほぼ皆無かと思うのだが、個人的にはこの朴訥とした味わいあるサウンドが気に入っている。軽く飲みながら聴いていると心地よくなってきて癖になるのだ。そうした意味では、パームワイン・ミュージックと同様に自分にとって欠くことのできない音楽のひとつなのだろう。

 欧米での評価はさておき、ゼロ年代に入っても度々リイシューされるからには、ナイジェリアンにとっては大切なヴィンテージ・ミュージックなのだろう。昨朝、LPが41枚あるらしいことを書いたが、そんなに出たのかなと常々疑問に思っていた。彼のレコードは熱心に探した訳でもないので、本当のことは分からないままだ。

 70年代を中心に制作されたレコードの音源がどれだけCDリイシューされているのか、ちょっと調べてみた。取りあえず出て来たのは以下のアルバム。

・Thomas Organization 盤(3枚)

1) "Gbogun Gboro!" (JRFM/1)
2) Tunde & Fatai "Juju's Awesome Twosome" (FMTOPCD012)
3) "Tunetunes" (FMTOPCD013)

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・African Songs 盤(1枚)

4) "The Best of Tunde Nightingale 1972-1977" (CDAS 89714)

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・Evergreen Music 盤(6枚)

5) Tunde Nightingale, Ayinde Bakare, J. O. Araba "20 Evergreen Hits of 3 Music Masters of our Country - Nigeria" (HRS VOL 16)
6) "Complete 'Owanbe' Sounds of Tunde Nightingale Volume 1"
7) "Complete 'Owanbe' Sounds of Tunde Nightingale Volume 2"
8) "Complete 'Owanbe' Sounds of Tunde Nightingale Volume 3"
9) "Complete 'Owanbe' Sounds of Tunde Nightingale Volume 4"
10) "Complete 'Owanbe' Sounds of Tunde Nightingale Volume 5"

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 他に数曲のみ収録のコンピレーション盤などいくつかある。単独盤もまだあるようだ。彼のLPが何十枚も存在する確証は得られていないものの、これだけリイシューCDがあるということは、それなりの枚数作られたのだろう。

 そうしたことよりも、録音が(恐らく)70年代に集中しているのにも関わらず、曲によってかなりはっきりした違いが認められることに興味が湧く。一聴雑駁で荒々しい印象の曲からモダン・ジュジュに逆影響を受けたようなものまで多岐にわたる。

 残念ながら、リストアップしたいずれのCDとも、現在では入手困難かと思う。しかし、Evergreen 盤のうちの "Volume 1""Volume 2" はダウンロード販売が始まり、Amazon などで容易に購入できるようになっている。





by desertjazz | 2011-04-14 06:00 | 音 - Africa

Tunde Nightingale (1)

 このブログの解析データを見てみたら、どうやら3〜4月は El Sur 経由でアクセスして下さっている方が多いようだ。もっと音楽のことを書いた方が良いのかなと思い、久し振りに El Sur で入手したCD の紹介。

 トゥンデ・ナイチンゲール Tunde the Western Nightingale (Ernest Olatunde Thomas, 1922-1981) は、40〜70年代頃にナイジェリアで活動したジュジュ・アーティスト。Ebenezer Obey や KIng Sunny Ade の先輩格に当たり、Fatai Rolling Dollar らとは世代が近い。幾何学的でフレームのすっきりした(それでいて複雑なリズム・パターン)パーカッション群、その中でザクザク刻まれるギター、ヒバリのような歌(だから 'Nitingale' と称される)のコンビネーションが結構気に入っていて、彼のレコードは見つけると買うようにしている。

 先日 El Sur のサイトを見ると、ナイチンゲールのCDが4タイトル(全てレゴスの Premier Music 盤?)が取り上げられていた。彼のLPは TYC(など)に41枚あると言われていて、それらの一部がリイシューされたのだろうと考え、オーダーしてみた。

 届いたCDを早速聴いてみると、どうも聴き親しんだトラックが多い。調べて見ると4枚中3枚はオリジナル盤ですでに持っていた。ちょっと残念だったけれど、久し振りにまとめて聴いて、作品ごとと個性も感じられ、結構楽しめた。


 折角なので、オリジナル盤と並べて紹介しておこう。

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[LP] Tunde the Western Nightingale and his Band Vol.1 "The Original 'Owa Nbe' Sound The Man with the Golden Voice" (TYC, TWNL 1)
[CD] Tunde the Western Nightingale and his Band Vol.1 "The Original 'Owa Nbe' Sound The Man with the Golden Voice : Iwa Rere" (TYC/The Music Makers, TWNL 1)


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[LP] Tunde the Western Nightingale and his Band Vol.2 "The Original 'Owa Nbe' Sound The Man with the Golden Voice" (TYC, TYC1-LP)
[CD] Tunde the Western Nightingale and his Band Vol.2"The Original 'Owa Nbe' Sound The Man with the Golden Voice : Tanife Kani Woro" (TYC/The Music Makers, TYC1-LP)

 "Sterns Guide" によると、LP のリリースは1974年。


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[LP] Tunde the Western Nightingale and his Band Vol.3 "The Bird That Sings All Night" (TYC, TYC7-L)
[CD] Tunde Western Nightingale "You Kere You Wowo" (TYC/Premier Music, TYC7L)


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[CD] Tunde Western Nightingale "Na-Poor-A-Poor" (TYC/Premier Music, TYC30-L)

 今回新しく聴けたのはこの1枚のみ。



 4作とも片面20分弱のノンストップ・メドレーのスタイル。全て盤起こしで、きちんと聴き較べていないが、持っているレコードよりは盤質が悪く、ノイズが目立つ一方で線の細い音になっているのが残念(もともとこの程度だったかな?)。

 ひとつだけ問題があり、それは "Vol.1" の音が逆相であること。Lch と Rch とで +/- が逆になっているためどちらかのチャンネルの +/- を反転(例えばスピーカーケーブルを逆さに繋ぐとか)させなければ、まともな音にならない。このままステレオ再生すると音像が左右に分離して気持ち悪く、我慢して聴いてもたいていの人なら頭痛がしてくると思う(私のディスクだけがそうなっている可能性も捨てきれないが)。みなさんどうしているのでしょう?





by desertjazz | 2011-04-13 07:00 | 音 - Africa

◆ Omara "Bombino" Moctar

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 毎日24時間、震災関連の情報を追ってばかりいる訳にもいかないので、そろそろ音楽を聴く時間や読書する時間も取り戻しつつある。



 今日はオマーラ“ボンビーノ”モクタール Omara "Bombino" Moctar の新作CD "Agadez" (Cumbancha CMB-CD-20) がアメリカから届いたので早速聴いてみた。ボンビーノはニジェール北部アガデス出身のシンガー/ギタリスト(1980年生まれ)で、最近注目を集めているデザートブルースのミュージシャンのひとり。ゆる〜いティナリウェン、淡々としたアリ・ファルカ・トゥーレ、ゴリゴリしたロビ・トラオレなどと比較したら割合中庸なスタイル。同じトゥアレグであり、ヴォーカルのなよっとしたところなどは、やはりティナリウェンに一番近いポジションにいるかと思う(実際、彼らのフォロワーらしい)。

 こう書くと全然褒め言葉になっていないが、今年の来日公演は間違いなく盛り上がるだろうと断言する。気楽に楽しめるアフリカン・ポップで、断然ライブ向きのサウンドだ。そして、やっぱり 'Iyat Idounia Ayasahen (Another Life) ' がいい。シンプルなリフ一発のトラックなのだけれど、ライブのラストにこれを持って来て大盛り上がりになることを想像してしまう。

 今日届いた CD は、月末のリリースを前に100枚限定で発売された「CD+Dwonload」版のうちの実際のCDの方なのだけれど、この特別仕様のデジパック自体は、全然特別なものではなかった。もしかしたら関係者用のものを一般向けに先行発売しただけなのかも知れない。



 これで、まだ発売前の "Agadez" が3ヴァージョンも手元に揃ったことになる。それらの違いを簡単に整理しておこう。

(1) 昨年送られて来たラフミックス版

 全9トラック。'Tigrawahi Tikma' が 13分04秒、'Tar Hani' が11分21秒というロング・ヴァージョン。

(2) ダウンロード版

 全13トラック。(1) の9曲に 'Kammou Taliat' を追加。さらにボーナストラックとして 'Mahegagh (What Shall I Do?) 11分29秒、'Adinet (Tuareg People)' 4分02秒、'Tigrawahi Tikma (Live Version)' 13分02秒 と「DigitalBooklet」が加えられている。

(3) CD版

 全10トラック。(2) と同内容。ただしボーナストラックは未収録。



 Omara "Bombino" Moctar について詳しく書いてもいいかと思ったのだけれど、今夏の SUKIYAKI MEETS THE WORLD への出演も決定したので、そろそろあちこちで紹介されるはず。興味のある人にはまずはそちらを読んでいただくとして、自分は重複を避けて次のことに取りかかろう。





 気がつかないうちに、好きなアーティストの新譜がリリースされたり発売予告されたりしていた。

・ Watcha Clan の7作目 "Radio Babel" - 2月11日に発売済み(早速試聴)。
・ Adriana Calcanhotto "O Microbio Do Samba" - 次作はサンバ、4月発売。
・ Kate Bush "Director's Cut" - これは5月。
・ Robbie Robertson "How To Become Clairvoyant" - 発売済み?

 どれも楽しみだ。





 読書の方は2日で1冊ペースまで復帰。今日は村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第2部 予言する鳥編を読み終えたのだけれど、途中であれっ?と思うことがひとつ。一カ所だけ「ねじまき鳥」ではなく「ネジマキドリ」と書かれている(新潮文庫の190ページ)。これって何か意味があるのかな。それとも単なるトリビアなのかな。取りあえず第3部に進もう。





by desertjazz | 2011-03-24 21:30 | 音 - Africa

 ファタイ・ローリング・ダラー Fatayi Rolling Dollar (1928.7.22 - ) の履歴/レコーディング歴を簡単に整理してみた。 (*1)




< J.O.Araba with the Rhythm Blues Band >

 ミュージシャンとしてのデビューは 1953年。最初はアギディボのプレイヤーだった。Queen Mary Orchestra(1953年)、Willie Payne(1954年)との活動を経て、その直後に J.O.Araba, Olaseni Tejuoso (Seni 'Teje' Tejuoso) らと Rhythm Blues Band を結成。(*2) Phillips とは年にSP6枚の契約があり、'Ranka Dede', 'O Gba Oya Ya' などが大ヒットした。(*3)




< Solo >

 金銭トラブルが原因で Rhythm Blues Band は解散。自身のバンドでの活動に移行することになる。(*4) このバンドには Ebenezer Obey も在籍(1958〜64 年。これが彼のプロデビュー。パーカッションを担当し、ギターをファタイに教わる)。68年に引退。

"Great Juju & Sakara Music Vol.2" (Fisher Music JRFM/2)
d0010432_23295062.jpgSisi Jaiyejaiye

(この1トラックのみか? 演奏者のクレジットがないので音で判断するしかないが、他の5トラックは Tunde Nightingale の演奏に聞こえる。)

 Side A に Fatayi Rolling Dollar, Tunde Nightingale などの6曲を収録したLP。

"Tunde & Fatayi : Juju's Awesome Twosome" (Ajofabro Recording/Thomas Organization, USA)
d0010432_2330046.jpgSaworo / Sisi Jaiyejaiye / Won Kere Si Number Wa / Ma Danwo / Agba Dowo Re / She Go Run Away

 Side A に Tunde Nightingale の6曲、Side B に Fatayi Rolling Dollar の6曲を収録したリイシューCD。

"Papa Rise Again" (Ekostar, 2007)

 'Won Bumi', 'Saworo' などがリイシュー収録されている。


 その他、"History of Juju Music" (Fisher Music)、"Highlife Time" (Vampisoul) などのコンピレーションにも収録曲あり。ただし、全て上記盤との重複曲。

 約10年間バンドを率いていたのだから、もっと録音が残っていてもおかしくなさそうなのだが、全部で7トラックしか見当たらない。




< Solo after Coming Back >

 2001年に Jazzhole から突如復帰。

"Easy Motion Tourist" (Jazzhole, 2001)
CD/Viynl single including Original/Mix/Remix versions
 復帰アルバムに先立ってリリースしたシングル盤(現物未確認)。

"Returns" (Jazzhole JAH006D, 2003)
d0010432_7343023.jpgSorry Sorry No Dey (feat. Chief Seni Tejuoso) / Name Own You Dey See / She Go Run Away (Club Mix) / Feso Jaiye / Iyawo Iyawo / Beleke / Omolere Aiye (Smooth Mix) / Easy Motion Tourist / Omolere Aiye (Dance Mix) / Sisi Jaiye Jaiye / Easy Motion Tourist (Jazz Mix feat. Biodun 'Batik')

 復帰第1作目。過去のレパートリーの再演を多く含む。

"Live in Rabat, Morocco" (Jazzhole ?, 2003)

 未入手につき内容不明。

"Won Kere Si Number" (Jazzhole JAH009D, 2004)
d0010432_7344749.jpgSaworo / To Ba Fe Mo Dollar / Won Kere Si Number / Eko Akete (Agidigbo Blues) / Ori Wa A Dara / I Am Not A Banker / Mama Mi A Ba Mi Wi / Allah Na Tu Ba / Morocco Special / Iya Mi (Tribute To My Mother) / Aduke / Saworo Ma Ro (Unplugged) / To Ba Fe Mo Dollar (Acoustic)

 復帰2作目のスタジオ録音盤。


"Papa Rise Again" (Ekostar, 2007)
d0010432_723502.jpgWon Bumi / Iyawo Mapa Mi / Awa Re Koja / Baba Wa / Saworo / Papa Rise Again / Won Kere Si Number / Ero Ya / Orona / Sisi Jaiye Jaiye / Wasa / Awure Bansa / Ado Lee

 新録+60年代の音源。イギリス盤。

"Papa Rise Again" (High Kay Dancent, 2007?)
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 同内容のナイジェリア盤。

"Returns" (Jazzhole JAHO12CD, 2010)
d0010432_7351823.jpgSorry Sorry No Dey (feat. Seni 'Tejebaby' Tejuoso) / Iyawo Iyawo / She Go Run Away / Na Me Own You Dey See / Eko Akete / Easy Motion Tourist / Aomolere Aiye / I'm not a Banker / Omo Oloye / Sisi Jaiye Jaiye / Feso Jaiye / Beleke

 01年盤の9トラック+04年盤の2トラック+未発表1曲




 Bantu "No Man Stands Alone" (Faluma, 2010.10.30) の 'Ni Bo L'Anlo (feat. Fatai Rolling Dollar, Oranmiyan & Wurasamba)' にゲスト参加。これが最新録音か?




(*1) 従来は Fatayi という表記だったが、最近は Fatai となっている。
(*2) よくありがちなように、この時期の経歴は文献によって食い違っている。年次も1年程度異なる記述がみられる。
(*3) これらの音源は手元のレコードなどでは確認できていない。
(*4) いつの時点でアギディボからギターに持ち替えたのか不明。


♪♪♪

 先日も Ayinde Bakare のディスコグラフィーを作成したように、時々こうした作成作業をする。資料性のあるデータを提供したいという目的もあるが、それより所有盤の確認整理をしながら、好みのミュージシャンのキャリアを俯瞰することで音楽的変遷を把握できるメリットが大きい。

 ファタイ・ローリング・ダラー Fatai Rolling Dollar は復帰後のバラエティー豊かな作品群もとてもいいが、断然魅力的なのは 60年代の録音。"Tunde & Fatayi" のトラックはどれもファタイのギター独壇場の録音ばかり。イントロから終いまで、切れ味鋭いカッティングも、絶妙なフレージングも素晴らしくて、思わず聴き惚れてしまう。

 惜しむらくは復帰前の録音の入手が困難なこと。単独アルバムもなさそうで、「41枚に及ぶアルバムをリリースした」(らしい)トゥンデ・ナイチンゲール Tunde Nightingale とは対照的だ。トゥンデがロンドンにまで活動域を広げたのに対して、ファタイは 70年代を待たずに引退してしまった影響もあるのだろう。





 Jazzhole 関連の情報整理はこれでひと区切り。ざっと書き並べてみただけなので、随時書き加えていきたいとは思うが…。録音が少ないのに、文献類が多くて読み切れない。




by desertjazz | 2010-11-17 00:00 | 音 - Africa

d0010432_10193332.jpgEde Gidi "U-roo-ba Vybe Dialektics" (Jazzhole JAH001D, 1997)

 「前号のアフリカ音楽特集で書き切れなかったことのひとつが、ヒップホップ系音楽の盛り上がりである。最近は、コート・ジボワールとセネガルのラップや、南アフリカのクワイトのCDあたりが割と入手しやすいが、アフリカのヒップホップは何もこれらの国々に限って盛んな訳ではない。そのことは前号で金子穂積さんがガーナの状況について報告されている通りだ。そのあたりをもっと詳しく知りたくて、勘を頼りにCDを買い集めた中の一枚が、このナイジェリアのアルバムである。
 14組のグループのトラックを収録しているものの、その全てにエディー・ジーなる人物がただひとり参加しているため、実質的には彼のソロ・プロジェクトと考えてよいだろう。そのエディーが、ラゴスに暮らす仲間たちを多様に結び合わせることで生まれた曲はバラエティーに富んでいる。曲ごとに、ジャズ、ファンク、ラップ、ジャングル、ドラムン・ベース、テクノなどの要素と共に、フジ、アパラ、アフロ・ビートといったナイジェリア音楽の特徴も聴き取れる。サウンドのベースはエディーのプログラミングしたリズム・トラックで、これにキーボードやサックスとともに、ナイジェリアの伝統的なパーカッション(トーキング・ドラム、バタ、シェケレなど)が絡んでいく。そして、コンテンポラリーなブラック・ミュージックに通じるクールなボーカルとヨルバの呪術的なコーラスが絡み合い、さらにはボコーダー等で加工されたボイスや、街音や鳥のさえずりなどのサンプリング音もコラージュされていく。このように「外」と「内」の要素が交錯する様がとてもスリリングだ。
 正直なところ、仕上がり具合にばらつきがあり、実験的色彩の強いトラックも多い。しかし昨年聴いたアフリカ音楽の中では最大の衝撃を受けた作品(録音は96年)と言え、現在のラゴスの状況が気になって仕方がない。」

 これは10年前、2000年8月に『アンボス・ムンドス』第7号用に書いた原稿。Jazzhole の第1号アルバム(番号から推測)である、エデ・ギディのこのアルバムを見つけたのは 1999年頃にニューヨークの Sterns を訪れた際のこと。今ならばもう少しまともなことも書けそうだが(「エデ・ギディ」とMCしてるのに「エディー・ジー」なんて書いているし)、基本的な考えは変化していない。ラップトップ上のというか、4畳半宅録的というか、そんな形容をしたくなるアフロジャズやフジに大変な新しさを感じたのだった。

d0010432_10192471.jpgAyetoro "6000 Miles and a Minute" (Ebute Metta, 2004)


 2005年にナイジェリアに滞在していた間は、このアフロジャズ/アフロビート盤を繰り返し聴いていた。これはレゴスの Jazzhole で買ったCD。スタジオ・ライブらしい 'Our Man is Gone (Tribute to Fela Kuti)' 〜 'J T's Tale Live' が結構いい。

(追記)Ayetoro の続くセカンド・アルバムの方はイギリス盤が出ており、現在でも容易に入手できる。"Omo Obokun: The Afrobeat Chronicles Vol 2 - Directions in Music by Funsho Ogundipe" (Flying Monkeys Productions FMPCD001)

d0010432_10191428.jpgDuro Ikujenyo and the Age of Aquarius "Ase" (Jazzhole JAHo09CD, 2010)


 先日リリースされたこのアフロビート盤を聴いて連想したのは、先の2作品だった。いずれもアフロビート/アフロジャズを取り入れている点は共通しているものの、そのサウンド自体にほとんど類似したところはない。しかし、なんとはない等質性も感じてしまうのだ。

 ・優等生的なフュージョン寄りのジャズセンス
 ・宅録的な密室性/閉鎖性
 ・不安定にぶれるヴォーカル

 従来からのナイジェリア音楽とはまるで正反対の特徴ばかり。Jazzhole 周辺からはインテリの香りが漂ってくる気がする(Jazzhole の店は半分がCDのスペース、残り半分が書籍のスペースで、アカデミックな本が大量に陳列されている)。これでは全然ダメじゃないかと思われるだろう。いや、実際その通りなのだが、それでも不思議と可能性を感じて、Ede Gidi と Ayetoro の2枚などはずいぶん聴き込んだものだ。Ede Gidi のアルバムなんかは、しっかりしたプロダクションを施せば大傑作に生まれ変わるのではないだろうか。まあ、それは無理だろうから、ぜひ再発して欲しい。全く売れないと思うけれど…。



 Femi Kuti 新作 "Africa for Africa" は従来のサウンドの完全な焼き直し。しょっぱなからライブ盤で聴き込んだ 'Dem Bobo' だったりして、新鮮味も何も感じない。もうアイディアが枯渇したか。その分、普通のアフロビートとしては最も素直に楽しめる作品だろうが。それでも、Tr. 10 の'Now You See' だけは文句なしに気に入った!




by desertjazz | 2010-11-15 12:00 | 音 - Africa

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 またか、と思われるかも知れないが、今夜もファタイ・ローリング・ダラーの話。最近何かと忙しくて、音楽は時々ファタイを聴く程度になっている。今回再発になった "Returns" も実にいいアルバムだった。

 だけど、やっぱり最高なのは 60年代。"Sisi Jaiyejaiye" のイントロや "Saworo" のギターのカッティングを聴く度にゾクゾクしてしまう(両トラックとも 2007年に "Papa Rise Again" でリイシューされた)。彼がクリエイティビティに富んだ優れたギタリストであったことを伝える録音だと思う。

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 そんなこと考えながら、Jazzhole のグループが出している雑誌 "Glendora Review" に10ページにわたって掲載されたファタイのインタビュー記事を読み返したりもしている。この号(Vol.3 No.2, 2001)では他にパームワイン・ミュージックも特集していて、その中に抜群にかっこいいアギディボの写真があった。折角なのでトップに転載(↑)。同じナイジェリア系の大型親指ピアノでも、カリブ圏のマリンブラ Marimbula の跨ぐのとは違ったホールディング・スタイルだ。

 ファタイのデビューも、このアギディボのプレイヤーとしてだった(1953年以降、Queen Mary Orchestra、Willie Payne のバンドを経て、J.O.Araba, Olaseni Tejuoso (Seni 'Teje' Tejuoso) らと Rhythm Blues Band を結成した頃まで?)。"Returns" の 'Eko Akete' や "Papa Rise Again" の 'Baba Wa' などの曲は、ファタイのそうしたアギディボ・プレイヤーとしての一面を紹介するナンバーと言えるのかも知れない。



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 10月30日にリリースされた Bantu の新作 "No Man Stands Alone" (Faluma Africa) の1曲にファタイがフィーチャーされている。多分これが彼の最新録音だろう。

 'Ni Bo L'Anlo' (feat. Fatai Rolling Dollar, Oranmiyan & Wurasamba)





 このところ誰と会っても「忘年会やってよ」とばかり言われる。今年はどうしよう。




by desertjazz | 2010-11-14 23:59 | 音 - Africa

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 Easy Motion Tourist

"Easy motion la wa yi o

A ba tourist ke le le

Ka ma jiya ka to lo laye

Nitori won tilekun mo'mo onile"



 Fatai Rolling Dollar のインタビューを読んでいたら、'Easy Motion Tourist' に関する発言があったので、11/8 の補足を少々。

 J.O.Araba with the Rhythm Blues Band 時代の曲は、J.O.Araba、Seni Tejuoso、Fatai Rolling Dollar たちによる共作で、'Easy Motion Tourist' も Fatai が J.O.Araba と一緒に作ったという。
 ある深夜、Seni が家を閉め出されて入れなくなるというトラブルが起きた。次の夜、皆でパームワインを飲みながら歌っていたとき、Fatai の頭にフレーズが浮かび、アギディボ(大型の親指ピアノ)をつま弾いて "Easy motion la wa yi o ... " と歌い出したという。それがきっかけとなって、前夜の一件はどうやら吹き飛んでしまったようだ。

 この曲、クリントン大統領がナイジェリアを訪れた際、King Sunny Ade が演奏し、それに合わせてクリントンがダンスしたという逸話もあるそうだ。昔からレゴス界隈でかなり有名なナンバーなのだろう。



 上に掲載したCDで、J.O.Araba with the Rhythm Blues Band、Fatai Rolling Dollar、Seni Tejuoso の3ヴァージョンを聴くことができる。




by desertjazz | 2010-11-13 09:00 | 音 - Africa

Discography of Ayinde Bakare (LP, CD とその収録曲)

< LP >

1) V.A. / Juju Roots 1930's - 1950's (Rounder 5017, 1985)
d0010432_213106.jpgOjo Davies / Ojowu 'Binrin
ジュジュの最重要コンピレーション。CDでも入手化。電化前(1937年なので初レコーディング?)と電化直後(1950年頃)の2つの録音を聴くことができる。

2) Live the Highlife with Ayinde Bakare and his Group (Melodisc MLPAS 12-140, 1968)
d0010432_2042260.jpgTribute to the late J.K. Randle / Eko Akete (Lagos Akete) / Adura Fun Awon Aboyun (Prayer for the Pregnant Women) / Inikunle Alakija / Iwalewa (Your Manner is Your Beauty) / Ore O Toto O Si // Moberu Aiye / Ile Aiye Ile Asan / Agboola Odunekan / Olabisi Arobieke / Akambi Balogun
随所で紹介されているアルバムなので、1980年代頃にはある程度流通していたと考えられる。

3) Ayinde Bakare and His Meranda Band Vol.1 (African Songs LPAS 8012)
d0010432_20391488.jpgIgun Gbon / Chief Lekan Salami / Board Members / Ore Meta / Ajao Waidi // Ma Yowo Loro Mi / Ayoola Sosanya / Tesilimi Ayilara / Abo Oluwa / Egbe House
録音年不明。LP両面ともノンストップ・メドレーなので、最晩年の作品だろう。

< CD >

4) The Evergreen Tunes of Ayinde Bakare (1912-1972) Vol.1 (Evergreen Music)
d0010432_2053444.jpgMo Beru Aiye / Ile Aiye, Ile Asan / Agboola Odumekun / Olabisi Arobieke / Akanni Balogun / Late J.K. Randle / Eko Akete / Adura Fun Awon Aboyun / Ibikunle Alakija / Iwa Lewa / Ore Otito Kosi / Late Caxton Martins / Inner Circle Fe Sere / Oba Ajibola Salami / Idowu Ajisafe / Ofofo Ko Dara / Ondo Ni Ile Akindele Ajiroba / Inner Circle Orchestra / Alhaji Taju Cole / Ile Aiye Dara / Awa Ofa Jogbon

5) The Evergreen Tunes of Ayinde Bakare (1912-1972) Vol.2 (Evergreen Music)
d0010432_2032139.jpgJ.K.Randle Oju Owo Ki Pon Dada Ma Yowo Loro Mi Oluwa Ayoola Sosanya / Abo Oluwa Teslim Ayilara / Egbe House Ile Aiye Ile Asan Agboola Odunekan Olabisi Arobieke Akanbi Balogun A Segun Ota / Agbere Won Ti Poju / Oba Eleda Ada (Iyamo To Koni To Ri Owo) / Afolabi Adesanya (Cashier) / Alh Lawyer Akanbi Akeem

現在 Amazon.com で全トラック試聴可能(ダウンロード販売のみ)。

6) Tunde Nightingale, Ayinde Bakare, J. O. Araba / 20 Evergreen Hits of 3 Music Masters of Our Country - Nigeria (Evergreen Music)
d0010432_20532876.jpgEdumare Loni Gbeja Mi / Eda Ko Ma Ro Eda Pin / Oni Suru Lo Laiye / Ajo Ada Ra / Itoju Mama Eni / I. S. Adewale / Aseju Ko Dara


7) V.A. / Evergreen Hits of 20 Music Masters of Our Country Nigeria (Evergreen Music)
d0010432_20535079.jpgEdumare Lo Ni Gbeja Mi
5年ほど前にレゴスの Jazzhole で見つけて『レコード・コレクターズ』などで紹介。その後 El Sur にも大量入荷したコンピレーション。

8) V.A. / History of Juju Music Vol.1 (Fisher Music)
d0010432_205432.jpgOjo Davies / Golden Faces / Isau Adewale


9) V.A. / History of Juju Music Vol.2 (Fisher Music)
d0010432_20541817.jpgIbikunle Alakija / J.K. Randle


10) Ambrose Adekoya Campbell / London is the Place for Me 3 (Honest Jons)
d0010432_2144693.jpgIbikunle Alakija






by desertjazz | 2010-11-10 21:00 | 音 - Africa

Old Time Juju (2) : Ayinde Bakare

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 しばらく古いジュジュを聴いてみる気になり、11/7 に取り上げた Sina Ayinde Bakare の父親の方のアインデ・バカレ Ayinde Bakare から聴き始めてみた。そして、彼がジュジュ・ヒストリー最大の巨人のひとりであることを再認識した次第。

・ナイジェリアのジュジュの原初形は、レゴスのミンストレルたちがタンバリンやサンバドラム(方形のハンドドラム)で奏でるものだった。そこにギターあるいはバンジョーやウクレレなどの弦楽器を導入しされて最初期のジュジュが現れる。1920〜30年代にその中心にいたのがトゥンデ・キング Tunde King 。彼こそがジュジュのオリジネイターと称される所以である。
 同時期活動していたもうひとりが Ayinde Bakare。37年に自身のバンドを結成し、その当時の録音も容易に聴くことができるのだが、Tunde King の土着的な音と比較すると一歩洗練された印象を受ける。

・40/50年代には、ガンガン(Gangan トーキング・ドラム)などのパーカッション、アギディボ(Agidigbo ベース楽器である大型の親指ピアノ)などが導入されることにより、ジュジュのサウンドは変化していく。そうした変化の中でも特筆すべきはエレキギターが用いられるようになったこと。それを最初に行ったのが Ayinde Bakare だと言われている(1949年。正確には ウクレレ・バンジョーという楽器に電気ピックアップをつけた)。

・70年代初頭まで活動し、Ade や Obey の時代(大編成化)への橋渡しをした。最晩年のアルバムを聴くと、片面全てを使ったノンストップ・メドレーになっていて、新時代のジュジュのレコーディング・スタイルにも対応していたことが分かる。

 といった具合に、うる覚えな記憶を書き出してみた(なのでやや不正確かも知れない)。振り返ると、72年に<不自然な死>を遂げるまで、ジュジュの変遷史の長きにわたって重要な役割を果たしてきたことが分かる。こうしたミュージシャンは他にはいない。彼ほど熱心に女性を讃える歌を歌った人物はいないとも語られている(そのあたり、まるで Youssou N'Dour のようでもある)。



 Ayinde Bakare について文章でばかり紹介していても仕方ないとは思ったのだが、少々調べてみたら案外いくつかのCDでも現在でも聴ける(そうした音源の整理も始めてみた)。それ以前に(今、センカクで話題の)YouTube でもいろいろ聴ける。便利になったものだ。




 ここ数日は M. E. ヴィールの『DUB論』を読み続けている。そちらにひと区切りついたら、T. Ajayi Thomas の "History Of Juju Music" (Thomas Organization, 1992) などをしばらく振りに再読し、ジュジュを再履修してみたい。

 余談をひとつ:

 昨晩も登場した T. Ajayi Thomas は、何を隠そうフェラ・クティの "ファースト・アルバム" の音源提供者(といったことは10年前から私のウェブサイトをご覧になっている方ならご存知かな?)。現在流通しているリイシューCDの音をよく聴くと分かるのだが、正規盤の音源は彼からいただいたのと同じコピーが使用されている(勿論、いちいち全てを確認するなんてことはしていないが)。彼が "ファースト・アルバム" を所有していることを知り、そして連絡を取り合えたことによって、フェラとクーラ・ロビトス Koola Lobitos の60年代の録音のリイシューが実現できたのだった。そうした意味では、T. A. Thomas 氏との出会いは、私とアフリカ音楽との関わりの中で最も世間に役立ったものだった、そう今でも考えている。

(不眠症再発で眠く、飲みながら料理の仕込み中に書いているので、今夜はこの辺で失礼。)

→( 最近のブログを部分的に読み直したら、やっぱりケアレスミスなどがあった。気がついた順に訂正中。)






by desertjazz | 2010-11-09 22:00 | 音 - Africa

Old Time Juju (1)

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 順番から行くと次は Jazzhole からの新譜4枚のうちの残る1枚 Duro Ikujenyo and the Age of Aquarius "Ase" ということになるのだが、これは後日。アフロビートなので、今週中にはイギリスから送られてくるはずの Femi Kuti の新作 "Africa for Africa" と合わせて書いてみたいと思っている。

 "Ase" には「Robert Wyatt が音痴に歌ったアフロビート」と形容したくなるトラックがあり、よくこれをリリースしたものだと思わせられた。だが、他からはある種の Jazzhole らしさも感じられて(可能性を感じさせるが、チープさも否めないという性格なので、好みは人によりけりだろう)、そんな一面にも触れてみたい。

 "Ase" を後回しにして、今はオルードタイム・ジュジュのレコードをあれこれ聴いている。Sunny Ade や Obey よりも前の時代、具体名を挙げると、Tunde King, Tunde Nightingale, Ayinde Bakare, J. O. Araba, Fatai Rolling Dollar, etc.。ざっくりした音の感触がたまらない。

 さすがにオリジナルのアナログ盤で持っているものは少なくて、大半が T. Ajayi Thomas の Fisher Muisc (NYC, USA) と Femi Esho の The Evergreen Musical Company (Lagos, Nigeria) からのリイシュー。それでもレコードラックを漁ってみたら、Fatai Rolling Dollar や Ayinde Bakare のアルバムまで持っていることに気がついた。

 Jazzhole の新作をきっかけに、今月は Nigerian Juju Music を久し振りに聴き直してみようかとも考え始めている。ということで、続きはまた次回。

(途中まで書いたところで、またまた全部消えてしまった。こんなことばかりを繰り返しているので、ブログは何とも疲れる。)




by desertjazz | 2010-11-08 23:59 | 音 - Africa
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