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Fela Kuti's Very First Recordings

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 今日から3日前の3月6日、ロンドンから驚きの情報が届いた。フェラ・クティの初録音のマスターが発見され、これまで全く未発表だった2曲を含めた4トラックがリリースされるとのこと。フェラ・クティの未復刻音源や未発表の記録はまだまだあると多方面から聞いてはいたが、この知らせには正直驚いた。

(リリースの告知を見た直後に Twitter などで紹介したところ、反響が大きかったので、以下ざっくりと情報を整理しておきます。)

 フェラ・クティがロンドンの Trinity College に留学したのは 1958年、20歳の頃。親の希望は医学に進むことだったが、本人は音楽への熱意の方が強く、音楽を学ぶことに。すでにロンドンにいた友人のピアニスト Wole Bucknor からロンドンのジャズやカリブ音楽のシーンを紹介される。そして2人は Fela Ransome-Kuti and His Highlife Rakers 名義で英Melodisc に4トラック録音することに(1959年または1960年の初頭)。

 #2966 Fela's Special
 #2967 Aigana
 #2968 Highlife Rakers Calypso No.1
 #2969 Wa Ba Mi Jo Bosue

 これら4曲のうち、"Fela's Special" と "Aigana" は 78回転盤として発売された(Melodisc 1532、1960年の1月か2月のリリース)。このSP盤の音源は長年幻のままだったが、2014年に英Soundway の CD "Highlife On The Move" (SNDWCD060) により遂に初復刻された。一方、残る2曲はレコードとしてリリースされることはなかった。遠藤斗志也さんのディスコグラフィーに以前より曲名やマトリクス・ナンバーが記載されており、録音されたことは確か。しかしレコードがプレスされることがなかったと伝えられてきた。なので、まさか聴ける日が来るとは思っていなかった。データとしては記録が残っていても、肝心の録音自体は失われたに違いないと思い込んでいた。

 しかし、それが存在したのだ!

 果たしてどんな演奏なのだろう。"Fela's Special" と "Aigana" も割とオーソドックスなハイライフ。前者はフェラ・クティが初めて書いた楽曲とみなされているもの。翌年結婚するレミ・テイラー Remi Taylor への恋心を歌ったナンバーだそうだ。後者は先日亡くなったハイライフの巨人ヴィクター・オライヤ Victor Olaiya の1957年のヒット曲。なので未発表だった2曲もハイライフ的な楽曲であることは間違いないだろう。"Highlife Rakers Calypso No.1" はタイトル通りずばりカリプソ・チューンかも知れない。当時のフェラ・クティのグループは、リズム隊はナイジェリア人、ホーンズはジャマイカ人が主体だったようだ。"Fela's Special" は3〜4管程度の編成でトランペットがダブルのようにも聞こえるので、一人はフェラ・クティだろうと思った。しかし、フェラ・クティがトランペットを演奏するようになったのは、1960年に Koola Lobitos を(再)結成してからとも言われているので、Melodisc 録音でのフェラの担当はヴォーカルだけだったと推測される。

(Koola Lobitos というバンド名は1950年代末にすでに使っていたようなので、ほぼ同じグループが、Koola Lobitos、Highlife Rakers、さらには Fela Ransome-Kuti Quintet といった様々な名前を冠していた可能性も考えられる。ちなみに Koola Lobitos は Cool Cats のヨルバ語読み。Victor Olaiya の率いたバンドが Cool Cats だったので、そんなところにもフェラ・クティのヴィクターへの憧れが感じられる。)

 フェラ・クティの生涯初録音、Melodisc への4トラックを今回リリースするのは、イギリスの Cadillac Jazz。Cadillac は 1973年に設立されたジャズ・レーベルだ。Mike Westbrook、Stan Tracey、Mike Osborne、David Murray、そして亡命先のロンドンでも活躍した南アのサッスク奏者 Dudu Pukwana などをリリースしている。David Murray の代表作のひとつ "The London Concert" も出しているので、長年のジャズ・ファンにはお馴染みのレーベルだろう。そんな Cadillac がフェラ・クティを発掘/復刻することになった経緯にも興味を覚える。

 これらの4トラックは、4/18 の Rerods Store Day にイギリス限定で、10インチ盤のフォーマットで発売されるとのこと。だが、しばらく待てば日本にいても容易に購入できるようになるのではないだろうか? 今から実際の音を聴くのが楽しみだ。

 ・ Facebook - Cadillac Jazz 
 ・ Bandcamp - Cadillac

 さて、Melodisc 録音の全貌まで明かされるとなると、次は RK の全容解明ですね。幻の RK1(フェラ・クティの最初の7インチ)は果たして存在するのか? (長年見つからなかった RK レーベルのうちの1枚は確かオランダの蚤の市で発見されたんでしたっけ? 記憶違いだったらごめんなさい。)



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 追記:コロナウイルス流行の影響で RSD 延期に伴い、このレコードの発売も6月10日に延期となりました。(2020/03/18)






by desertjazz | 2020-03-09 15:00 | 音 - Africa

映画『ナガのドラム』


 今週土日に九州で計画していたフィールド・レコーディングが延期になったので(コロナの影響ではなく、天候不順のため)、昨日2月29日(土)の夕方、「ナガのドラム」上映会(hako gallery)へと予定変更。井口寛さんが制作された映画『ナガのドラム』をやっと観ることができた。

 ミャンマー(ビルマ)とインドの国境をまたぐ土地に暮らす民族ナガ、そのミャンマー側のある村で行われたドラムの制作過程を丁寧に追ったドキュメント。着眼点が良く、これは貴重な記録だと思う。

 特に予備知識もなく観に行ったのだが、まず驚かされたのはドラムの巨大さ。優に10mはあるだろうか。一種のスリット・ドラムと言って良いと思うが、似た系統のナイジェリアのジャイアント・コンガ(Femi Kuti や Seun Kuti のステージでもおなじみ)よりも遥かに大きい。バリ島の巨竹ガムラン、ジェゴグでも最大4m程度だ。これほどバカでかいドラムを必要とするには、何らかの理由や人々のこだわりがあるのかと思いながら映像を眺めていた。

 ノミを打ち込む時や運搬する時の労働歌のような唱和も印象的だった。ちょっとピグミーのコーラスなどを連想させるものがある。夜通し行われる「祭り」は、かつてのブッシュマンとの体験(トランス・ダンス)を想起させるものだったし、ドラムに木の棒を打ち付ける演奏法は、スペイン・バスクのチャラパルタとの共通点も感じさせた。世界の音は繋がっているのだなと改めて思う。

 作業の様子、人々の表情、森や集落の情景もとても良かった。カメラが的確に映像を捉えている証拠だろう。映像加工、編集にも制作者のこだわりが随所に感じられた。ナレーションの声もいいし(スーパーは極力排除した分だけ映像を味わえる。ただ時々キーワードが頭に入って来なかったのは残念)。条件の悪い中でこれだけの記録をなし、1本の作品にまとめ上げたのは(しかも一人で)見事だ。

 もちろん疑問点もある。ひとつは完成し小屋に納められたドラムの全貌と細部を見せ切っていないように思ったこと。時間的都合で撮影できなかったのか、大きすぎてレンズに収まらなかったのか、ドラムの周りに人が多すぎて望ましい撮影が不可能だったのか、制作・移動の過程で十分に見せたと判断したからなのか?

 いや、恐らく取材の過程で井口さんの興味の対象は、ドラムからそれを作る人々へ移って行ったのではないだろうか。この映像作品の主人公はドラムでありながら、真の主役はナガの人々なのだろう。その証拠に、自分もナガの人々の暮らしぶりを直に見てみたくなっている。そんなことも考えた。 


映画『ナガのドラム』_d0010432_17201022.jpg






by desertjazz | 2020-03-01 17:00 | 音 - Music
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