2009年 10月 12日
SWP releases : Tongatronics, Phil Seamen
1枚は、SWP のマイケル・ベアードが、ザンビアとジンバブウェに挟まれて流れるザンベジ川流域で、2008年に採録した親指ピアノのフィールド録音集。演奏しているのはバトンガ(トンガ人)の古老たち7人で、半世紀昔にヒュー・トレイシーが録音した音楽が現代に蘇ったかのようだ。実際彼らの世代以降は親指ピアノを演奏することがなく、マイケルが探して出会った人々だけが昔の親指ピアノの音楽を保ちもってきたらしい。コノノたちと同様に元気な爺さんたちの音楽であることにかけて、マイケルは「トンガトロニクス」と呼んで悦に入っている。
聴いて感心したのは、それぞれの個性の強さ。親指ピアノの乾いたトーンに特徴を感じるのだが、その音のくぐもらせ方だとか、バズの音色だとかいったものには、聴き覚えのないものも多くて面白い。
勝手なことを書いてしまうと、今回はサカキマンゴーさんの分析・解説を読んでみたいな(間もなくリリースされる予定の "Vol.2" と一緒に、アオラが国内盤を出すのだと思う)。
もうひとつ面白く聴けた点は、自分がカラハリ砂漠で録音してきたブッシュマンの曲とベーシック・パターンが類似しているものがいくつかあったこと。恐らくなんらかの関連性があるのだろう。
マイケルが送ってくれたもう1枚は、イギリスのジャズドラマー Phil Seamen (1926-1972) の録音集。Kenny Graham、Victor Feldman、Joe Harriott、Dizzy Reece、Stan Tracey、Jimmy Witherspoon、Ronnie Scott らとの数々のセッションが収録されていて、こちらも気に入って繰り返し聴いている。
2009年 10月 11日
Foods in Asia
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実は他にもっと美味しかったものがいくつかあった。特に旬の淡路の生ウニは絶品だったし、見たこともない京野菜を使った日本料理やイタリアンは眼も舌も大喜び(別の機会に紹介しますネ)。また、北海道から入ってくる脂がのった時鮭は焼いて食べると、パリパリした皮までもが極上の食感(時鮭は日本で一番美味しいもののひとつなのではないかとさえ思う)。京都万願寺甘とうは軽く焼いて醤油をかけるだけで死ぬほど上手いし、今が旬の秋刀魚は時々刺身にして食べている。北海道のホタテは刺身にしたり、パスタの具にしたり。最近出回っている宮城の大振りのホタテも美味しそうだなぁ。朝取りのイチジクや、岡山や山梨のピオーネは気が狂わんばかりの美味しさで、毎日のように味わっている。今年の夏は、スペイン料理やイタリア料理にも新発見の連続だった。
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社食の不味さに耐えられず、(恥ずかしながら)最近は毎日弁当を作っていっているのだけれど、始めてみるとなかなか楽しい。特別なものは作れないが、毎日3食、自分が食べたいものだけを食べられるというのは実に幸せなことだなぁ。週末の仕込みも、朝に卵や魚を焼くのも全然苦じゃない。写真は先週のもの。
最近は食べることをとても楽しんでいます。
2009年 10月 10日
奈良
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2009年 10月 09日
Yangjin Lamu
適当なカフェを探して歩いていると、チベットの店が目に入ったので、何となく店の中に入ってみた。そしたらCD試聴コーナーがあり、そこにバンジョーを抱いた若い女性の写真が目に入ったので、ここ数年バンジョーづいている自分としては気になって、何となく試聴してみたら、これがヒット! 一瞬フランス在住のベトナム人フンタンを連想させるような、まるで子守唄を聴くような心地よさ。台湾在住のチベット人女性の凛とした美しい声がまず魅力的で、彼女のチベット的民族性(フォーク性)とギターやバンジョー、マンドリンなどの少ない楽器(時折ジジェリドゥも聴こえる)による音の(欧米的な)フォーク性とのクロス具合/無国籍性も味である。
央金拉姆 Yangjin Lamu
・ "央金 - 西藏天籟女聲"(2006)
・ "DHARMA FLOWER" (2007)
2009年 10月 09日
Lo Còr de la Plana
今回観たコンサートの会場は台北の中山堂のホールで2000人以上収容する大きさ。その分だけ地声の響きが素晴らしく、マニュたちもその響きを味わいながら歌い楽しんでいる様子がうかがえた(残念ながらメンバーひとりがインフルエンザで入国できず、5人編成だったが)。特に、ブレイクした瞬間の余韻の美しさ。もちろんPAを使用し、エフェクターでディレイもかすかにかけているのだが、そうした効果もより良い方向に現われていた。
また曲ごと、あるいは連曲の構成がどれも見事なもので、毎度感心させられる。聖歌のように静謐に始まったコーラスがやがて高まっていき、ベンディールや手拍子や足踏みが加わって熱くなっていく。最後にはグナワ的なトランシーに達する。手拍子やパーカッションのパシパシとした鋭い響きが溜まらない。そしてさらに足踏みの重低音が心臓を突き上げてくる。
こうした音楽性は、マニュが様々な土地の音楽を研究し、南仏、北イタリア、さらにはジプシーやマグレブの音楽まで取り入れて組み立てていった、とてもオリジナリティーを感じさせるものだ。
このように思わせる理由は別にもある。それは音を少しいじりすぎていると感じられることだ。録音作品では、多様なゲストを招き、さらに様々なエフェクトを駆使して、彩り鮮やかな作品に仕上げていっている。その分だけ、ポリフォニーコーラスの表現するものが減じられているとは感じないのだが、コーラスの音自体がまなって聴こえてしまって仕方がない。
というのも、最新作(セカンド)"Tant Deman" の曲の録音はマスタリング前のヴァージョンとデモヴァージョンも受け取っているのだが、古いバージョンの方が良く聴こえてしまうのだ。彼らのライブのハイライトで演奏される 'La Noviota'(マルセイユでは、フロアの客たちが手をつなぎ、フロア一杯大きな輪を描いて走り回るような輪舞が起こった。オックミュージックのコミュニティー性を直に目にしたように思い感動したことを覚えている)などは、最初のヴァージョンの方が遥かに良い。コーラスもパーカッションもくっきり響いていて、とにかく気持ちがいい。彼らはもっと彼らの持ち味をストレートに表現した作品を作るべきではないかとさえ思ってしまうほどだ(ただし、彼らのライブを体験することによって、アルバム作品の素晴らしさがもっと理解できるようになり、より楽しめるようにもなった)。
今回はこの「響き」をもう一度直に身体で感じたくて、台湾まで飛んでいった。そして、それだけの価値は十分にあった。
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わずか48時間の短い台北滞在だったけれど、自分にとってはマジカルモーメンツの連続だった。とりわけ感動したのは、打ち上げの席でのこと。右隣に座っていたサム Sam Karpienia は終始上機嫌で時々歌いながら呑んでいて、自分の耳元30cmの距離で彼の生歌を楽しめたのは何とも幸せなことだった。今度は目の前に座っているマニュも、少し遅れてそれに合わせて歌い出す。そして周りにいるメンバーたちも、テーブルを叩いたり、手拍子を打ったりして、ポリフォニービートを奏でてふたりの歌を盛り上げる。つられて自分も一緒に手拍子を打ち出したのだけれど、そのときの心地よさと嬉しさといったら、ちょっと言葉にはできないくらいのものがあった。この瞬間の記憶は一生忘れられないだろう。