Genelec G One 導入記

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 ふと思いついて、フィンランド Genelec の G One を購入した。デスクトップ・スピーカーとして使う目的で。


 音素材の選択・編集や音楽のマスタリングをするために、毎度 Pro Tools を PMC や B&W のスピーカーに繋ぐのも面倒。かと言って PC ベースでヘッドホンを使って作業するのも耳が疲れる。なので、デスクトップ作業によってある程度まで音作りを追い込み、PMC のモニターで最終調整するのが望ましいのかと考えた。

 最初は 8010A を買おうとしたのだが、一般向けに G One という製品が出ていることを今さら知った。両者はほぼ同じスピーカーであるが、いくつか違いもある。G One はゲインが10dB低く、入力が XLR ではなく RCA であることなど。確かにデスクトップで聴くには 8010A の音は大きすぎるし、XLR である必要もないだろう。

 色はお馴染みのダークグレーが良いと思ったのだが、G One はダークグレーがなくて、ブラックとホワイトのみ。写真を見た限りではこのブラックの艶が気に入らず、ホワイトを選んだ。この色の方が可愛いかなとも思って。

 正直なところ、昔から Genelec の音は好きじゃない。Hi も Lo も全部聴こえ過ぎて重く感じるから。でもこのサイズのモニターとしては、これがベストなのだろう。その分だけ値段も高いのだけれど(Sound House や Rock On で購入すると4%ポイント還元、加えて今たまたま7000円キャッシュバック中だったため、合わせて実質14000円ほど安く買えた)。

 エージング目的で、Spotify 音源を ifi DAC を通して色々再生してみた。聴き親しんだ愛聴盤でもあれこれ不出来な部分に気付かされる。そこがモニターSP のポテンシャルだ。それに対して驚かされたのは Steely Dan "Gaucho" の素晴らしさだった。こんな小さなスピーカーでも完璧なバランスで鳴る。いやー、楽しいー! やっぱり "Gaucho" は究極の名盤/名録音だ!







# by desertjazz | 2023-07-22 13:00 | 音 - Music

New Disc : Baaba Maal "Being"

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 音楽雑誌エリス第39号で北中正和さんの「音楽の未来を探して 第17回 バーバ・マールの音楽から展望するワールド・ミュージックの現況」を拝読。バーバ・マールの経歴から新作 "Being" の内容に至るまで、とても参考になった。この記事の最初の方で取り上げられている Baaba Maal & Mansour Seck "Djam Leelii" (1988) は個人的にも大好きな名作。全てのアフリカ音楽のレコードの中から10枚選べと言われたら、その中に入れるんじゃないかな?

 自宅の資料整理、昨日はバーバ・マールのカセットを聴きながら、セネガル盤カセットの並べかえ。バーバ・マールは17本出てきた。でも残念ならが、北中さんの記事の中で触れられている初期の作品6本は持っていなかった。これらのカセットは 1999年と 2002年にダカールで探し集めたもので、流石にその時に80年代のカセットと出会うことは難しかった。


Baba Maal "Thiayo" (1992)
Baaba Maal présente Samba Diabare Samb et Mansour Seck "Dans Gawla" (1993)
Baba Maal "Tono" (1994)
Baaba Maal Et Le Daande Lenol "Aiwa" (1996)
Baaba Maal Et Mansour Seck "Souvenirs" (1996)
Baaba Maal "Nomad Soul" (1997)
Baaba Maal & Le Dande Lenol "Diapason des Stars 97 - Vol.1" (1997)
Baaba Maal & Le Dande Lenol "Diapason des Stars 97 - Vol.2" (1997)
Baaba Maal "Nomad Soul - 2eme Partie Musique du Monde" (1998)
Baaba Maal "L'Epopee d'El-Hadi Omar Taal" (1999)
Baaba Maal & Le Dante Leon "Live a Londres et St-Louis" (1999)
Baaba Maal & Le Dante Leon "Live a Londres et St-Louis" (1999)
Baaba Maal "Laamdo" (2000)Baaba Maal "Mi Yewnii" (2000)
Baaba Maal & le Danande Lenol "Tijaan" (2002)
Baaba Maal "Ndilane" ( ? )
Baaba Maal "Generation Nouville" ( ? )

(1990年代前半は 'Baaba' ではなく 'Baba' と綴られている。)

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 肝心の "Being" の音楽なのだが、大いに気に入った前作 "The Traveller" (2016) と同様、近年の好調ぶりを伝える仕上がりだ。この音作りは大音量で聴いたらさぞや気持ち良いことだろう。

・https://baabamaal.com

 その音楽内容については北中さんが『エリス』詳しく紹介されているので、ぜひそちらをお読みいただくとして、ここでは別のことを。

 個人的には音楽そのものと共に、バーバ・マールのモデルのようなファッションが気になって、衣装をデザインしたオルヴィ・トーマス Olubiyi Thomas について調べてみた。彼はナイジェリアのレゴス出身、スコットランド育ち。Alexander McQueen などで活動した後、2016年に独立。

・https://www.olubiyithomas.com

 超カッコいい彼の服は日本にも若干入ってきているのだが、ジャケットもパンツも10〜20万円くらいするので、とても手が出ない。

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 それにしても、最近のバーバ・マールの共演者は知らない名前ばかりだ。


(※以上、Facebook より転載。)






# by desertjazz | 2023-07-16 23:00 | 音 - Africa


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 ウガンダの独立レーベル Nyege Nyege Tapes はレーベル設立直後から注目していて、新作が出る度に試聴し、気になった LP は買っている(このレーベルは基本的に DL と LP のみのリリースで、CD は出していない)。音楽としてどれもが特別素晴らしいとまでは感じないが、極めて個性的なサウンドを楽しめる。例えば Lady Aicha & Pisko Crane's Original Fulu Miziki of Kinshasa "N'Djila Wa Mudujimu" などは、独特な D.I.Y. 感というかジャンク感を抱かせる刺激的なサウンドが面白い。


 最近出た "Nakibembe Embaire Group (Nakibembe Xylophone Troupe)" も良かった。これはウガンダ東部ブソガ王国 Busoga の小村ナキベンベ Nakibembe の巨大な木琴エンベール Embaire の演奏5トラックと、エンベールとバリのガムランのシークエンスを MIDI 制御したリミックス?を3トラック収録している。エンベールは広場に掘った穴の上に15〜25枚ほどの木の板(鍵盤)を並べて5〜6人くらいの男たちが演奏する。このエンベールのプリミティブなサウンドが実にいいのだ。演奏形態や音色から連想するバリの木琴と比較すれば、巨竹ガムランのジェゴグよりも、小ぶりなアンクルンの音をもう少し太く重くした印象だ。次のベルリンでのライブ映像を観ると、音の各パーツが重なる様子は Steve Reich も連想させる。


 1996年にウガンダ滞在中に買った Richsrd Nzita and Mbaga Niwampa "Peoples and Cultures of Uganda" (Fountain Publishers, Kampala 1993/1995)という本で、ブソガとそこの民族バソガ人(ブソガ族)Basoga についてちょっと調べてみた。彼らは首都カンパラなどに住むバガンダ人(バガンダ族)と同じバンツー系で、カンパラより少し東のジンジャ Jinja を中心に暮らす人々だ。ジンジャはナイロビまで続く幹線道路の途上にあり、交通の要衝でもある。Nyege Nyege Tapes の拠点も確かジンジャだったはずで、Nyege Nyege Festival も毎年ジンジャの近くで開催されている。

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(Google Map より)


 この本にはエンベールとよく似た楽器の写真が掲載されているのだが、その名称はアマディンガ Amadinga となっている。同じブソガ内でも村によって楽器の形態に若干違いがあったり名称が異なったりするのかもしれない。ブソガの楽器としてはパンフルートも紹介されている。1996年にカンパラやジャンジャで様々な民族楽器を目にしたが、タイコも親指ピアノもやたらと大きくて驚いた(ちなみにこの本、ウガンダ各地の楽器や工芸品の写真がたくさん掲載されているので買ったのだが、なぜかそれらについての説明が一切ない)。

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 ところで Nyege Nyege Tapes のレコードはジャケットデザインの良いものが多いので、なるべく LP を買うようにしている。だが、折角のヴァイナルの利点が活かされていないように思う。高音域に伸びがなく詰まった音に聴こえるし、エンベールにしても超低域の音も響いているものの物足りなく、全体的に中〜低域の迫力に乏しい。これは楽器の音が元々そうなのだというよりも、マイクの選択、あるいはミキシング/マスタリングに改善の余地があるように思うのだが、どうなのだろう?



(追記)

 これらは私がウガンダで買ってきた楽器。手前のものは、サトウキビの花の茎を並べて作った箱の中に木の実を入れたシェイカーで、レユニオンのマロヤ(サレム・トラディションなど)で演奏されるカヤンブ Kayamb やサカキマンゴーさんのライブで見慣れたものと同系統の楽器。ウガンダも民族楽器の多様性に富む国だと思う。

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(※以上、Facebook より転載。)






# by desertjazz | 2023-07-16 22:00 | 音 - Africa

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 昨年秋に出た Miles Davis "Kind of Blue" の Analogue Productions UHQR 45rpm / 2LP / Clear Viynl 盤(15000セット限定)を買ってみた。DiskUnion にまだシールド盤があったので(高かったが、自分の「卒業祝い」だと言い訳して。アメリカから直接取り寄せても、本体150ドル+送料100ドルするらしい)。

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 "Kind of Blue" は 50周年記念版CDやモノラル盤(もちろんリイシュー)でも持っているけれど、一番聴くのは40年以上前に買ったアメリカ盤LP(1982年6月22日に札幌の Tower Records で1440円で購入)。その後に出たCDと比べても音が快活に感じられて、実際こればかり聴いている。今回の UHQR 盤を聴いても、最初は古いLPの方が良く感じられた。オリジナル・マスターテープの劣化は避けられないため、リマスター盤の音質には限界があるからだろう。

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 そう思ったのだが、少々気になり、手元の4種を冒頭の "So What" を中心に聴き比べてみた。

 繰り返し比較試聴して、まず気になり出したのは古いレコードのスピードだった。よく知られている通り、"Kind of Blue" のA面3曲はレコーディングの際録音機のスピードが若干遅く、その分だけ早く再生された演奏がレコード化されてしまった(スピードが狂っていたのはマスター機だけで、サブ機は正常だったものの、音質はマスターより劣るらしい。1990年にマスターテープ2本が発見されるまで、スピードの補正はなされなかったとのこと)。その早いスピードで何百回も聴いてきたものだから、スピード補正した正常な演奏がどことなくトロく聴こえてしまう。しかしよくよく聴くと、導入部の Bill Evans のピアノの音が外れているように感じられる。そして UHQR盤の音に馴染んでくると、これが一番だと思うようになった。これまで古いレコードの音が元気よく感じられたのは、スピードが若干早かったからかもしれない。

 UHQR盤はリマスターCDと比べても、音の立ち上がりが鋭く、演奏全体に重厚感があり、ハイハットにも艶があって余韻も豊かだ。ただこうした差はわずか。元々録音の良い作品でもあるので、圧倒的な違いなど生まれるはずはないだろう。今回の UHQR盤は45回転化と透明ヴァイナル(黒いヴァイナルよりも高品質な素材)により音質向上を目指しているのだが、だとすると33回転盤や通常の黒盤と比べると、音の違いはどの程度なのだろうか。このような音の違いは、ある程度ボリュームを上げて聴かないとはっきりしないようにも感じた。拙宅のオーディオレベルではレコードの音を最大まで引き出すには限界もあることだろう。いつかオーディオをグレードアップしてじっくり聴いてみたいとも思う。


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 それと、 "Kind of Blue" は個人的にはステレオ盤の方が好みだ。3管の定位がはっきりしている方が楽しめるし、トランペットやサックスとハイハットとのバランスが結構変化するので、管とドラムの音が分離している方がストレスなく聴ける。ただし、オリジナルのモノ盤の音がとても良いということも聴く。大愛聴盤の "Kind of Blue" も他のレコードと同様、オリジナル盤の音質がベストなのだろう。機会があれば、その音(ステレオとモノラル)を聴いてみたいものだ。

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(※以上、Facebook より転載。)






# by desertjazz | 2023-07-14 22:00 | 音 - Music

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 先日6月20日にジョン・コリンズの伝記本が出版されたので、早速取り寄せて拾い読み中。

・Bertha Setor Adom "From Britain To Bokoor : The Ghanaian Musical Journey of John Collins" (DAkpabli, Accra 2023)

 イギリス人(白人)のジョン・コリンズはガーナで育ち、ミュージシャンとして活動しながら、自身が建てたボクール・スタジオを拠点に多くのガーナやナイジェリアのミュージシャンたちと交流した(そのひとりの Fela Kuti とは映画 "Black President" の制作に取り組んだ)。また彼はガーナ大学の音楽教授もつとめ、ハイライフ研究の世界的権威としても知られる。

 このようにジョン・コリンズは西アフリカ音楽シーンにおけるキーパーソンではあるが、著名なミュージシャンでもない彼の伝記本が出たのにはびっくり。それも414ページもある大著で、写真だけでも79ページもある。彼の経歴を辿ることは、ガーナやナイジェリアのポピュラー音楽史を振り返ることにもなると思うので、時間を作って読んでみよう。

 私が彼のことを意識し始めたきっかけは、『ミュージック・マガジン』の別冊『季刊ノイズ』の2つの記事だった。ひとつは創刊号の John Collins「西アフリカのポピュラー音楽 ハイライフ、パームワイン・ミュージックの歴史」。もうひとつは深沢美樹さんと中村とうようさんの対談「再考・パームワイン〜ハイライフの展開 ージョン・コリンズ提供の音資料を分析する」。これら2つ、これまで何度読み返したことか。ちなみに、深沢さんがアフリカ旅行の体験に書かれたものも同時に掲載されいて、こちらも読み応えがあった。


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 それ以来、ジョン・コリンズ本人の著作を探し集め、英語が苦手なのにも関わらずせっせと読んでいる。正直なところ、ミュージシャンの取り上げ方や記述に中途半端と感じる部分もあるのだが、これは彼の地の音楽シーンの真っ只中にいた人物としての見解でもあるのだろう。そのコリンズさんとは何年か前にSNSとメールでやり取りして、今度私がガーナに行った時にお目にかかれることになった。残念ながら、Covid-19 を考慮したために次の西アフリカ旅行は延び延びになっているのだが。

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 ちなみに私が購入した本は日本のアマゾンが印刷・製本しており(どのようなシステムなのだろう?)、そのアマゾンで簡単に買える。







# by desertjazz | 2023-07-09 15:00 | 音 - Africa

DJ

by desertjazz