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BEST ALBUMS 2018

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1. BRUCE SPRINGSTEEN / SPRINGSTEEN ON BROADWAY
2. BALOJI / 137 AVENUE KANIAMA
3. FEMI KUTI / ONE PEOPLE ONE WORLD
4. NAKHANE TOURE / YOU WILL NOT DIE (PREMIER ALBUM)
5. MOUSSU T E LEI JOVENTS / OPERETTE VOLUME 2
6. JASKULKE SEXTET / KOMEDA (RECOMOSED)
7. IBRAHIM MAALUF / LEVANTINE SYMPHONY NO.1
8. MHD / 19


 以下、絶対的評価や時代性などに関わりなく、自分が好きな音楽、よく聴いたアルバムについての個人的感想。(これだけ何でも大量に手軽に聴ける時代になってしまうと、音楽を楽しむには自身の感性に従うしかない。)

 迷わず1位に選んだスプリングスティーン、実はまだ聴いていない。「チケットが取れない!」と誰もが悲鳴をあげたブロードウェイ公演、幸運にも私は早々と今年1月に観ることができた。スプリングスティーンは他のアーティストたちとは全く別次元で音楽に向き合っていることを感じ取り、心から感動した。我が生涯で最高の音楽体験。これを(実質)最前列センターで観られたのだから、チケット代 850ドルは惜しくない。その一瞬一瞬の光景と音を脳に刻み込んできたので、CD で聴き返す必要を感じていないのだ。先日 12/16 に NETFLIX で世界初公開されたブロードウェイ公演も観たが、実際現場での体感にはほど遠かったし。なので、録音を聴くことで自分の記憶が薄れてしまう怖さもあり、今後も聴くことはないかも知れない。それでも、今年これを超える作品はないだろうと、聴かずともそう確信している。

 2位はバロジ。第一部のダンサブルな祝祭感も、二部から三部にかけての切々とした歌と息詰まる緊張感も素晴らしい大作。自ら監督したビデオなどのビジュアル面も含めて、彼の様々なフェイズがほとばしる傑作。来日公演を含めて今年4回観たステージも毎度たっぷり堪能。特にマルセイユでのステージは圧巻だった。Facebook のメッセージなどを通じて、あるいは直に会って色々やりとりしたことも良い思い出になった。

 今年はアフリカ音楽の豊作年で、良い作品が多かった。それらの中から、フェミ・クティと(ナカネ・トゥーレ改め)ナカネを3位と4位に選出。フェミは完全復活。キャッチーな曲が揃っていて、20年近く前の一番良かった頃に戻った感がある(セウン・クティはアルバムもライブも今ひとつスケールダウンしたままだったので、選外に)。仲根くんのセカンドはファースト"Brave Confusion" のただの焼き直し/リミックスじゃないかと最初は思った。しかし、繰り返し聴くうちにどんどん彼のダークな世界にハマっていく。リミックスは彼の良さが出る方法なんだろうな。掲載ジャケットは赤い「ワキ毛盤」じゃなく、Anohni 参加曲などの6曲を追加した Premier Version の方。

 5位、ムッスーTが1930年代にマルセイユの街で流行った曲の数々をカバーした新作は、ひいき目抜きにしても素晴らしい出来。彼らのアルバムの中でも最高作なのではないだろうか。全て楽しい曲ばかりであり、マルセイユで観たライブは観客を笑わせる語りやパフォーマンスもあって、より楽しいものだった。

 ジャズも豊作だった。個人的に特に気に入ったのはポーランドのピアニストたちによる、クシシュトフ・コメダ Krzysztof Komeda の再解釈作品集。ジャズ系では CHRIS DAVE AND THE DRUMHEADZ も ANTONIO LAUREIRO "LIVRE" も最終候補だった。3作ともマジカルな音の瞬間が来ることが共通している。これぞ音楽を聴く醍醐味。BRAD MEHLDAU / AFTER BACH は面白い試みで(視点は KOMEDA と共通しているかも)気持ちよく飽きるほどに聴いたが、残念ながら10枚には残せず。

 7位、イブラヒム・マールーフは一気聴き必至な流麗な組曲。年末に届いた最新作ライブ "14.12.16 LIVE IN PARIS - ACCORHOTELS ARENA" の3時間半に及ぶライブも見どころ満載。多作ぶりからも、彼の好調さが伝わって来る。

 何を落とすか迷ったアフリカもの。最後に残ったのは8位 MHD と9位の AYA NAKAMURA。MHD とサリフ・ケイタは互いのアルバムにゲスト参加しているが、サリフのラスト・アルバム "UN AUTRE BLANC"(*)より MHD の方が良くて繰り返し楽しんだ。中村綾ちゃんは昨年2位に選出したファースト・アルバム "JOURNAL INTIME" と比べると、決定的名曲がないなど見劣りする。しかし、「中村現象」がフランスなどを席巻した今年、やっぱりベスト10から外しにくい。

(*)サリフ・ケイタの「引退」を私が伝えた途端、その情報が拡散して少々不安になったのだが、アルバムのライナーに 'this is my last album' と書かれていてひと安心? しかし本当にアルバム制作を止めるとはとても思えないのだが。

 アフリカ音楽の諸作の中で、サウンド・プロダクション的には FATOUMATA DIAWARA "FENFO" が秀でていたが、あのガラガラ声が辛い。勿体ないなぁ。今年大いに話題になった ANGERIQUE KIDJO "REMAIN IN LIGHT" は結局まだ買っていない(悪くないんだけれど、自分に必要な音楽じゃないので。これを聴き始めると、すぐに TALKING HEADS の方を聴きたくなってしまう)。セネガルの歌姫 COUMBA GAWLO "TERROU WAAR" もお気に入りだが、フィジカルまだ未入手。南ア MAFIKIZOLO の "20" のポップさも良かったな。

 最後の10位は、深夜によく聴いたアルメニア人とトルコ人による静謐な作品を選択。決して特別凄い音楽ではないし、彼らは前作 "ADANA" の方が好きだけれど、今年夏のテーマがコーカサスで、来年のテーマの一つがトルコだということもあるので。

 アルバム・フォーマットじゃないので選外にしたが、TIGRAN HAMASYAN の10インチ "FOR GYUMRI" とSUDAN ARCHIVES の12インチ "SINK" も愛聴した。来年はフルアルバムに期待。

 リイシューにも好盤が多かったが、一番よく聴いたのは "NOSTALGIQUE ARMENIE : CHANTS D'AMOUR, D'ESPOIR, D'EXIL & IMPROVISATIONS 1942-1952" だった。この夏にアルメニアを旅する直前までずっと聴き続けていた。

 そして、「隠れベスト」はロシアの LEONID & FRIENDS "CHICAGOVICH II"。実はこれも買っていない。なぜなら全曲の演奏動画がネットで観られて、これらを観ている方が楽しいので、買う必要がないのだ。驚いたのは、かつて James Pankow がリードヴォーカルをとった "You Are On My Mind" の素晴らしさ。これほどの名曲だったとは! オリジナルを遥かに凌駕しており、今年最も多く観たビデオになった。"Street Player" もオリジナル・ヴァージョンといい勝負。"Hot Streets" の正確なコピーも見事。6管編成の "Beginnings" だとか、ストリングスがニコニコ顔の "If You Leave Me Now" だとか、とにかく楽しくて幸せな気分にさせられる。



 今年は大発見がなかったし、ブログで音楽を紹介することもあまりできなかった。それらは来年の課題としよう。とにかく SPRINGSTEEN ON BROADWAY がほぼ全てと言って構わない1年だった。3年連続でブルース・スプリングスティーンのライブを観に行き、その3年目にこんなとてつもない体験と心打ち震える感動に恵まれるとは。これから何を求めて生きていけば良いのか悩み続けているほど。

 来年にも期待しつつ、ひとまずは、幸せな気分にさせてくれるたくさんの音楽と出会えた 2018年に感謝 !!







by desertjazz | 2018-12-31 23:02 | 音 - Music

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 本日 12/7 にリリースされたクンバ・ガウロ Coumba Gawlo Seck の新作 "Terrou Waar" 意外と軽やか。最近の女王様然としたところも取れた感覚(数年前にクンバ・ガウロに会った時、180cmを超えるだろう長身と共に、シャイな仕草が印象に残ったことを思い出す)。トラックによってはマンディングの風味もあって汎アフリカ的、かつ自己の集大成的側面も見せる。3曲目 "Siyo" と4曲目 "Na" の笛はまるでアルバム "Yo Male" のアレンジを再現したかのよう。続く5曲目 "Diombadio" の枯れた弦の音はマシンコに聞こえる。7曲目 "Ngoulok" は軽快なンバラ。終盤10曲目 "Tekk Gui" の涙声と、11曲目イスラミックな "Naby" は新境地か? ラストは先行シングルだった "Allez Africa"、この曲何度聴いても楽しい! フィジカル欲しい!







by desertjazz | 2018-12-07 20:00 | 音 - Music

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 2018年も残すところあと1ヶ月。振り返ってみると、今年はコーカサス、中でもジョージア(グルジア)とアルメニアが自分にとって大きなテーマとなった1年だった。


 昨年のベスト・ライブに選んだのは、アルメニア出身のピアニスト、ティグラン・ハマシアン Tigran Hamasyan のソロ公演(東京)。(→ http://desertjazz.exblog.jp/26352615/)それは繊細で実験性に富み、とてつもない集中力を示すものだった(続いて観に行った屋久島の森での公演は、ティグランの消耗が激しかったようで、時間がやや短かったのは残念だったが)。その余韻が残るうちに、今年の春また彼の新作が届けられた。"For Gyumri" と題されたソロ作で、5トラック収録の10インチEP盤(CD もあり)。夢の世界に誘うような美しく幽玄な調べに(特にA面の短い3曲)、彼のソロ・コンサートの光景をまた思い出す。

 ギュムリ Gyumri はアルメニア北西部の都市で、ティグランの生地である。1988年のアルメニア地震で多数の死者と甚大な被害の出た街としても知られる(当時名はレニナカン)。ティグランの最新作はその故郷を思って演奏されたものだろう。ECM からの近作2タイトル "Luys i Luso" (2015)、"Atmospheres" (2016) も素晴らしかった。そうした彼の音楽にはアルメニアの歴史と情景が刻み込まれている。ティグランが生まれ育ち、そのインスピレーションの源になっているアルメニア、そしてギュムリをいつか訪れたいと思い始めたのだった。


 コーカサス3国の中でアルメニア以上に関心を抱いていたのは、実はジョージアの方(残る一つはアゼルバイジャン)。国内各所の絶景もさることながら、ワイン誕生の国ということにより興味を惹かれた。それでジョージア行きのフライトを時々調べたりしていた。

 そんな折にチャンス到来。今春、カタール航空のキャンペーンを見つけた。ドーハ経由のカタール便を使えば、ジョージアの首都トビリシまで格安料金で往復できる。そのことをパートナーに相談すると、一言。「アルメニアにも行けるんじゃない?」 早速調べるとまさにその通り! 東京ードーハ、ドーハーエレバン、トビリシードーハ、ドーハー東京のビジネスクラス4フライト合わせて、普段の約半額の20万円台。カタール航空は One World グループなので、JALのマイレージを20000マイルほど貯められることを加味すれば実質20万円強だ。カタール航空のビジネスクラスはここ数年ランキングの1位か2位を維持している高評価フライト。これを逃す手はないと思い、コーカサス(ジョージア&アルメニア)旅行を即決した。

 出発までの間は、旅程をじっくり検討しながら、コーカサス関連の図書を手に入る限り読み漁って(島村菜津+合田 泰子+北嶋裕『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化: 母なる大地が育てる世界最古のワイン伝統製法』、木村崇+篠野志郎+鈴木董+早坂眞理『カフカース 二つの文明が交差する境界』、富樫耕介『コーカサス 戦争と平和の狭間にある地域』、廣瀬陽子『コーカサス国際関係の十字路』など硬軟様々に)、コーカサス3国の歴史や風土や建築について学ぶ日々。

 それと平行してコーカサスの様々な音楽を聴き続けた。ロサンゼルス在住アルメニア人たちのジャズ、エレバン在住の若手プレイヤーたちがネット公開する音源、そして多彩なポップスまで。それらの中で、とりわけ味わい深く聴いたのは "Nostalgique Armenie - Chants d'amour, d'espoir, d'exil & improvisation 1942-1952" (Buda Musique) というアルバムだった。大国ロシアやトルコに挟まれ、凄惨なジェノサイドを経験するなど、歴史に翻弄されたアルメニアの民。彼らの多くは世界各地に逃れることとなった。そんなディアスポラたちにはフランス(パリ、マルセイユなど)やアメリカに渡った者も多く、このアルバムにはそうした彼らの心の支えとなった音楽がコンパイルされている。古い録音ながら滋味深く、大変素晴らしい内容で毎日のように聴き入った。


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 そして6月、トランジット地のドーハに飛んで短い観光、それからエレバンへ。アルメニアとジョージアを約1週間ずつ周遊して7月に帰国した。(エレバンートビリシ間は車をチャーターして、観光しながら移動。途中ギュムリに立ち寄ることも検討したが、ルート的に無理だった。)初めて訪れるコーカサスへの旅は、美味な酒と料理、歴史深い建築群、さらには絶景の数々を堪能する素晴らしいものとなった。特にアルメニアの古い教会や修道院を訪れる度に、ティグランはこの景色を見つめる中から素晴らしい音楽を生み出したのかと感慨しきり。(その旅行記は未だ手付かずで、結局年内には書けそうにないのだが、、、。)


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 9月には再来日したティグランのコンサートへ。西宮公演のチケットを手配していたものの、関西地区を大型台風が襲い無念の中止。大阪まで来て諦め切れないので、翌日の名古屋公演の当日券を買い、ティグランの音楽をもう一度味わう。今年もギリギリで、彼の生演奏を楽しめて幸いだった。


 このようにアルメニアを追い続けた2018年。その最後に、待望のアルバムが登場した。ヴァルダン・ホヴァニシアン&エムレ・グルテキン Vardan Hovanissian & Emre Gültekin の第2作目 "Karin" (Muziekpublique) だ。

 ヴァルダンは、アルメニアのダブルリードのたて笛ドゥドゥクの奏者。エムレは、トルコのリュート系弦楽器サズの奏者で、歌も担当。この2人が10数年前に出会ってコンビを組み、そして完成させた作品が "Adana" (2015) だった。柔らかくももの哀しいドゥドゥクの音。端正なサズの調べ。両者の静謐な対話ほど心に染み入るものはない。これこそ 2016年に出会った最高のアルバムだった。

 ジェノサイドという歴史的禍根から国境を挟んで今も対立するアルメニアとトルコ。(今夏の旅行に際してはトルコ経由も検討したのだが、イスタンブールーエレバン間にはフライトは飛んでいなかった、、、というのは当然か)だが2つの国にとって、音楽的にはルーツを共通とするところが多いので、当然ながら2人の音の親和性は極めて高い。

 今回の新作のタイトル「カリン Karin」は、トルコ東部に位置するエルズルム Erzurum の街の古のアルメニア名。現在はトルコ領だが、かつてはアルメニアの土地で、ヴァルダンの祖父もここで生まれたという。近くにはアルメニアの人々の心の拠り所であり続ける高峰アララト山もそびえる。そんなことから、この Karin というタイトルは、音楽にとって国境など無意味であることの象徴にも感じられる。

 前作 "Adana" はドゥドゥクとサズを中心に、ダブルベースなど最低限の楽器だけを加えた、静謐で強い統一感を醸した作品だった。それに対して今度の "Karin" は参加ミュージシャンがぐっと増えて総勢13名。女性ヴォーカルもあって、前作の音に囚われない挑戦作となっているが、聴き始めた当初は「少々やりすぎか?」とも感じた。しかし、アレンジ面での工夫も含めて、トラックごとに多様な彩が加えられていても、サウンドの基本線は不変。決して派手さなどなく、優しさ、穏やかさ、美しさは、全く損なわれていない。淡々としたエレムの歌声もこれまで以上に聴き手を慰るようだ。自分にとっては "Karin" は今、荒んだ下界から逃れた後、深夜に心を鎮めるのに最適な音として響いている。


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 ヴァルダンとエレムの音楽は本当に素晴らしい。当然のごとく次は彼らのライブを観たいと思い、時折調べている。(日本に来てくれないだろうか?)そしてアルメニアのことも、この国の音楽についても、まだまだ知らないことばかり。より深く知るために、アルメニアとジョージアを今度はいつ旅しようかとも考えているところだ。







by desertjazz | 2018-12-02 11:00 | 音 - Music

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 この頃夜になると安東ウメ子さんの『イフンケ Ihunke』をよく聴いている。それもアナログ盤で。これはドイツのクラブ・ミュージック系レーベル PINGIPUNG がプロデューサーの OKI さんに打診して、今年の夏にヴァイナル化が実現した 2LP である。

Umeko Ando "Ihunke" (Pingipung 060, 2018)

 アルバム "Ihunke" は言わずと知れた名盤。2001年にリリースされたオリジナル CD はもちろん持っており(2011年には未発表だった4曲を追加して再発売)、長年愛聴し続けている。しかし、12インチの美しいジャケットを目にした途端、どうしても欲しくなって買ってしまった。これで "Ihunke" は3枚目だ。

 しかしアナログ盤の音が期待した以上に良くて、買って正解だった。CD の音と比較すると、ウメ子さんの歌(ウポポ)も OKI さんのトンコリも、響きの細やかなところまでいっそう美しく記録・再生される。そのため、これまで慣れ親しんだ音以上に、空間的な広がりや奥行きを堪能できるのだ。CD の音も決して悪くないのだが、アナログの音に比べたら、幾分かだけ詰まって密室的に聴こえるように感じた。

 この 2LP には OKI さんへのインタビューを掲載したシートが封入されている。これは、アイヌを知らない/詳しくない外国人向けにアイヌやトンコリについて概説し、アルバム制作に至った経緯などについて書かれたものなのだが、日本人にとっても十分有益な内容だ。

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 それにしても、帯広アイヌのウメ子さん、旭川アイヌの OKI さん、樺太アイヌにルーツを持つ楽器トンコリ、これら3者が出会い、歌(ウポポ)とムックリとトンコリの音が織り重なって生み出される響きの何と美しいことか(数曲でウポポで加わっている女性たちはマレウレウの皆さんですね)。傑作という評価にも納得。自分にとっても一生ものだ。

(私は昔、白老町や、二風谷を含む平取町に住んでいたことがあるので、道南のアイヌにはある程度馴染みがある。だが、旭川や道東のアイヌ、またそれらの差異についてはほとんど何も知らない。アイヌのことをもっと知りたいな。)

 思い返すも、一度ウメ子さんの生声を聴いてみたかった。しかし彼女は 2004年に72歳で亡くなられているので、残念ながらそれは叶わない。その分残された録音を慈しみつつ聴き続けることにしよう。

 私の手元にある彼女の CD は以下の4枚。他に『ムックリと安東ウメ子』(1995年)(Wikipedia によると『安東ウメ子・ムックリの世界』1994年)といった作品もあるようなので、それもいつか聴いてみたいな。

・OKI featuring Umeko Ando "Hankapuy" (Chikar Studio CKR-0102, 1999)
・Umeko Ando "Ihunke" (Chikar Studio CKR-0103, 2001)
・Umeko Ando "Upopo Sanke" (Chikar Studio CKR-0106, 2003)
・Umeko Ando "Ihunke" (+4) (Chikar Studio CKR-0119, 2011)

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 最近はニュースに接する度にいよいよ絶望感がつのり怒りが収まらなくなる。そんな時でもウメ子さんの歌声はまるで子守唄のように私の心を鎮めてくれる。アルバム・タイトル「イフンケ」とは子守唄を意味するという。これは彼女の音楽に最も相応しい名前だろうと思う。







by desertjazz | 2018-11-30 14:00 | 音 - Music

 ウアムリア奈津江さんが、ベルベル系シャウイの伝説的歌手アイッサ・ジェルムーニ Aissa Djermouni と彼のアルジェリア盤CDを紹介され話題になった。それ以来、私も彼直系の音楽により注目するようになっている。マルセイユのベルザンスでは、そうしたシャウイ系のCDが色々手に入る。情報が乏しくて、ベルベルの中でも誰がシャウイ系なのか判断がつかない面もあるのだが、ライのルーツとも繋がるようなベルベルの土着的な伝統音楽をいくつか取り上げてみたい。

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 1995年にリリースされた "Anthologie Du Rai" は充実したコンピレーションだった。その中でライのオリジネーターとして紹介された、リミティ Rimitti とシェイク・エル・ハマダ Cheikh El Hamada に次いで取り上げられていたのが、シェイク・エル・ママチ Cheikh El Mamachi だった(Vol.1 のジャケットには彼の顔写真?)。葦笛ガスバとフレームドラム(ベンディール?)だけを伴奏にコブシたっぷりに歌われる、アクの強さやアーシーな感覚は一緒なのだが、アイッサの方が遥かに荒々しい歌だ。恐らくママチの方が随分後年の録音なのだろうと推測されるのだが、いかんせん全く関連資料が見つからない("Anthologie Du Rai" の解説にもフランス語への歌詞抄訳があるのみ)。呪術的でありながら、実に味があって、今度のマルセイユ探索の大きな収穫となった。

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・Cheikh Mohamed El Mamachi "Fi Had Majlisse" (Edition Fraternelle no number)
・Cheikh El Mamachi "Vol.1" (Edition Fraternelle No.369)
Cheikh El Mamachi "Vol.3" (Edition Fraternelle No.06)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.4" (Edition Fraternelle No.430)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.7" (Edition Fraternelle No.402)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Tayara" (Edition Fraternelle No.410)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.12" (Edition Fraternelle No.420)
・Cheikh Mohamed Mamachi "Krim El Glaub Wajbi" (Edition Fraternelle No.432)


 シェイク・エル・ママチの CD がこれだけ出ているのなら、シェイク・エル・ハマダもあるはずで探してくるべきだったと、帰国後に気がついた。ハマダの録音は"Anthologie Du Rai" 以外にもいくつかのコンピレーションに1〜2曲ずつ収録されているが、まとめて聴きたい歌い手だ。Spotify で検索してみると6タイトルあり、どれもいい。これらの CD は次回のフランス滞在で探してみたい。


 ミロウド・エル・ヴィアラリ Cheikh El Miloud El Vialari も良かった。ハマダやママチと比較するとずっと端正な歌い口。録音も良く、動画もネットに複数アップされているので、現役の音楽家なのかも知れない。シンプルな繰り返しのようでありながら、時折ゾクッとする瞬間が来る。

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・Cheikh El Miloud "Kissat El Hadj" (Edition Noudjoum Wanchariss CD77)
・Cheikh Miloud Vialari "Vol.1" (Edition Noudjoum Wanchariss CD79)
・Cheikh El Miloud El Vialari "Vol.3" (Edition Noudjoum Wanchariss CD125)
・Cheikh El Miloud Vialari "Vol.4" (Edition Noudjoum Wanchariss CD147)
・Cheikh El Miloud Vialari "Vol.5" (Edition Noudjoum Wanchariss CD148)


 今回買ったカビールやシャウイといったベルベル系音楽CDで、まだ聴いていないものが手元に数十枚。アルジェリアの音楽は知るほどに奥が深く興味深い。しかし、とにかく各音楽家に関する情報がなくて、紹介しにくいことに困っている。その点、ウアムリアさんの書かれた記事『カビールとシャウイ 注目を集めるアルジェリアのベルベル系音楽』(ミュージック・マガジン2008年1月号 P.84-89)や彼女のブログ『ビバ!アルジェリア』は大変参考になった。だが、より詳しく知るためには、フランス語でも構わないので適当な文献が欲しいところでもある。

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 (続く。残りの未紹介のアルバムについては、また別の機会に。)






by desertjazz | 2018-11-07 00:00 | 音 - Music

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 ここ
に書いた通り、体調崩してやや不満足に終わったマルセイユの Fiesta des Suds 取材。アルジェリア盤探しも、熱っぽい身体で出かけて短時間で漁っただけだったので、収穫は少なめだった。

 まずはライ。今回聴いた中ではシェブ・アベス Cheb Abbes が一番良かった。

・Cheb Abbes "L'Histoire Maak Bdat" (2012)
・Abbes "Ma Andich Ichkale" (2014)
・Cheb Abbes "Sentiment Bizar" (2015)

 シェブ・アベスはオランのライ・シンガー。"L'Histoire Maak Bdat" の気品あるポートレートに惹かれて買ってみたら当たり! 1曲目はレゲエ調。4曲目は「ライのプリンセス」こと Djenet 嬢とのデュオ。5曲目はラップMC入り。ラスト8曲目は思わずリフレインしてしまうダンサブルな極上ポップ。トラックごとに楽器編成やアレンジに工夫がなされ、渋谷界隈で評判悪いヴォコーダー(ロボ声)もなし。今回入手したライ盤中でベストだろう。"Ma Andich Ichkale" も好盤。ちょっと Khaled を連想させる声質の良いシンガーだ。


 昨年パリのバルベス Fassiphone で見つけた "Wahrane Halaba" (2013) がかなり良かったシェブ・カデール Cheb Kader。その彼の続作 "Kanoune" (2015) もジャケの面構えに惹かれて買ってみた。流れがやや単調なところが惜しかった前作に対して、本作は1曲目がピアノのイントロで始まるなど、バラエティー豊かなアレンジ。強烈なノドを堪能できるところは前作と変わらない。それにしても "Wahrane Halaba" の1曲目は圧巻だった! 今ハレド Khaled に対抗しうる最強シンガーは2人の Kader だろう。

・Cheb Kader "Wahrane Halaba" (2013)
・Cheb Kader "Kanoune" (2015)

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 ということで、もう一人のカデール Kader Japonais。ジャケット写真も最高のカデール・ジャポネの大傑作 "Hkaya" (2016) を、一昨年秋にこれもバルベスで見つけて日本に紹介したところ評判を呼び、ちょっとしたベストセラーになった。確かにこれは素晴らしい作品で、近年のジャポネの絶好調ぶりが伝わってくる。そこで、今回も最新作 "Dream" を探して歩いてみたのだが見つからず。ひょっとするともうフィジカルは出していないのか?とも思ったが、まあそのうちに手に入れられるだろう( "Dream" も Spotify で聴けているので CD がなくても困らないのだが)。ちなみに10月25日には新曲 "Y'en A Marre" をリリースしたので、来年早々にはまた新作を楽しませてくれるに違いない。

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 カデール・ジャポネは未入手だったアルバムをひと山まとめ買いできたので、今せっせと聴いているところ。いずれも充実した作品だが、以前から持っているアルバムを含めても(下の写真)、やっぱり "Hkaya" が最高だ。

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・Kader Japonais "Ton Bébé" (2007)
・Kader Japoni "Ntalaak Fel Houari Ou Nhabtek Fi Orly" (2009)
・Kader Japonai "Adamek Nti Bizard" (2010)
・Kader Japonais "Mazel Kloubna En Contact" (2011)
・Kader Japonais "200% Live Sheraton" (2011)
・Kader JAP "Jorhi Ma Bra" (2013)
・Kader Japonais "Haba Haba" (2013)
・Kader Japonais "Oscar" (2014)
・Kader Japonais "Today" (2015)
・Kader Japonais "Hkaya" (2016)
・Kader Japonais "Dream" (2018)


 番外編?として、マルセイユのCD店のオヤジに強く勧められたマゾウジ Mazouzi。聴いてみたらシンセによるリズムボックスのようなシークエンスがまるで Cheb Khaled の "Kutché" のようで、思わず聴き入ってしまった。

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(以上のアルバムのほとんどは Spotify でも聴くことができます。)






by desertjazz | 2018-11-06 12:00 | 音 - Music

Lux B (Lux Botté) - 10 Years

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 Massilia Sound System / Oai Star の MC、Lux B (Lux Botté) が亡くなって今年で10年(2008年7月18日に院内感染症で47歳で逝去)。彼を偲んで、マルセイユでイベントが開催されるようだ。

 出演予定は、ワイスター Oai Star、マッシリア・サウンド・システム Massilia Sound System、パペJ Papet J、ムッスーT Moussu T(タトゥー Tatou)、ガリ・グル Gari Greu、ゼブダのムッスーとハキム Mouss & Hakim、マニュ・テロン Manu Theron、デュパンのサム・カルペイニャ Sam Karpienia、ジジ・デ・ニサ Gigi de NIssa、そしてトコ・ブラーズ Toko Blaze 等々と、オクシタン勢が総集結! 11月3日19時から。会場が Cours Julien の Espace Julien というのもいいな!(と言うか、ここしかありえないでしょうね。)

 最近マルセイユへの興味がますます深まり、深沢克己の『マルセイユの都市空間 ー幻想と実存のあいだでー』をじっくり精読し直したり、タトゥーが Moussu T e Lei Jovants を発想する源となった小説 Claude McKay "Banjo" を読み直し始めたり、さらにはマルセイユを舞台にした名作、アレクサンドル・デュマ・ペールの『モンテ・クリスト伯』まで読み出してしまった。

 11月にマルセイユに居ることができたらいいのになぁ。

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by desertjazz | 2018-10-06 20:00 | 音 - Music

Best Albums 2018(上半期)

 今月はもう音楽を聴く時間がなさそう。なので、ちょっと早いけれど、今年上半期のベスト・アルバムを選んでみた。(所要時間1分!)


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by desertjazz | 2018-06-15 19:00 | 音 - Music

 ワールドカップ2018が今夜開幕。それに合わせてユッスー・ンドゥール Youssou N'Dour が新曲 "ñi ngi ànd ak yéen" を発表した。これはセネガル代表チームのために作った曲で、ビデオも公開されている。



 ユッスーはワールドカップと縁が深い。公式アンセムも過去2大会連続で歌ったほど。一度は1998年フランス大会で、"La Cour des Grands" を書き、アクセル・レッド Axelle Red と共演している。しかし、これよりいいのが同年のコンピ "Amourfoot" に収録された "Banjoli"(の再録音ヴァージョン)。シンプルなアレンジがもう最高で、これまで何度聴いたことか。このアルバム、ユッスーの他には Fabulous Trobadors、Cheb Mami、Ismael Lo、Massilia Sound System など、大好きなミュージシャンが大挙して参加した愛聴盤だ!


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 フランス大会の4年後、日韓共催となった2002年には、セネガルのデューフとフランスのジダンの対決が観たくで、韓国に飛んでソウルのスタジアムで開会式と開幕戦を直に観てきた。それもセネガル・サポーターの一団に混じって。ジダンは負傷欠場し彼のプレイを観られなかったことは心残り。でもセネガルが勝って大喜び! これらはその時の写真。

 この年は再度韓国に渡って、準々決勝2試合(ドイツーアメリカ、スペインー韓国)も観てきた。残念ながら内容は散々だったけれど、色々楽しかった。自分がまだ若くて元気だった頃の思い出。


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by desertjazz | 2018-06-14 19:00 | 音 - Music

R.I.P. I Ketut Suwentra

 バリ島の友人から急報。ジェゴグ楽団 スアール・アグン Suar Agung のリーダー、スウェントラ I Ketut Suwentra 氏が本日14時に肺ガンで亡くなったとのこと。アグン村の彼のご自宅を訪れて、巨竹ジェゴグの音を実体験できたことは良い思い出です。スウェントラ夫妻とは度々会ってお話しできたことも嬉しかった。急逝されたことは、とても残念です。合掌。



 追記

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 これは約20年前に体験した、スウェントラさんのご自宅での演奏風景(自身の Website からコピーしてきたので、画質が悪い。ちゃんとスキャンし直さなくては、、、)。スアール・アグンのライブは、昨年、目黒のパーシモンで観たのが最後になってしまった。お邪魔かと思って、あの時は挨拶しにも行かなかったが、最後にもう一度お会いしておけばよかった。







by desertjazz | 2018-05-10 21:15 | 音 - Music
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