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Dubai / Maroc 2010 (11)

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 マラケシュでゲンブリを買った。

 旅先でいつも悩ましく思うのは土産のこと。一応、家族、友人、知人らへの土産を探してみるが、大抵は見つからない。良いものがあったと一瞬思っても、店に何度か通って再考しているうちに、最初の印象が勘違いであったことに気がつく。

 若い娘たちに「何が欲しい?」と問うても、返ってくるのは「旅の土産話が聞きたい」「写真が見たい」「何もいらない。無事に帰ってきて」という言葉ばかり。質問も野暮だが、売られている土産物の詰まらなさ、土産を選ぶ苦労を、案外皆分かっているようだ。

 折角の旅で悩むくらいだったら、最初から探さない方が賢明。実際、旅の記念に自分へ何かと思うが、やはり欲しいものは滅多に見つからない。そこで、いつからだったか、楽器をひとつ買ってくることを始めた。それも豪華一点主義で、本物を。

 カラハリ砂漠では、ブッシュマンが実際に使っていたデング(親指ピアノ)を譲ってもらった。ジンバブウェのハラレでは、アンティークショップに飾られていたンビーラ(親指ピアノ)の3台揃いを入手。ハワイのホノルルでは、ウクレレ専門店で 1000ドルする Kamaka を購入。ブラジルのリオでは、専門の楽器店でカバキーニョを買った。その都度、もう一生来ることはないだろうと考え、頑張って一番良いものを手に入れるようにしている。

 楽器を選んだのには理由がいくつかある。楽器はただの実用品であるだけでなく、ものとしての美しさも兼ね備えているので、飾っておいても楽しい気持ちになる。また、たとえ正しく弾けなくても、適当に音を出しているだけで、その音色が心地よい。部屋の片隅にころがしておくと、遊びに来た客人が弾いて遊んでくれる。そんな「ひまつぶし」(copyright : サカキマンゴー)も楽しい。

 マラケシュを散策していて、ウードやゲンブリが売られているのに気づいた。試しに値段を聞いてみると、想像したより安い。最初の言い値は、大きなもので DH1200〜700、それより少し小振りのもの(中型としておこう)で DH 900〜600、小さなもので DH300。値切ればもっと安くなりそうだ。そこで10店ほど訪ね歩いて物色。デザイン、加工、仕上げ、色、音色、傷、等々をチェックしながら何十本も見た中で、たった一本だけ気に入るものが見つかった。

 買ったのは中型のタイプ。一本木のくり抜きで、ラクダ皮の貼付けにも釘1本使われていない。余計な装飾もなく、正に完璧な一本。本当なら Orchestra National de Barbes のCDジャケで見慣れた大型が欲しかったのだが、決定的に満足できるものがなかった。結果、これで良かったのだろう。大きいと日本まで持ち帰るのに苦労しそうだったし、遊びがてらつま弾くには小さい方が抱きやすい。

 ところで、買った楽器をゲンブリと書いてきたが、正確にはゲンブリではないはず。大きく角型のものだけがゲンブリだと思っていた。そう尋ねると、同意して大型以外を別の名前で呼ぶ売り手もいる。しかし、逆に中型がゲンブリだと言い、大きい方をまた別の名前で呼ぶ男もいた。確認すべきだったのだろうが、面倒で聞き流した。そのうちに調べることとしよう。

 外国で弦楽器を買う際には、必ず予備弦もつけてもらう。弾けもしないくせに。今回も3本ただでもらってきた。原材料についても教えてくれたが、それが何だったかは、もう忘れてしまった。何かと無精のまま過ごしていたので、まあいいか。「張り直すときには、15分くらい水に浸けてから」と教えられたことだけははっきり覚えている。それと弾き方も。

 時々、部屋でポロポロと鳴らして、「ひまつぶし」。やっぱり生音の響きは心地よい。




 PS. ゲンブリを持つと 'Stand By Me' を弾き始める奴が多い。流行なのか?





by desertjazz | 2010-12-11 11:00 | 旅 - Abroad

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Majemite Jaboro "The Ikoyi Prison Narratives: The Spiritualism and Political Philosophy of Fela Kuti" (Lulu, 2009)


 昨年見つけてから気になっていたフェラ・クティに関する書籍。Amazon.com にオーダーしていたものが、11/30 に Bruce Springsteen "The Promise" セットと一緒に届き、パラパラ捲っているうちに4日でさっと一読。英語ができる人ならば1日かからずに読めるだろう。以下、簡単な雑感メモ。


 表題からは一体どんな本か掴みかねたのだが、読んでみたらフェラ・クティの新しい伝記本だった。フェラの側近(Priest)としてカラクタ共和国で長く過ごした著者が、1993年にフェラと一緒に逮捕拘留された際、留置所でフェラが著者に語った内容をベースに書かれている。そのため、これまで聞き及んだ記憶のないことがらやちょっとしたエピソードが多いように感じられた。ただし、どれだけ新事実が紹介されているかまでは自信がない。


△ 幼少時から死に至るまで編年体でフェラの生涯を辿っている。時代ごとに国内/国際政治動向や社会状況を概観し、それらがフェラ・クティの思考や音楽にどういった影響を与えたかを解説している。

△ 若い頃はタバコを嫌っていた。一時はヘロインやマリファナなどあらゆるものに手を染めていたが、後年、性的能力に悪影響を与えるのでマリファナとタバコを除く一切を止めた。

△ ヨルバ語とブロークンイングリッシュのミックスで歌うのは、サンドラ・スミス Sandra Smith からのアドバイスによる。

△ 大きな転機となったのは1981年。エジプト神話などに関連する文献から影響を受け、音楽的にも新たなフェイズに移行。そのことを明らかにさせるために、バンド名を Africa 70 から Egypt 80 に変更した。その直前、行き詰まって自殺を考えたことも書かれている。

△ 80年代以降は歌詞分析が細かくなされている。このことは、マイケル・ヴィール Michael Veal の著作 "Fela: The Life and Times of an African Musical Icon" と共通している。

△ フェラの独特なおしゃれ感覚も紹介。700本以上のぴっちりしたパンツと500足以上の靴を持っていたという。

△ カラクタ共和国とシラインでの1週間について、非常にこと細かく書かれている。特にナイジェリア/ヨルバの民族宗教やエジプト神話に由来する信仰に基づいた生み出された仕来りや生活振りが興味深い。

△ 1993年、フェラがむち打ちを指示したために死者が出たこと、その後に警察に連行されたこと、いかにして解放されたか、そうした事件の顛末についても詳述している。この事件の当事者のひとりである著者がフェラとともに勾留された経験がこの本が生まれるきかっけとなった。


 最も印象に残ったのは、フェラがスピリチュアリズムに傾倒していった様子である。最初、表紙がエジプトのピラミッドとスフィンクスであるのを不思議に思ったが、これは著者がフェラへのエジプト思想の影響を重視した顕われなのだろう。実際この本は、ヨルバの出自がエジプトにあるという考えを紹介することから始めている。

 しかし、スペルに共通部分のある無関係な言葉を関連づけてしまう強引さでもって、事件や世相を解釈していたのは、果たしてどうなのだろう。かなり危ない思想に思えるのだが…。



 この本と並行して、カプシチンスキの『黒檀』(河出書房新社)を読んでいた。その中の一編「ぼくの横町、一九六七年(ナイジェリア編)」。ラゴスの自宅の部屋荒らしに悩む著者(ポーランド人記者)が、地元民の勧めで魔除けをほどこした(雄鶏の白い羽の一束を買って、戸口の上に結びつけただけ)。すると、「物取りは、ぴたりと止まった。」という。ナイジェリア人が信じる民間信仰を疑ってはいけないのかも知れない。




(続く)





by desertjazz | 2010-12-10 19:00 | 本 - Readings

Dubai / Maroc 2010 (10)

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 レッガーダのルーツはモロッコにある。マラケシュではそんなこともすっかり忘れてしまっていた。モロッコの民衆が愛し、モロッコのディアスポラたちを支える音楽。しかしそれは、モロッコ北部、例えばカサブランカやラバト以北の雰囲気に通じるものなのではないだろうか。アーバン・ミュージックと言っていいのかも知れない。レッガーダがモロッコ音楽のひとつであることを忘れていたのは、それがマラケシュの空気とは共振しにくいからなのか。少なくともスークの静けさ/穏やかさには似つかわしくないように感じた。

 レッガーダは断然面白い。一発でトランス気分にさせてくれる、この上なく強烈なパーティー・ミュージック。しかしそれは、あくまでもモロッコ大衆のためのローカル・ミュージック。アジアの片隅から来た異邦人が飢えるほどに必要とするような音楽ではないと思う。だが、ジャラルだけは例外、特別な存在である。そんなローカル性の観念さえ打破する破壊力を持っている。一度でいいから彼のライブを体感してみたいものだ。

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 マラケシュの人々は何を聴いているのだろう。並ぶアイテム数が一番多いのは、マリカ Malika El Marrakechia 。確かに上手い歌い手だ。店員に「ナンバーワンは?」と尋ねて教えられたのは、ファイヴ・スターズ Five Stars 。こちらも多々取り揃えられていて、聴いてみるとノリがいい。だが、「マラケシュのマリカ様」にしても「カサブランカのクールファイブ」にしても、所詮はローカル・ミュージック。それもワールド・ミュージックになり得ないローカル・ミュージック。日本人が何かを語ることは不遜に過ぎる。

 音楽が生まれるのにも、音楽を聴く気分にも、土地それぞれの風土の影響が大きい。マラケシュの光景を思い返し、その土地の気分に合っていると思えるのは、やはりシャービとグナワだ。そして、辛うじてアラブアンダルース音楽も。買って帰ったシャービやアラブアンダルース音楽のCDには強く惹かれるものがいくつかあった。アラビア表記で読めないものもあったが、少し調べてみる価値はありそうだ。

 夜、あたりがすっかり暗くなると、ある程度高級なレストランやホテルに、ゲンブリをつま弾くグナワの楽士が現れる。それは店や宿がアレンジしたものなのか、ただの流しの男なのか。一瞬前まで静寂だった空間に響く音の心地よさに酔ったり、少し気の抜けた演奏に聞こえたり。贅沢な時間の過ごし方には違いない。けれども、もっと本格的な演奏があるのではないか、そんな楽士に出会いたい。より贅沢な願いが頭に思い浮かび始める。





by desertjazz | 2010-12-10 10:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (9) : Hassan El Berkani_d0010432_2075822.jpg

・ Hassan El Berkani "Live a Paris : Reggada Non Stop!" (Fassiphone CD FES 116)
・ Hassan El Berkani "Rahon Jayine" (EMM 32-138-09)

 ライ、シャービ、レッガーダなどマグレブ音楽を扱うCDショップの雰囲気が好きだ。仲間同士集まって笑顔でガヤガヤ語らったり、大音量で割れて流れる音楽に身を揺すらせたり、気になるディスクを店員に手渡してあれこれ試聴したり。そう、パリ、マルセイユと同様、ここマラケシュでも全てのCDが試聴可能だった。フィルムをはぎ取る仕草も全く一緒だ。自分もそんな輪に割り込んで、あれこれ聴かせてもらい、1枚あたり数十秒でお気に入りかどうかを判断していく。

 レッガーダの情報なんてほとんど皆無。そんな音楽CDを買う判断基準は、店員のお薦め、ジャケットの雰囲気、試聴してみた感想、等々。しかし、片言のフランス語でのやり取りは煩わしくてなかなか通じないし、山とあるディスクの試聴を繰り返すのも結構面倒だ。気がつけば「これも聴かせて」と日本語で済ませている。

 突然買い込み始めたアジアからの珍客に興味を示して、次々と別のアイテムを薦めてくるオヤジや店番の若者に巡り会えたときは幸運。しかし大抵は客が途切れないので、私ひとりに構ってもらうのは無理な相談だ。そうなると後は自分のカンあるのみ。でも大丈夫。どれが売れ線かはアイテムの並べ方を見ただけで一発で分かる。一番推しは、手の届きやすい位置にディスプレイされていたり、大量に平積みされているのが普通のこと。

 ハッサン・エル・ベルカニ Hassan El Berkani がビッグネームのひとりであることも、レッガーダと出会った瞬間、そんな風にして飲み込めた。

 4年前に最初に買った彼のCDは "Live a Paris : Reggada Non Stop!" しかし聴いてみると期待に反して面白くない。あまりに金太郎飴的な展開なのだ。その後も彼の作品は頻繁に目にするものの、毎度パスしてきた。

 マラケシュでは、"Rahon Jayine" というハッサン・ベルカニの見たことのないアルバムを見つけた(Fassiphone ではなく、EMM - Euro Master Music 盤で、このレーベルはバルベスにも店舗があった)。試しに買って聴いてみたら、これがいい! 正統レッガーダ(?)〜最新型シャービ〜モロカン・ラップといった、浮き立つようなサウンドのショーケース。ハッサン・エル・ベルカニ、見直した。その人気の高さが少しだけ理解できたか。

 ハッサン・エル・ベルカニ Hassan El Berkani / حسان البركاني の出身はモロッコ北東、ほとんどアルジェリア国境に近いベルカン Berkane の生まれ。13歳のときにはすでに結婚式などの場で歌っていたという。1991年にフランスに移り住み、Cheb Hasni、Cheb Mami、Cheb Bilal などのライ・シンガーと交流。やがてレッガーダを代表する歌手のひとりとして人気を博する。

 ベビーフェイスの笑顔に似合わない(?)低く太い男性的な声と、ライタ(笛)やウーレーション(ユーユー)が響き渡る強烈なレッガーダが彼の特質だろう。公式サイトがあり、その充実度からも彼の大物振りが伝わってくる。





by desertjazz | 2010-12-09 09:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (8) : Rayan

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 ファッシフォン Fassiphone のアーティストで好きなのは、ジャラル Jalal El Hamdaoui を別格として、次はバッカル Bakr、そしてシェブ・ラヤン Cheb Rayan。実はこの3者、共同制作も多いのだが、それぞれのリーダー作の異なる個性に惹かれている。脳天直撃トランシーなレッガーダを爆発させるジャラル、レッガーダの極上キラーチューン連発するバッカル、バラエティー豊かなスタイルのポップで聴かせるラヤン。最近のアルバムのトータリティーでは、もしかするとラヤンが一番か。なので、マラケシュを離れる前日にラヤンの2枚を新たに見つけられたのは幸運だった。

・ Cheb Rayan "Yalemmima Ferhi"
・ Rima & Rayan "Dana Dana"

 シェブ・ラヤン Cheb Rayan / الشاب ريان(本名 Berroho Othman)。モロッコ北部、タンジェ生まれのライ・シンガー(1980年2月18日生まれ)。アルジェリアのシェブ・ハスニに憧れて歌手を目指し、ウンム・クルスームからも大きな影響を受けているという。リーマ Rima とデュエットした 'Dana Dana' がスマッシュヒットし、その後マグレブ圏での人気を高めるに至る。

 経歴を要約するとこうなるが、聴いて連想するのはハスニよりもシェブ・マミ。マグレブに限定されないインターナショナル・ポップとしての大きな魅力を感じる。

 "Yalemmima Ferhi" は全曲自身の書き下ろしで、アレンジャーとしてジャラル(2曲)とバッカル(3曲)が参加。リーマとの双頭アルバム "Dana Dana" は、彼をスターダムにのし挙げたそのタイトルチューンが冒頭に収録されている。'1, 2, 3 Soleils' を模したかのようなエレクトロ・オーケストレーションなど、多彩なアレンジも聴きどころ。

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・ Rayan "Ma Chérie ..."

 3年前に入手したアルバム(データベースで確認すると購入日は2007年11月8日)。作はジャラル4曲、ラヤン6曲。ジャラルは全トラックのアレンジも担当し、冒頭の 'Golou l'mama' ではシンガーとしてもフューチャーされている。続く2トラック目はリーマとの再演(?)。

 "Dana Dana" はまだリーマの方が役者が上といった印象だが、"Yalemmima Ferhi" と "Ma Chérie ..." の2作はとにかく素晴らしい。レッガーダ、バングラ、ラガ、クワイト、ラテンの祝祭、そしてしっとり歌い込まれるライ。正直、声そのものにはさほど魅力を感じない。ハレド、ハスニ、マミをいいとこ取りし、サウンドスタイルのボーダーから拡散していく雑食性旺盛なダンス・チューンが彼の持ち味。そんなサイバー・ポップがもたらすパーティー気分に心を許すのも悪くない。





by desertjazz | 2010-12-08 08:00 | 旅 - Abroad

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 今回の旅は特に音楽を目的としたものではなかった。もちろん当地でシャービやレッガーダなどのローカルな音楽にたっぷり浸る機会があれば申し分ない。しかし、数ヶ月前から探ったものの、マラケシュもカサブランカもラバトもフェズもイベントやライブの情報は皆無。実際マラケシュに入ってからも、特別なライブスペースなどはないという話だった。

 マラケシュには6泊滞在したが、おかげでひたすらのんびり過ごすことになる。本気でレコード探しをすることはなく、CDショップに出向いたのも、ようやくマラケシュを離れる前々日になってから。自分がモロッコの音楽には疎いため、なおさら足が向かなかったということもある。

 ジェマア・エル・フナ広場には、ドライフルーツ/デーツ屋やジュース屋と並んでCDショップが2つ、また広場の周囲には5〜6店が居並ぶ。これらの店を覗いてみて、まず目につくのはファッシフォン Fassiphone 盤の多さ。フランスでレッガーダを「発見」し好きになったアーティストの未入手盤や、ジャケからなにか匂い立つものを感じた作品などに加えて、Kadim Al Sahir、Samira Said、Elissa といった定番どころも購入。まあ、1枚200円なら聴いてみようかと思った次第である。

・ Kadim Al Sahir " (unknown) " (2009)
・ Samira Said "The Best of Samira Said" (2010)
・ Elissa "Tesadae Bimin" (2009)

 しかしこうした大物たちの作品がファッシフォンからリリースされているのは、一体どういった契約になっているのだろう(Cheb Mami や Dahmane El Harrachi など古い世代の大物もぞろぞろ)。ROTANA (www.rotana.net) とライセンス契約とクレジットされているが。謎だ。

 もっと謎なのが1枚20ディルハム(約200円)という安さ。このベルギーのレーベルの同じCD、バルベス(パリ)やベルザンス(マルセイユ)で買うのとは数分の1の値段(フランスでは1枚1000円程度する)。どう見ても正規盤っぽいし、10枚買ったら1枚サービスしてくれたのもフランスで買ったときと一緒。やっぱり謎だ。

 だが、よーく見ると盤面やインレイには Casablanca や Fes といった文字が印刷されている。その印刷もフランスで流通しているCDに較べると明らかに質が落ちる。モロッコのファッシフォンがコピー生産しているということなのか。インレイの細かなデザインと見開きのスリーブ、そしてフィルムでシールドされていることから、ブートではないと思う。しかし、モロッコにファッシフォンのブランチがあるという話は聞いたことがない。ますます謎だ。

 いずれにしても、ちょっとばかり聴いて楽しむ分には、これで十分だろう。

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 Samira Said はケバイ時代のディスクも1枚購入。残念ながら CD-R。



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 CD-R ならば、これもマラケシュで買ったもの。Dahmane El Harrachi のCDはフランスで見つける度に買っているが、このアルバムはこれまで聴いた中でベストなのではないだろうか。冒頭の 'Ya Rayah' がとりわけ素晴らしい。(このディスク、El Sur あたりに入ってきたことがあったかも知れない。それは自分がレコードをほとんど買わなくなっていた時期だと思うので、正確なことは不明。)





by desertjazz | 2010-12-07 07:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (6)

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11/20 (Sat)

 鉄道駅からタクシーでメディナへ。西側の門を抜けてすぐ、Dar Moha の近くのホテルにチェックイン。日本から結構な長旅だった。軽く夕食を取ろうということになり、早速ジェマア・エル・フナ広場 Place Djemaa el Fna まで出かける。

「この広場こそがマラケッシュの中心であり、わたしがこの邑に期待していたもののすべてであった。」
「夕暮れから夜にかけての広場は、まさに驚異そのものを体現している。」

 ーーー 四方田犬彦『モロッコ流謫』P.115

 旅の直前に再読した四方田のエッセイは、ジェマア・エル・フナ広場の妖気と活力を感じさせる見事な情景描写で、私の期待も自然と高まる。辿り着いた広場は、屋台/売店のエリアと大道芸のエリアとにほぼ二分されている。個性豊かな大道芸、グナワやシャービの音楽といった、広場の楽しみの数々は後日にまわして、今夜は屋台で腹ごしらえ。

 執拗な客引きを振り切り、適当に座ってハリラ(スープ)やブロシェット(串焼き)などを試す。だが、それらは感動を誘うようなものではない。何かが足りない味なのだ。もっと足りないのはアルコール。ビールすら飲めないことに猛烈な飢餓感がつのる。また、周囲を見回しても同じ料理を出す店ばかり。同じ屋台村ならば、アジア、例えばタイやインドネシアのそれの方が数十倍楽しい。

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 それでも、何とはない周囲の熱気が自身に移り込み、微かな興奮を覚える。向こうからはカルカベやダルブッかの混沌としたビートが響いてくる。この広場の神髄はやはり暗闇の中で繰り広げられる芸と音楽なのだろう。

 その後も滞在中に幾度か食事のために広場まで繰り出した。しかし今度は屋台ではなく、広場を取り囲むレストランに席を取り、そして似たような料理を注文。屋台の群から溢れ出る光と煙はまるで沸騰しているかのよう。眺めていると不思議な安らぎも感じる。一方で同時に抱くのは補いようのない欠落感。マラケシュの料理はアルコールとの相性が断然良いと思う。だが、この街についてそう語るのは、野暮なことなのだろう。

(トップの写真は 11/23 に撮影)





by desertjazz | 2010-12-06 06:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (5)

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11/20 (Sat)

 18時半、定刻より15分遅れでマラケシュ駅到着。とても清潔で奇麗な駅舎、というのが第一印象。ダカールやバマコの駅のみすぼらしさなどとは較べるまでもない。やはりここはヨーロッパか。

 頼んでおいた車を探しに外に出る。途端にタクシードライバーたちが次々寄ってくる。しかしそれは聞いていたほど鬱陶しいものではない。同じアフリカでも、ダカールのヨフ空港で取り囲まれたドライバーとガイドの数に較べたら可愛いものだ。そんな一事にもアフリカ的なるものの薄さを感じる。

 マラケシュはちょうど雨上がりらしく、まだ濡れた路面に光が反射して、その中に駅の建物の美しさが映える。写真に収めたいという思いが頭をよぎるが、ここは先を急ぐことに。

 初体験の国での最初の目的地到着は夕方になりがちだ。まだ用心が肝要。未体験の土地では、自身の感覚でその危険度を察知し量る必要があると考える。1995年、ジンバブウェのハラレ初夜は、到着直後にトーマス・マプフーモのライブ情報を掴んだもののホテルに止まった。会場が郊外らしく場所が掴めなかったこともあるが、まだ自分の危険度センサーが調整できていないと考えたから。1999年、ダカール初夜には、深夜タクシーを飛ばしてチョーン・セックのライブクラブに馳せた。このときには自己の感覚を信頼でき、チョーン・セックとの立ち話まで楽しめたのだった。

 しかし、「痛い」思い出がある。1994年、メキシコシティー最初の日のこと。夕方、ホテルに辿り着いた時には、移動の疲れで意識が冴えない。それでも、初めての国への好奇心と空腹を満たす欲求から、ホテルからすぐそばの街の中央広場ソカロまで繰り出した。これが誤り。凶器をもった2人組に襲われ、殴られるという失態。血を拭って宿に戻るが、何を口に含んでも液体が頬から流れ出る。縫うという発想がなく、口元に開いた穴は2週間塞がらなかった。その傷は今も顔に残っている。


 マラケシュ滞在を存分に楽しんだ後、カサブランカに戻るためマラケシュ駅を再び訪れる。やっとこの建築物をカメラに収めることが叶った。しかし、初対面のときの印象には遠く及ばない。本当に美しい風景とは記憶の中にだけ留まるものなのかも知れない。


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by desertjazz | 2010-12-05 05:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (4)

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11/20 (Sat)

 12時50分、カサブランカのムハンマド5世空港に到着。イミグレはスムーズ。しかし荷物が全然出てこない。空港に隣接する駅から鉄道で移動する予定でいたので、少々やきもきしたが、14時発の列車の1等車に乗り込むことができた。マラケシュまで3時間15分、200ディラム(約2000円)。

 カサブランカ郊外の乗換駅(L'Oasis)まではボロの車両だったが、乗り換えた列車の座席は1室6名のコンパートメント。アメリカやカナダから一時帰国したと話す道楽子息風の、あるいはサウジアラビアからの若者が揃って、ここだけ賑やかに。シートに余裕があったので胡座をかいたら、目の前の娘が興味を示してきた。

 その列車、L'Oasis 駅には約20分遅れの到着で、そんな長閑さが残されていることに心が和む。現代の長距離移動は、飛行機と新幹線と深夜の高速バスばかりになり、何と味気ないことだろう。昔は何かと情緒があった。SLの時代にはトンネルをくぐる度に窓をしめたり。「青春18切符」を使って、深夜列車(勿論、寝台列車などではない)で東京から大阪、そして九州まで行ったりもした。

 広州行きで切符を「無くして」帰国できたこと。3日間車内に缶詰にされて北京から蘭州まで移動したこと。二度体験した昆明〜成都間の高原鉄道の絶景。中国を鉄道で巡った記憶も蘇る。

 飛行機や長距離バスに乗るのも嫌いではない。あの運ばれている感覚が気持ちよい。もしかしたら、旅が好きというよりも、ただどこかに向かって進んでいるという感覚を楽しみたくて、それで出かけているのではないかと思うことさえある。

 そんな移動感、やっぱり鉄道が一番だ。マラケシュ行きの鉄道は時速80kmくらいだろうか。新幹線よりもずっと遅いので、まだ人間の生理に合っていて、その分風景をゆったり眺められる。

 窓外を流れる風景は、どこかに似ている。少し考えて、それがパリ〜マルセイユ間の風景を連想させることに気がついた。進行する速度はまるで違うが、TGVに乗っている気分になってくる。それくらい似た田園風景だ。モロッコの土地はヨーロッパと繋がっている。そのような思いを運びながら、列車は南に下っていく。


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by desertjazz | 2010-12-04 04:00 | 旅 - Abroad

Dubai / Maroc 2010 (3)

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 ドバイではモールと空港のレコード店を覗いてみたものの、さしたる収穫はなし(CDより Blu-ray が多い)。例外はフェイルーズ Fayrouz の新作 "Eh Fi Amal" とウンム・クルスーム Umm Kulthūm の格安ボックスくらいだった。後者は、BOX 1 が16枚、BOX 2 が15枚、BOX 3 が15枚(14枚だったかも)で、それぞれ15ディルハムほど(約3400円)。3セット全部買っても1万円強なので、一瞬迷ったが見送り。たとえ買っても、重いし、聴かないだろうし、これでコンプリートでもないだろうから。いや、それ以前に、クルスームの音楽を十分理解していない者が、こういった価格破壊に反応してしまうのは、彼女に対しても彼女の歌を愛する人々に対しても失礼であるようにも思えたのだ。

 20世紀を代表するエジプト/アラブ圏の女性歌手としては、クルスームやフェイルーズ、同じくレバノンのアスマハーン Asmahan が断然有名だと思うが、ライラ・ムラード ليلى مراد ( Layla Mourad / Leila Mourad / Laila Mourad / Layla Morad ) もかなり知られた大物歌手/映画スターである。調べてみると、彼女の父親はモロッコのユダヤ人とのこと。今回マラケシュではライラ・ムラードのコンピレーションを新たに2タイトル見つけた。

・ Layla Morad "Habeb Kalbe" (Fassiphone 6111245618609, 2009)
・ Leila Mourad " (タイトル不詳) " (Marocainmedia 415-628-10, ? )

 前者はファッシフォン盤なので、入手はさほど困難ではないだろう(余りに安いのでブートかと思ったのだが、インレイなども見開きでしっかり印刷されているので、明らかに正規盤)。後者は電話番号からマラケシュのレーベルと類推される。

 彼女のCDは1999年の EMI 録音の復刻シリーズ(Virgin 盤)以来なのではないだろうか。このシリーズ、アラブ古典を手軽に楽しめるので、フランスで買い集めた。リリースからもう11年になるのか。
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・ Layla Mourad "Sanatain" (Virgin 724384836627, 1999)

 帰国してから毎夜、久し振りに彼女の歌声を楽しんでいる。たまにはこういったエジプトの古典歌謡もいい。




 入手盤は後でまとめて紹介しようかとも思ったが、一部は旅の時制に関わらずに、先行して取り上げてみることにした(音楽関連の情報もたまには挟んだ方がよいかと考えた次第)。





(追記/雑記)
by desertjazz | 2010-12-03 03:00 | 旅 - Abroad