今回インドネシアの旅で訪れたレコード店の紹介、ジョグジャカルタの次はソロ。でもその前に、ロカナンタの博物館について触れておこう。
先に書いた通り、ジャワ島のソロに行くことを決めてから、ソロには「インドネシア最初の国営レコード会社」ロカナンタ Lokananta があったことを思い出した。実際 Google Maps で検索するとロカナンタの博物館が出てくる。場所も宿からそれほど遠くない。これは見逃せないと思い、旅の途中にも詳しい方々に連絡してご教示いただき、訪ねていくことにした。
場所はソロの中心エリアからは北西方向に離れていて、ソロを東西に走る鉄道の西側の Purwosari 駅の裏手(北側)あたり。散歩がてら宿からブラブラ歩くこと小1時間、途中でフルーツ屋に寄ったり、ブランチを食べたりしながら。
博物館はすぐに見つかった。ロカナンタという名前から何となく古く寂れた建物を想像していたのだが、それは全く外れた。小規模なモールのような一角にあり、とてもキレイだったので、建てられてからそれほど経っていないのではないだろうか。
まず目に飛び込んでくるのは赤色と黄色でペイントされたロカナンタの宣伝カーだ。ロカナンタのB氏との待ち合わせ時刻までは少し時間があったので、周囲を一周り。裏に回ってみるとスタジオがあり、博物館の隣にはレコード店 Lokananta Record Store があった(この店については後述)。そうした写真を撮っていると警備員らしき若い男に止められた。なんと敷地内は撮影禁止だという。この後やって来たB氏によると、カメラで撮るには撮影許可証がいるとのこと。そこでその書類を作ることにしたのだが、何とも形式ばった書類であることに少し戸惑い。そこまで必要なのか? これで安心したのだが、それでも博物館の中はカメラでの撮影が禁止で、スマートフォンなら構わないとのことだった。
(翌日、ソロの王家が経営する立派なレストランで食事したのだけれど、この時もカメラは NG、スマートフォンは OK だった。こんなことはジョグジャカルタではなかったのに。ソロの街ではそうしたしきたりなのだろうか?)
さてB氏に誘われて博物館の中へ。入場料 70000ルピア(約700円)。一瞬高いと思ったが、展示内容を見て納得した。ガイドに導かれ、彼女の丁寧な説明を聞きながら(インドネシア語なので、もちろん分からない)10室ほどを巡る。ロカナンタの歴史の部屋、ブンガワン・ソロの部屋、レコードを展示する部屋、アーカイブスなど。どの展示も実に美しくレイアウトされていて、それらを眺めているだけで楽しくなってくる。ブンガワン・ソロのコーナーはこの曲を題材に、どのようにしてレコードが作られるか、作曲〜録音〜ミックス〜プレス〜販売といった流れを説明している。アーカイブスの棚に並んだマスターテープ数百箱は壮観なのだが、温度と湿度の管理がなされているのか心配になった。最後に特別展のコーナーへ。ここは毎年内容が変わるらしく、今は 1960年代のポップスに焦点を当てた展示がなされていた。
一巡りして伝わってくるのは、ロカナンタというレコード・レーベルの規模の大きさと、そこが生み出した作品群の豊富さだ。そしてグサンとワルジーナの偉大さ。ブンガワン・ソロのコーナーでは、グサンが作曲し、ワルジーナが歌入れをするイラストが描かれていて、またアーカイブでもワルジナの名曲が流れる。ロカナンタではこの2人が2本柱だったことが伝わってくる。
意外に感じたのは、博物館には若い人たちばかり、それも女性が多く来ていたことだった。B氏によると、今でもクロンチョンは若者たちにも人気があるという。また彼らはスマートフォンで動画を撮るのが楽しいのですよとも話してくれた。確かに誰もが熱心に記念写真や動画を撮り続けていた。若い世代もこうした音楽遺産に関心を持ち続けることはとても良いことだろう。
見学は1日に数回行われているようで、毎回2時間コース。最初の1時間がガイド付き、残りの1時間は同じコースを自分のペースでもう一度巡れるというということだった。一周した後にB氏から「どうしますか?」と訪ねられ、もうしばらくゆっくり見て回りたい気持ちもあったけれど、今回の旅はなるべく疲れることはしない方針だったので見送った。
博物館の中には売店もあったが、Tシャツやトートバッグ、ステッカーくらいしか置いてない。訪れた記念にデザインのかっこいいTシャツと特別展の公式本(インドネシア語版と英語版があり、後者の方が高く 250000ルピアもした)を購入。以前は来場者から注文を受け、アーカイブの音源を CD-R にするという、オーダーメイド販売を行なっていたそうなのだが、アーカイブの担当者が代わったこともあり、残念ながら今は CD-R の製作・販売は行なっていないという。また、新作のレコーディングもなされていないので、外観だけ拝んだスタジオも現在は使われていないという話だった。
この後は、隣のレコード店へ。長くなったので、続きは次回。