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 ホスィン・スラウイ Houcine Slaoui のSPがまた1枚届いたので、ひとまず盤起こし。

 ホスィン・スラウイの私家版CDをリリースしたのは、彼の70回目の命日に当たる 2021年4月16日だったので、それから3年が経った。


 このCD、当初は友人・知人たちに配るだけだったのだが、ミュージック・マガジン社の知人にもお送りしたら、『ミュージック・マガジン』と『レコード・コレクターズ』の誌上でレビューしていただくことに。しかも結構大枠で取り上げていただき、MM誌では10点満点。さらに RC誌では深沢美樹さんがワールドミュージックの年間ベストの1枚に選んで下さって、驚いてしまった。

 その後も様々な方々から好評を頂戴すると同時に、「リマスターの音がいい」という感想も多くいただいた。「SPとは思えない音」でリリースできたのは、リマスタリングの結果というより、コンディションの良い盤を入手できたことが大きかったと思う。

 これまでネットで探し回って手に入れたのは、モロッコ、フランス、イスラエル、ポーランド、オーストラリアの売り手から出品されたもの。それらの多くは非常に綺麗な盤だった。これらはフランスでプレスされた後、様々な経緯で遠い国に渡ったものの、おそらく名も知らないミュージシャンのレコードだったので、ほとんど(あるいは全く)聴かずに忘れられていたのではないだろうか。 

 そのため、CD化する際には、リマスタリングも iXotope でノイズリダクション(プチプチノイズとかすかなハムの除去)し、数トラックに若干フィルターをかけただけで、イコライザーも曲中でのレベル補正もしていない。もちろんコンプなんか使っていない(盤面をクリーニングしてから盤起こしをやり直そうと考えていたのに、面倒なので仮に作ったファイルでそのまま作業をしてしまったことを思い出した。音質的にはそれで十分だったのかもしれない)。





 さて今回モロッコから届いた盤は、一番SPで聴きたかった曲を収録しているものなのだが、かなり傷が多く、大きなヒビも入っている。そのためA面はノイズと針飛びがひどい。それでもどうにか再生できたし、ヒビ割れはより重要なB面へはあまり悪影響していなかったので、少しばかりほっとした。まあ、できるだけのマスタリングはしてみよう。

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 ホスィン・スラウイのリイシューに関しては、「2枚目を出しましょう」「ヴァイナルは出さないの?」などと声をかけていただいている。自分自身も次を考えたくて、SPを見つければ大枚叩いて買い続けている。そのおかげで、新たな録音を発見したり、先のCDに収録したのより状態の良いものを手に入れたりできた。しかし、CDをもう1枚作るには、まだ曲が足りない。ならば新たなトラックは YouTube などにアップしようかと思案したりしている(アメリカとフランスの研究者のおかげで、大半の録音に関して、その録音日とスタジオが特定できたので、そうした情報も公開したいのだが)。

 実はホスィン・スラウイの他にも、いくつかの作品制作に取り組み続けているものの、私は根っからの不精者である上に、締切がないのでなかなかやる気が起こらない。そのためいずれの制作も途中で止まってしまっている。人間、不思議なもので、「締切」がないと本当にやる気が生まれない。ついつい面倒になってしまって、義務でもないので無理して作らなくてもいいんだよな、と弱気にもなってしまう。それでも、貴重な録音は世に残しておきたいという気持ちは持ち続けているのだけれど。




 それにしても、今回のSPが手元に届くまでにはひと苦労した。

 Discogs で見つけて即入金したものの、2ヶ月待っても届かない。これはおかしいと思って調べてみたら、まだ発送されていなかった。それで売り手に幾度か問い合わせしたが、それでも返答はなし。仕方なく最後の手段として先方のアカウントを停止したら(下図の通り、Discogs では4日以内に返事をしないと、買い手が売り手のアカウントを停止することができる)、やっと返事が来た。

「送料20ユーロのはずが、40ユーロで、、、」とか意味不明なことを書いてきたから、送料が高いことで嫌になって放置したのだろうか。送られてきた Tracking Number も無効だったので、これはもう諦めるしかないか・・・と思っていたところだった。それが昨日やっと厳重丁寧に梱包された箱が届いたのだった。入金から3ヶ月近く。さすがに疲れた。。。

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 そんなことより、スラウィのSPがほとんど見つからないことが一番悩ましい。ネットには滅多に出品されず、1年に1枚入手できればいい方だ。もしかしたら、もうこれ以上、世の中に出てくることはないのかもしれない。それでも彼の全録音を聴きたいと願い続けているので、これからもまめに探し続けることにしよう。







# by desertjazz | 2024-05-06 18:00 | 音 - Africa

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 マイケル・ヴィール Michael E. Veal の新著 "Living Space - John Coltrane, Miles Davis, and Free Jazz, from Analog to Digital" (Wesleyan, 2024) が先ほど届いた。刊行が早まったらしく、当初の予定より前倒しで手にできて嬉しい。

 マイケルはイェール大学 Yale University の音楽教授。彼の著作は"Fela: The Life And Times Of An African Musical Icon" (2000)、"Dub: Soundscapes and Shattered Songs in Jamaican Reggae (Music / Culture) (2007)、"Tony Allen: An Autobiography of the Master Drummer of Afrobeat" (2013、Tony Allen との共著) に次ぐ4冊目。これらのうち "Dub" は日本版『ダブ論』も出版され、さらに昨年「改訳決定版」も出た。評判が良かったのだろう。



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 早速その新著のページをめくっているところなのだが、タイトル通り、中心に取り上げられているのはジョン・コルトレーンのよう。長いコルトレーンの章の中の 111ページには、なんとこんな私家版アルバム2枚の写真も掲載されている(こうしたレコードも勿論?昔から持っているが、最近は全然聴いていない)。一体どんなことが書かれているのだろう。 フェラ・クティに関する詳細な研究書 "Fela" などは英語の不得手な自分にとってはかなり難解だったのだけれど、頑張って読んでみることにしよう。

"John Coltrane" (Ozone 21、Rec. 1963)
"John Coltrane" (J For Jazz JFJ800, Rec. 1965)

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 ご存じの通りマイケルはミュージシャンとしても活動しており、自身のアフロビート・ジャズ・バンド Aqua Ife を率いてニューヨークなどで時々ライブも行っている(いつか生で聴きたい!)。

 アルバムはこれまで4作制作しており、いずれも私の愛聴盤。中でも最初の1枚 "Afro-Kirlian Eclipse" は、コルトレーンのカバー "Sun Ship" もウエイン・ショーターのカバー "Super Nova" も素晴らしくて、史上最高のアフロビート・ジャズだと思っているのだけに、正式リリースされなかったことが残念で仕方ない(この CD-R はマイケル・ヴィール本人から頂いたもの。しかしどういった経緯だったのか全く思い出せない)。

Micheal Veal & Aqua Ife "Afro-Kirlian Eclipse"
Micheal Veal & Aqua Ife "Vol. 1" (2010)
Micheal Veal's Armillary Sphere "Anyscape" (2013)
Micheal Veal & Aqua Ife "Volume 2" (2017)

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# by desertjazz | 2024-05-04 19:00 | 本 - Readings

読書メモ:加藤文元『数学の世界史』_d0010432_19451523.jpg


 加藤文元『数学の世界史』を読了(この著者は『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』を読んで知ったのだが、この本も刺激的だった)。大部分が以前から知っていることあり、また同じ内容の繰り返しも多いので、割とさらっと読めた(それでも、最終盤の第15章で取り上げられる集合論〜多様体〜圏論にかけては全く知識を持っていないため理解を超えていたが)。

 四大文明の中で萌芽したそれぞれの数学が、時代が進むに従ってどのような花を開かせていったかを、具体的な設問を例示しながら丁寧に解説していく。数学がいかに歴史そのものとリンクしていて、さらには地域性を持って進化したかが分かりやすく描かれており、そうした過程が実に興味深い。ただ、古代ギリシャの論証数学が「運動」を否定していた(物が動くことを認めない)という意味はよく分からなかった(それがその後の長年間、ギリシャなどで数学の進化を妨げる一方で、別の形での前進をもたらすことにもなったようなのだが)。

 それにしても、一体どの様にしてこのような解法を思いついたのかと嘆息することの連続。しかしそれらも突発的な思いつきではなかったのだろう。個人的には若い頃にニュートンの微分積分の発明(この本では「発見」となっている)を知った時に知的に興奮したものだが、それにも古くからの伏線があり段階を踏んで生まれたことだと認識した。

 簡潔に書くと、「数字の数学」と「図形の数学」の間での揺れ動きが繰り返され、両者が背中合わせの概念であることから、2つが一体化することで近代の数学が完成し、さらに実体イメージの湧かない抽象的空間概念とでもいうべき論理に突き進んでいく。そんな長いストーリーを振り返ってワクワクさせられた。

 読み通して思うことは、社会や国の発展には数学(に限らず学術全般)の進化が不可欠であったということ。古来より為政者が計算術や測量などに必要な学術を振興した国ほど強くなっていったのは当然だろう。その点、今の日本は国として教育に力を入れていない(教育の無償化をせず、奨学金制度も貧弱で、大学予算もどんんどん削減する)。これでは国力は衰えるばかりだし、実際それが今加速している。政府や大企業が目先の利益しか追わないという姿勢は、取り返しのできない自滅行為だと思う。

 さて次は、ボケ防止を目的に、山本義隆『磁力と重力の発見』に戻って続きを読もうか。それとも最近復刻して話題の(超難解な)ヨハン・ルードヴィッヒ・ノイマン『量子力学の数学的基礎 新装版』に挑戦しようか。学生時代に量子力学を学んでいたので、今読んでどれだけ理解できるかにも興味がある。






# by desertjazz | 2024-04-24 19:00 | 本 - Readings

読書メモ:安岡宏和『アンチ・ドムス 熱帯雨林のマルチスピーシーズ歴史生態学』_d0010432_16483521.jpg



 安岡宏和『アンチ・ドムス 熱帯雨林のマルチスピーシーズ歴史生態学』(京都大学学術出版会、2024)読了。これは同じ著者による『バカ・ピグミーの生態人類学 アフリカ熱帯雨林の狩猟採集生活の再検討』(京都大学アフリカ地域研究資料センター、2011)の増補改訂版ということで、今年2月の出版を心待ちにしていた。

 必要を感じて、このところ手元にあるブッシュマンに関する文献を全て読み直しているのだが、視点を変えて改めて読むと重大な見落としにも相次いで気がついてなかなか興味深い。それでも、ブッシュマンについてばかり読んでいても飽きてきたので、気分転換に『アンチ・ドムス』を読み始めた。しかし研究成果と緻密な思考結果について詳細に綴られ、また脚注もポイントの小さな文字でびっしり書かれているので(全460ページ)、さすがに疲れて読むペースが上がらず、読み終えるのに結構時間がかかってしまった。


 安岡は序章で(1)狩猟採集民はずっと狩猟採集民だったのか、(2)そもそも狩猟採集民とはどのような人々なのか、という2つの設問を提示する。これはいわゆる「ワイルドヤム・クエッション」を受けてのことなのだろう。その上で、自身や同僚たちによるカメルーンの森とそこに暮らすバカ・ピグミーに関するフィールドワークをもとに、ドムス(ドメスティケーションからの造語)、ドムス化、基軸ドムス化、共生成、双主体モデル、マルチスピーシーズ歴史生態学、等の概念を提唱しながら、設問への回答を導き出していく。

 狩猟採集民に関する研究が始まった頃には、彼らは純然たる野生の自然の中で、それら(のみ)を利用して生きてきた人々と捉えられてきた。
 しかし、狩猟採集民の暮らす熱帯には手付かずの大自然など存在し得ず、人々と自然(動植物)との相互作用の結果、森もそこに生きる生物たちも影響を受けてきた(里山がそうであるように、熱帯の森も人間の手が加わることによって荒廃を避け豊かになりうる一面もあることは、近年しばしば指摘されることだ)。
 また、狩猟採集民にしても、ある程度の農耕を行う者もおり、その度合いは絶えず変化してきた。つまり、狩猟採集に頼る割合は変化し続けたはずだろうから、古代からずっと狩猟採集のみに頼っているように見える民族でも、農耕生活から狩猟採集生活に戻った可能性もあるということだ。

 安岡はこうした諸々について論理展開していくのだが、言われてみれば当たり前と感じることばかり。私は研究者ではないので、簡単なことを小難しく語られているようにも感じてしまう。厳密に論理展開するとこうなるのか(完全には理解できていない)、著者の主張は結構批判も受けそうに思える一方で、自分の中で腑に落ちる部分が多いのだから、彼のロジックは正しく、私もそれについて概ね納得しているということか、などと考えるに止まった。いや、最初のフィールド調査から森のキャンプに帯同する幸運に恵まれ、GPSや特殊な撮影機材などを駆使した規模の大きな調査に関心し、その後の精緻な論理展開に苦しみながらも頷きつつ進み、大いに刺激を受け楽しませていただいた。

(序盤に設問設定する段階や最終盤で、ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』が参照され、過去の読書がこのように結びつくのかという面白さもあった。)

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 ピグミーとブッシュマン、同じく狩猟採集民と呼ばれながらも、一方は「森の民」、もう一方は「砂漠の民」。それなのに共通点の多いことは実に興味深い。狩猟採集生活が時代や地域によって揺れ動いてきたことも共通している(そもそも「ワイルドヤム・クエッション」は、ブッシュマンに関する「カラハリ・ディベート」のピグミー版といえるものだったし。ピグミーには、主要なムブティ、エフェ、アカ、バカを含めて18の民族、ブッシュマンも大別して3語族、細かく分けるとやはり10を超える民族がいて、それぞれが、また極論すれば個人レベルで異なる生活をしているのだが、ピグミーもブッシュマンも一括りにして語ることに限界がある点にも留意すべきだろう)。

 特に興味深いことは近年の動向である。例えばボツワナのブッシュマンは 1997年以降、動物保護区の外での定住が強いられているのだが、カメルーンのバカも自然保護の名のもとで森での狩猟が制限されて(実質的にできなくなって)きているという。そこでボツワナでもカメルーンでも、自然保護派と人権擁護派の対立が深まり、着地点を見出せなくなっている。
 『アクション別フィールドワーク入門』(世界思想社、2008)を読むと、ブッシュマン研究の丸山淳子とバカ・ピグミー研究の服部志帆の2人が、どちらも両陣営の間で板挟みになっている様子が吐露されている。

 現代、森や砂漠で暮らしてきた人々にとっての問題が解決しにくくなるのにともなって、彼らを研究対象とする学者たちにとっての問題も大きくなり続けている。ボツワナでもカメルーンでも(さらにはコンゴでも)狩猟採集民をフィールド研究するには限界があるのだろう。一時期そう考えるようになり、物によっては調査が制約されたらしく読んでいて苦しくなる研究書もあった。ところがそうとも言えないようだ。

 例えば丸山淳子の『変化を生きぬくブッシュマン 開発政策と先住民運動のはざまで』(世界思想社、2011)は、野生生物が息づく砂漠を追いやられ 1000人を超える大集落で生活するブッシュマンに関する研究であり、なんとも地道なテーマかと思いながら読んだのだが。それがブッシュマンたちが新たな形の狩猟採集を生み出していく姿が生き生きと描かれていて、実に痛快な読み物だった。この著者の大逆転劇にワクワクしながら読み終えた(その後も丸山の文章を探して読んでいるが、どれもが面白い)。

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 今回読んだ安岡にしても、狩猟採集民研究に対する制約が多くなる中で、新たな研究手法を提示した点でも秀でた論考なのではないだろうか。


 カメルーンに関する研究書の中では、矢内原佑史『カメルーンにおけるヒップホップ・カルチャーの民族誌』も興味深いものだった。バカ・ピグミーに関しては『森棲みの生態誌 アフリカ熱帯林の人・自然・歴史』(京都大学学術出版会、2010)という大著2冊もある。カメルーンのピグミーについてもっと掘りだげてみたくなったので、服部志帆『森と人の共存への挑戦 カメルーンの熱帯雨林保護と狩猟採集民の生活・文化の両立に関する研究』(京都大学アフリカ地域研究資料センター、2012)も取り寄せた。次はこれを読もう。
(服部の名前は、ボニー・ヒューレット『アフリカの森の女たち 文化・進化・発達の人類学』(春風社、2020)の翻訳と挟まるコラムで知ったのだが、この本は構成が散漫でやや残念な1冊だった)。

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# by desertjazz | 2024-04-20 17:00 | 本 - Readings

New Discs : South African Piano

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 このところ、南アフリカ共和国のジャズを聴くことが増えている。それは、軽やかなサウンドが心地よいこともあるが、近年良質なリイシューが続いていて、それらを買い続けているからでもある。

 南アのジャズといえば、1964年の欧州ツアー中に亡命し、その後ロンドンのジャズシーンで大活躍した The Blue Notes の面々が真っ先に思い浮かぶ。Chris McGregor (piano)、Mongezi Feza (trumpet)、Dudu Pukwana (alto saxophone)、Johnny Dyani (bass)、Louis Moholo-Moholo (drums) といった名プレイヤーばかりだ。Dollar Brand (piano) や Hugh Masekela (Trumpet) など、アパルトヘイトから逃れてヨーロッパやアメリカで活動したミュージシャンたちも南ア・ジャズの代表格だろう(2年前に出た Dollar Brand 最初期の録音をコンパイルした "Plays Sphere Jazz" は、モンクなどからの影響が色濃い楽しい作品だった)。

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 一方で、アパルトヘイト時代にも南アに留まり続け、地道に活動したミュージシャンたちも多い。そうしたミュージシャンたちの録音の発掘/リイシューが着々と進められ、いずれもが良くて歓喜している。

 そのような南ア・ジャズ盤の中で、最近また聴いているのは、ギデオン・ンクシュマル Gideon "Mgibe" Nxumalo とテテ・ンバンビサ Tete Mbambisa という2人のピアニストの関連作品群である。




 ギデオン・ンクシュマルは、1929年ケープ州の生まれ。彼のことは 1991年にリイシューされた "Jazz Fantasia" (Kippie Moeketsi や Dudu Pukwana も参加したライブ盤)を発売直後に買って知った。そのアルバムが 2019年に再びリイシュー。さらにセカンド・アルバム "Gideon Plays" も 2021年にリイシューされた。彼のメイン楽器はピアノであるものの、マリンバなども演奏しているところも面白い。

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 彼のリーダーアルバムはこれら2枚だけと思っていたら、"Early-Mart" というもう1枚があり、これも最近リイシューされていることを知って取り急ぎ入手して聴いている。このアルバムは、The Blue Notes でも活動した後に亡くなった音楽仲間のドラマー Early Mabuza に捧げられたものなのだが、ギデオン・ンクシュマル自身もこの作品が録音・リリースされた 1970年に亡くなっている。

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  "Jazz Fantasia" (Renown, 1962)
  "Gideon Plays" (JAS Pride, 1968)
  "Early-Mart" (Soultown ,1970)



 1942年生まれのテテ・ンバンビサは、1960年代に Dudu Pukwana や Johnny Dyani らと共演してきたプレイヤー。彼がメンバーだった The Soul Jazzmen の "Inhlupeko Distress" (1969) が 2015年にリイシューされ、それ以来愛聴している。

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 彼は 1970年代に "Tete's Big Sound" と "Did You Tell Your Mother " というリーダーアルバムを2枚出しているのだが、ありがたいことにそれらもリイシューされた。

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 そして今度は、これら2枚の間の 1978年になされた未発表?録音がまとめてリリースされたものだから、またびっくり! その2枚組アルバム "African Day" を先日入手して楽しんでいるところだ。

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 テテ・ンバンビサの作品を確認しようと思って Discogs を検索したところ、彼のアルバムが近年もう2枚出ていることを知った。どちらもヨーク大学の助力のもとで制作されたものらしいのだが、プレス数が少なかったからなのか、現在では入手不可のようだ。

 それでも、1枚目の "Black Heroes" はデジタル版がネット販売されているのを見つけて、早速ダウンロードして聴いたのだが、これが実にいい。'Black Heroes' や 'Stay Cool' といった長年のレパートリーをピアノ・ソロで演奏していて、例えば Bugge Wesseltoft の "Songs" や Keith Jarrett の "The Melody At Night, With You" のを連想させるような穏やかさなのだが、そこは南ア・ジャズなので弾むような節回しが魅力だ。テテは一人静かにスタジオでピアノに向かって演奏したのだろうと思ったのだが、雰囲気の良い空気が伝わってきて、その中でかすかに響く人の声が混じる。それで、これがライブ録音であることに気がついたのだった。聴いてみたいので、もう1枚の "One For Asa" もリイシューされないだろうか?

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 そのテテさん、80歳を超えた今もお元気らしい。時々ライブも行っているようで、近影もネットで拝見することができる。

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 "Tete's Big Sound" (The Sun, 1976)
 "Did You Tell Your Mother" (The Sun, 1979)

 "Black Heroes" (JISA, 2012)
 "One For Asa" (JISA, 2017)

 "African Day" (As-Shams Music/The Sun, 2024)



 ピアノ奏者以外にも目を向けると、Winston "Mankunku" Ngozi (tenor sax) の名盤 "Yakhal' Inkomo" や、そのマンクンクも参加した The Chris Schilder Quintet Featuring Mankunku "Spring" がリイシュー。Basil Mannenberg Coetzee (tenor sax) や Kippie Moketsi (alto sax) の参加作も As-Shams Music/The Sun から次々とリイシューされている(Pat Matshikiza & Hippie Moketsi "Shona!"、Pat Matshikiza "Sikiza Matshikiza"、Lionel Pillay & Basil Mannenberg Coetzee "Shrimp Boats" など)。

 Matsuli Music などからリイシューされているこうした南ア・ジャズのアルバムは、ほとんどがヴァイナル・リリース。ジャケは丁寧な作りで、レコード盤の厚いものが多いことはいい。その一方で、クレジットが記載されていないものの多いことは不満だし、まれに傷盤(これは Matsuli 盤ではない)を手にして品質管理ができていないことにもガッカリ。

 そして、とにかく高い! 円安のせいで、それがますます加速している。「高すぎだ」とぼやき続けながらも何とか買い続けているのだけれど。

 Tete Mbambisa の "Did You Tell Your Mother " は内容がとても良いものの、元々持っていなかったのでフィジカルが欲しい。しかしリイシュー盤ですら出た時に 6000円くらいしたのでさすがに諦めたのだが、今は1万円出しても買えない。やっぱり買っておくべきだったかと思いつつ、ストリーミングで聴いている。

 渡英組のリイシューも着々と進んでいて、Dudu Pukwana などの主要ミュージシャンをフォローするだけでも一苦労だ。変わったところではイギリスのライター Chris Searle の最新評論集 "Talking The Groove: Jazz Words from the Morning Star" (Jazz in Britain, 2024) の付属 CD(2枚セット)に Chris McGregor の 1967〜1970年の未発表録音がたっぷり収録されている。共演ミュージシャンは、Mongezi Feza、Dudu Pukwana、Dave Holland、Malcolm Griffiths、Mike Osborne、John Surman、Louis Moholo、Harry Beckett、Nick Evans、Alan Skidmore、Harry Miller などという豪華さ(John Stevens、Kenny Wheeler、Trevor Watts、Tubby Hayes、Stan Tracey らの未発表録音も収録)。ただしいずれも個人蔵の音源からの復刻で、発売できるクオリティーには程遠いのが残念。

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(南ア・ジャズのリイシュー、ピアニスト以外も取り上げ始めるとキリがないので、そうした作品の紹介はまたいつか改めて。)



 リイシュー続く南アのジャズ。それを後押ししているのには、現代の南ア・ジャズが活況を呈していることも大きいだろう。

 その筆頭はンドゥドゥゾ・マカティーニ Nduduzo Makhathini だ。大手ブルーノートと契約した1作目 "Modes Of Communication: Letters From The Underworlds" も良かったが、続く "In The Spirit Of Ntu" の素晴らしかったこと。近年のジャズの中でも傑出した1枚だと思う。

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 そのンドゥドゥゾ・マカティーニがまもなく新作をリリースするので楽しみで仕方ない。彼は今話題の Shabaka Hutchings 改め Shabaka の最新作にも参加している。このアルバムもとてもいい。







# by desertjazz | 2024-04-19 14:00 | 音 - Africa

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